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8.19.戦況優勢

明日、転小龍第二巻発売です!!

よろしくお願いいたします!!


 領民たちは一斉に拳に力を入れ、水弾ガントレットで水弾(鋭)を撃つ。

 精度はバラバラではあったが、確実に敵の数を減らすことに成功していた。

 それだけ見れば今回のこの技能は大成功だったと言えるだろう。


 しかし、問題もある。

 あの門がある限り、魔物は湧き続ける可能性が高い。

 門を何とかしなければならないが、あれは天割で何とかできるものなのだろうか……。


「考えたって仕方がない! やるぞ! 『天割』!」


 城壁の上から横凪に白龍前を振るい、門に向かって天割を放つ。

 その攻撃の直後、束になっていた魔物は天割だけを避け、地上部隊にも攻撃を開始する。

 一匹も魔物を落とせなかったが、門にはその攻撃がしっかりと届いた。

 だがしかし……。


 天割は門をすり抜け、遠くの雲を切り裂いただけで終わった。

 あれは物理的に作られたものではなく、魔法で作られたものだ。

 物理攻撃が効くはずもなかったか!


 俺はすぐさま今の状況を確認するために、操り霞に集中する。

 数千を越える魔物の軍勢に、鳳炎が炎魔法で立ち向かっていた。

 地上部隊は降りて来た魔物を丁寧に殺しており、離れていた援軍ももう少しで到着する予定だ。

 水弾ガントレットを所持した領民は、弾が切れる前に水に手を突っ込み、水を補充して魔物に狙いを定めている。


 地上部隊の無駄のない動きと、連射が可能な水弾ガントレット。

 出てきた魔物は魔法などを使用することはなく、ただ人を捕まえて上空へと持ち上げようとしていた。

 戦闘能力がないようではあるが、空高く持ち上げられて落とされてしまえば、どんな人間でも重傷を負うし、最悪死に至る。

 単純な数の暴力で圧倒している敵の上空部隊ではあったが、一匹として人間を持ち上げて落とすまでの行動にでることができないでいた。


 だがバミル領の兵士たちも苦戦はしている。

 地上を歩く敵とは違い、空を飛んでいる敵は狙いにくい。

 魔法部隊がいないので、対処は非常に難しかった。

 だが……。


「いける!」


 今のところ魔物に引っ掛かれて軽傷を追っている者はいるようだが、重傷を負っている者は一人もいない。

 全員が、まだ戦える状態にある。

 この状況が続けば敵の襲撃も返り討ちにできそうだ。


 俺は……多連水槍か連水糸槍くらいしか使えないな。

 あ、でも結局使わなかったあの技能、門の前で弾けさせるとしよう。


 用意していた空気圧縮で作った爆弾を門の前に持っていく。

 不可視の爆弾なので、これを避けることは到底不可能だろう。

 更に、未だ出現し続けている魔物の雪崩。

 確実に多くの魔物を葬ることができる。


「爆破!」


 パァアアン!!

 乾いた音を出して、空気が破裂する。

 その威力は凄まじいもので、周囲にいたほとんどの魔物を弾き飛ばすことができた。

 大量の残骸が、地面へと落下していく。


「おっしゃ! どんなもんじゃい! 今回は範囲攻撃技能の方が良さそうだ。作りまくるか!」


 攻撃方法が決まったので、すぐにまた空気を圧縮して爆弾を作り始める。

 作成に少し時間がかかってしまうので、今は他の者に戦ってもらうしかないな……。


 とは言え、その心配はないかもしれない。

 魔物がこちらに来る前に、領民が魔物を撃ち落としてくれている。

 なので俺は爆弾作りに集中できていた。


 地上部隊も被害は今のところなく、人間の兵士は槍で、鬼は跳躍で飛んで金砕棒を振り回す。

 ここの指揮を執っているのはジルニアの執事、レイトン。

 正確な情報を部下に伝達し、その情報を通信水晶を通して共有していた。

 行動に無駄がないのはレイトンがいたからだろう。


 カーンカーンカーンカーン!

 こちらに負けない程の警鐘が、違う方向から鳴り響く。

 なんだと思って見てみれば、遠くの森の木々が押し倒されていた。

 それは次第にこちらに近づいているようである。


「敵の地上部隊か!」


 俺はすぐに城壁の下にいる兵士たちに指示を出す。


「レイトンー!」

「!」


 俺の声に気が付いてこちらを向いたレイトン。

 それを確認した俺はすぐに飛び降りる。

 多連水槍を一本出してそれを掴み、ぶら下がって降下する。


「どうされました!」

「敵の地上部隊だ! 鬼たちを向かわせたい!」

「構いませんよ! こちらは我らの兵とバミル領民の援護があれば何とかなります!」

「すまない! 鬼たちに通信水晶を通して連絡してくれ! 森の方へ向かってくれと!」

「承知しました! おい! 聞いていたな!」


 話を聞いていた兵士が、すぐに通信水晶に向かって指示を飛ばす。

 数分もすれば全員に情報がいきわたり、鬼たちが一度バミル領の中へと戻っていった。


 それを確認した後、俺はまた城壁の上に戻って爆弾を魔物の群れにぶつけていく。

 こっちは俺と鳳炎がいるから問題はない。

 ウチカゲがまだこっちに来ていないのを察するに、向こう側に行ってくれたのかもしれないな。

 流石だ。


「応錬さーん!」

「どうした!」

「水がなくなりそうです! 補充してくれませんか!」

「あれじゃ足りなかったか! 分かった今行く!」


 爆弾作りはここまでにしよう。

 今の状況だと水がなくなる方が問題だからな。


 報告を聞いてすぐにそちらの方へと向かうことにする。

 状況優勢……このままいくぞ!


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