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10.62.蒼白の雷雹


 格好をつけて空を指さす。

 技能を使ってみたが、特に何も起こらない。

 おかしいなと思ってステータスを確認してみるのだが、MPは減っているので発動自体はした様だ。


「って残りMP100!?』


 ぼんっ。

 言葉を言い終わる前に、魔物の姿へと変わってしまった。

 何事だと思っている内に、空がどす黒くなっていく。

 ただでさえ赤黒く奇妙な空が、更に黒く塗りつぶされた。

 雲には稲妻が走っており、ゴロゴロと鳴っている。


「え!? ちょ、ちょっとリゼ!?」

『うえ!? あれ!? 戻れない!! いや違う戻ったら気絶するこれ!!』

「あらやだ凄い触り心地がいいわ」

『ユリー!? 違うでしょそこじゃないでしょ!』


 そうしている間にも、雲がどんどん広がっていく。

 あたりが薄暗くなる。

 雨が降ってくるんじゃないだろうかと思ったがそんなことはなく、代わりに……雷を纏った氷が落ちてきた。


 ズガァンッ!!!!

 バヂリバヂバヂバヂッ!!

 等身大ほどの大きさの雷雹が地面に堕ち、着弾点にいた魔物を潰すと同時に周囲数メートルに雷が広がって感電させる。

 そんな攻撃が……雨の様に降ってきた。


 的確に魔物がいる場所を狙い、空を飛んでいる魔物ですら雷に当たって落下する。

 地面に巨大な雹が積み重なっていくと雷の威力が上がるらしく、数メートルから数十メートルに雷が走るようになった。


 だが不思議なことに、リゼがいる付近には雷雹が落ちてこない。

 雷も何かに捻じ曲げられるようにして軌道を変えた。

 術者には攻撃が当たらないようになっているらしい。


『ひょわあああああ!!?』

「うわああああ!? ちょ、これだいっ、大丈夫なの!?」

「武器はしまった方がよさそうですね……」


 何もしなくても、雷雹がすべてを片付けてくれる。

 周囲の異常を確認したティックはすぐに降りてきて合流した。

 あのまま空を飛んでいると雷に打たれる可能性があったので、いい判断だと言えるだろう。


「な、なにこれどうなってんの……」

「リゼの技能だそうです。代償は人の姿に戻れなくなる、と言った感じですかね」

「うわぁ!! すげぇ!!」


 魔物を間近で見ることなどあまりない為、ティックはリゼの姿に興味津々だ。

 近づいて触っている。

 リゼは非常に嫌そうだ。


 ズドォンッ……。

 空から氷の柱が一本堕ちてきた。

 どうしてこんなのが雲から発生するのか心底疑問だったが、それは残っている魔物すべてを始末してしまう程に強力で広範囲の雷を展開した。


『え? えぐない?』

「……」

「……」


 次第に雷が収まっていく。

 地面には転がっている真っ黒な死骸。

 そして無数に点在している雹があるだけだった。

 動いている生物は、この辺には何もいない。


 唯一、空にいる陸の声を除いて。


「な、なんだ……こ、これは……」


 驚いていた陸の声だったが、すぐに腕を振って新たな魔物を出現させようとする。

 だが、出てこなかった。

 何故だと何度も何度も腕を振るって魔物を呼び出そうとするが、一向に出現する気配がない。

 力が封じられたわけでもない。

 だというのに、技能が使えない。


「なぜ……!? ……!! これは!?」


 魔物を出現させるには、地面の中に魔力を流し込まなければならない。

 遠隔でもできる事なので直接地面に触れている必要はない。

 だがそれができないということを確認にした陸の声は、すぐに地面を見た。


 魔力を注ぎ込むと、魔力が吸われる。

 先ほど落下してきた氷の柱が魔力を吸いつくし、微弱な雷を帯電して消し去った。

 魔力を吸う氷。

 そしてそれを雷に変換して攻撃を行うものらしい。


「そんな技能が……!? くっ!」


 明らかに狼狽している陸の声。

 それに加えて追加の魔物が出現しないことにウチカゲとローズは違和感を覚えた。


「これは……?」

「なんか、魔物増えませんね。リゼさんどうです? 使ってみてどういう技能か分かりました?」

『んんー私の魔力がごそっと減ってあの雹と氷の柱が降って来て……んーーこれ以上は分からないかな……』

「あ、何言ってるか全然分からない」

『そうだったああああああ!!』


 いつも通り喋ったが、今は魔物なので言葉が通じないことを思い出す。

 ここには応錬や鳳炎はいないため、通訳もできない。


 早々に話を聞くことを諦めたローズは、氷の柱を注視する。

 先ほどまでは雷を纏っていたが、今は普通の氷の柱だ。

 そこでどういう技能なのかを推察してみる。


「……リゼさんの雷砲はチャージして放ってましたよね」

「え? ああ、そうね。てか急にどうしたの」

「あの氷の柱も雷を纏ってたから、似たような技能なのかなって思って。サンダーウェーブも雷の球を作って投げるし……雷電蛍も雷の球を維持させるものだから……。魔力を雷の球にため込んで放つっていうのが、リゼさんの雷系技能の特徴だと思うの」

『確かに……』

「なるほど?」

「あれの氷の柱もそうだとすると……魔力をため込んで雷に変換……んーーーー……これ以上は分からないですね。中にあった魔力がなくなったから雷を放たなくなっただけかもしれませんし」

「じゃあ魔力を補充したら雷がまた放たれるってこと?」

「どうやって魔力を補充するかは分からないんだけどね」


 そこでローズは陸の声を見る。

 狼狽している様子を見るに、何か不都合なことが起こっているに違いない。


「でもこれだけは確実に言えます。今陸の声は魔物を召喚出来なくなってる」

「……もしかして、今なら叩ける?」

「可能性は……ある! 『水弾』、『ライフルウォーター』!」


 水弾を作り出し、それを鋭利な形にして猛スピードで陸の声に叩き込む。

 それに気づくのが遅れたらしく、四つの弾丸をもろに喰らってしまったようだ。

 体に四回分の衝撃が走る。


 すぐに回復することはできるのだが、自分に攻撃をしたローズを睨みつけた。

 攻撃されたことで少し冷静さを取り戻したのか、それとも魔物を出現させることができないことを飲み込んだのか、腕を化け物の爪の様に変形させて地面に降り立つ。


「……ふむ、ローズ殿の言う通り、確かに魔物はもう召喚できないようですね。リゼ殿の技能のお陰でしょうか」

「召喚を阻止する能力があの氷の柱にはあるのかもしれませんね」

「逃げねぇってのは好感が持てるねぇ。不利になってんだから逃げりゃいいのに」

「ああいうのは攻撃されたことにキレるタイプ……うん」


 ウチカゲの言葉にローズが頷く。

 ティックは逃げないことに疑問を持っていたようだが、カルナの話を聞いて「ああ、なるほど」と頷いた。

 確かにプライドが高そうな性格だ。

 それに加え、一つの技能が封じられただけでは負けるとは思っていないから、こうして前に出てくる。

 勝てるという過剰な自信があるのだろう。


「だがこれは、好都合」


 ウチカゲが熊手を合わせて音を鳴らす。

 もしかしたらここで陸の声を討てるかもしれない。

 戦闘技能的には陸の声が一番弱いということはダチアの話で知っている。

 当時の鬼たちはいないが、ここに居るメンバーであれば何とかなるはずだ。


 ウチカゲが構えたところを見て、カルナも低姿勢で構えと取る。

 ティックは浮き上がって杖を向けた。

 ユリーはパックに乗ったまま戦斧を肩に担ぎ、ローズもリックに乗って大きな杖を構えた。

 リゼは魔力がなくなっているので少し後ろに下がり、回復を図る。


「刻んでやる」


 腕を変形させた陸の声が、腹に響くような不気味な声で足を踏み込んだ。

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