7.46.Side-鳳炎-アトラックの言葉
「おいらは死ぬ。お前に話すけぇな」
「……」
「ええか、よーーーー聞いとけ。多分聞き取れんけぇな。予想し、想像し、答えさ出しぃ」
アトラックは人差し指で、自分の頭をトントンと叩く。
そして、速い口調で話始める。
「ええか、悪魔はて──」
バツンッ……。
突然アトラックの首が、両断された。
アトラックの胴体から切り離された首が、地面にごとりを転がった。
「てギェァ──」
バツンッ!!
生首になっても生きていたアトラックは、また言葉を続けようとしたが、今度は口が裂けて顎が外れた。
そしてそのまま引き千切られ、その辺にべちゃりと捨てられる。
すると、まだ立っている体が動き出し、ジェスチャーで何かを伝えようとした。
自分を指さし、顔があったであろう前で手を左右に振り続ける。
だがその腕も次の瞬間潰された。
足も潰れ、地面に崩れ落ちた体は最後に真っ二つに両断された。
ピクリとも動かなくなったアトラックの体。
もう動くことはないと、素人目にも判断が付く。
何故彼は、死ぬことを躊躇わなかったのだろうか……。
そこまでして私に何を伝えたかったのだ?
ほぼ聞き取れなかった……というか、言い切れていなかったな。
ジェスチャーでも何が言いたかったのか、よく分からない。
顔の表情がなければなにを伝えたいのか理解できる物もできなくなるもの……。
これは……どうすればいいんだ……?
他にももっと話せることあっただろう!
それこそサレッタナ王国の襲撃とか、悪魔の目的とか!!
……だがこいつは、それよりももっと大切なことを私に伝えたかったに違いない。
死ぬとわかっていて伝えようとするものが、重要な情報じゃないわけがないのだ。
しかし……分からない。
悪魔はて……?
手を出すなとか、出してはいけないとか?
もっと簡潔に言ってくれよアトラック……!
「……しかし、これではもう話は聞けないな……。はぁ、何故私ばかりこんな目に……。だが……」
情報は、得られた。
この世界は千百年前に作られた事。
私たちは二代目で、初代は白蛇の日輪。黒亀の漆混。赤鳥の奄華。青虎の泡瀬。
やはり先代白蛇と悪魔は何か重要な関係性を築いていたに違いない。
アトラックは漆混という人物の口調を真似ていたというし、友好的だったということは分かる。
他の者たちの情報も欲しかったが……こうなってしまった以上仕方がないか。
だが、恐らく悪魔は四人の事を知っている。
五百年生きている悪魔であれば、の話だが。
しかし千百年前にこの世界が作られた、というのはよく分からんな。
惑星そのものが作られたのか?
もしかしてアトラックは悪魔の中でも最年長だったかもしれないぞ……?
この世界は作られてすぐに生まれてるからな……。
もしかすると、初代の四人の名前をヒナタに教えれば、記憶が戻るかもしれないな。
今は時間がないので無理だが、アレナの故郷を助けてから向かってみるとしよう。
「この事、応錬に伝えておかなければな」
というかあいつは……。
「まだ人間の姿に戻れんのか!!」
私もそろそろ限界であるぞ!
一人で情報を収集するのどれだけ大変だと思っているのだ!
ああー今かっさらった資料全部見たら今度はバミル領へ一足先に出張だ!
何で私だけこんなに忙しいんだ!
ああっ!
まだこの地下に事についても調べてなかった!
ここで手に入れた情報と照らし合わせないといけないかもしれないから調べないといけない!
やることが多い!
ウチカゲ帰ってきてくれぇ……。
「ああー……はぁ。だけど、着実に真相に迫っているぞ」
それだけは分かる。
空振りは多かったが、ここにきて一気に進んだと実感した。
後は、ここで集めた資料に何が書かれているか……だな。
あの二人が帰ってくるまでに、調べ切れるといいが。
とりあえずもうここには用はない。
あらかた回収したしな。
さて、これを何処で読むかというのも、後で考えておかなければな。