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9.22.増援の笛


 コーン、コーン、コーン。

 あの音が再び鳴り響いていた。


 そんななか、俺たちはようやくクライス王子がいるであろう屋敷まで足を運ぶことができた。

 今いる場所は現場から少し離れた路地だ。

 屋敷が多くある為、この辺りは月明かりが届かないところが多くある。

 身を隠すにはちょうどいい。


 さすがにここの兵士は多い。

 夜でも見張りが数十人いるようだ。


 ……鳳炎の方は大丈夫だろうか?

 いや、でも少し様子がおかしい。

 未だに炎の光が見えないのだ。


 あいつの持っている炎技能は当たれば勝ちというチートじみたもの。

 目立つとはいえそれを一度も使わずに槍だけで戦っているのは不自然だ。

 戻ってくる様子もない。

 大丈夫なのだろうか。


「応錬、私戻る」

「アレナちゃん……!?」

「分かった」

「応錬!?」


 アレナの隣りに常にいたマリアが驚いた様子で名を呼ぶ。

 もちろん小声でだ。


「ちょっと! 子供一人で戻らせるってどういう了見なのよっ!」

「アレナは子供だが、もう子供じゃない。戦える立派な戦士だからこの作戦にも同行してるんだ。俺はアレナを信じて鳳炎のことを任せる」

「いや、それはそうかも……しれないけど!」


 これは本心だ。

 だがそれ以外にも理由はある。


 アレナは鳳炎が記憶をなくした場面に遭遇している一人だ。

 部外者が間に入ってまた妙なことになったら敵わないし、できれば理解ある人物が鳳炎と悪魔の所に向かってほしい。


 恐らくだが、アレナもそのことを分かっているのだろう。

 それに悪魔の動きを完全に封じられるのは、今のところ一人しかいないしな。


「任せたぞ」

「うん!」


 アレナはふわりと浮かび、マリアを置いて来た道を戻っていった。

 これで向こうは問題ないだろう。


 んー、マリアが凄いこっち見てる。

 貴方はこっちで活躍しないといけないんですから残っててくださいね。


「はぁ……。ったくギルドマスターの言うこと聞かない奴なんてほとんどいないのに」

「仕方ないわよ。応錬たちだもの」

「何を達観してるのよ……」


 ま、そういうことでいいです。

 会話を無視しておいて、操り霞を屋敷の中へと展開させる。

 敵の数は四十程度。

 ずいぶん厳重だが……これくらいであれば何とでもなるだろう。

 問題はクライス王子がいる場所で見張りをしている六人だな。


 水を作り出し、屋敷のマップを作り出す。

 それを皆に見せた。


「見取り図だ」

「貴方……そんなこともできたのね……」

「敵は四十。大体の位置はこの辺……。それとクライス王子は二階の最奥にいる」


 位置をはっきりさせれば救出も比較的簡単にできるはずだ。 

 主にシャドーアイは潜入に非常に長けているので、彼らにはよく見てもらいたい。


 だが六人を相手にするとなると、さすがに難しいらしい。

 となればウチカゲにこの辺は任せればいいのではないだろうか。


「いけそうか?」

「お任せください」


 そう言って熊手を下し、戦闘準備を整えた。

 今のウチカゲなら一人でも救出できちゃうんだろうけど……。

 まぁ何が起こるか分からないしね。

 屋敷の中にあのローブ女がいる可能性もあるし。


 しばらく見取り図を確認して屋敷の構造を頭の中に入れた面々は立ち上がる。

 今回はウチカゲとシャドーアイだ。

 ウチカゲは一瞬でその場から消え去り、シャドーアイは背景に透過するように消えていった。


 コーン、コーン、コーン。

 音が近い。

 すぐに操り霞を展開して周囲を索敵してみると……。

 四人の人物が自分たちがいる近くの屋根の上に立っていた。


「……リゼ、お前戦える?」

「え? ま、まぁ多少は……」

「ああ、聞き方を変えよう。人間殺せる?」

「……む、無理……だと思う……」


 誰か一人、リゼにはサポートが必要だ。

 するとマリアが小さく手を上げた。

 彼女がサポートをしてくれるのであれば、問題はないだろう。


 すぐにこの地形の見取り図を作り出し、敵がいるポイントを示す。

 誰がどこに向かうかを決めた後、すぐに行動に移った。


 ユリーは跳躍して屋根の上に登り、ローズは魔法で飛び上がる。

 マリアとリゼは並走して走り出し、俺は連水糸槍を作り出して掴み、それを上に向けて浮上させた。


 屋根の上に着地し、一つ息を置いて目の前の敵を見る。

 あの時会ったローブの男。

 一人倒したが、まだ仲間は多かったようだ。


「さて……お前の雇い主はどこかな。零漸」


 風でローブが捲れる。

 そこからは、やはり悲し気な表情をした零漸が顔を出した。

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