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7.26.早く!!


「そうでしたか! 珍しい魔物でしたので少し興味が……。キメラですか?」

「え、いや、知らん。私の師匠から預かったものだ」

「そうなのですねぇ」


 キメラて……酷ない?

 いや確かにそう言われればそんな気もするけどさ?

 ていうか成り損ないなんですよ私。

 分かりますか?


「ドルチェ、私たちお話がしたいの」

「ああ、そうでしたね。これは失礼。少々お待ちください」


 アレナに急かされたドルチェは、周囲のランプを一つずつ消していく。

 残っているのは机の上にある燭台のみ。

 その周囲に集まるように指示を出した後、目を閉じて技能を呟いた。


「『静寂』」


 あの時の感覚がまた襲ってくる。

 アレナはそれに少し肌寒く感じてしまうようで、身を縮こまらせていた。


「これで大丈夫です。ですが私はいない方がよろしいですかね?」

「すまん」

「いえいえ。終わりましたらその蝋燭を吹き消してください。それでこの静寂は解除されますので。では……」


 そう言って、ドルチェはまた仕事に戻って行った。

 仕事と言っても従魔に餌をやる程度だろうが。


 しかしこれで落ち着いて話せる場所を確保することができた。

 あとは……情報の照らし合わせだな。


「では早速だが……。さっきの続きだ。応錬、零漸が会った人物は誰だ?」

『イルーザだと思うぞ。魔道具店の店主だ』

「イルーザ……店主……すまん、私は聞いたことがない」

『結構分かり易い場所にあるし、最近は子供たちのお陰で繁盛し始めているぞ。知らないのか』


 まぁあいつは仕事をしたくなかったらしいがな……。

 子供たちが頑張っているというのになんて野郎だと怒ったことがある。

 呼び出された時は何かと思ったけどね。


 でも零漸が会ったのはイルーザだと思う。

 ああいう格好の人物は結構いるが、男っぽい見た目の女っていうのと子供を連れていたって言う情報がある。

 まだ確約はできないが、イルーザである可能性は高い。

 これは行ってみれば分かる話なので、後のことは鳳炎に任せよう。


「分かった。では後で行ってみることにする」

『で、お前の方はどうだった?』

「さっぱりだ」


 おいおい……お前が持って帰ってきた情報って零漸の話だけかよぅ……。


「あの、私にも説明してくれるかしら?」

「そのつもりだ。まずは私たちが追っている謎……というか悪魔のことなのであるが……」


 そう前置きしてから、鳳炎はリゼに俺たちのことを話し始めた。

 サレッタナ王国に魔物の軍勢が押し寄せたのは、悪魔の手引きによる故意的なもので、魔水晶という魔道具らしきものを使用していたこと。

 悪魔が言っていたあの言葉から、奴らは五百年前の事を知っており、先代白蛇との関わりがあったこと。

 そして先代白蛇は俺たちが転生してくる事を知っていたということなど……。


 とにかく俺たちが知っている情報を全てリゼに共有した。

 俺たちは今、サレッタナ王国の襲撃がなぜ俺たちの助けになるのか、という謎を追っている。

 それは悪魔のことについて知ることができれば、何か分かるかもしれない。

 そこで、零漸が出会ったイルーザ、魔水晶の存在を知っている彼女に何か話を聞けばわかるのではないかというのが、今の現状だ。


 それ以外のことはあまり良く分かっていない。

 何故先代白蛇が鬼たちの記憶を消したのか。

 何故先代白蛇の技能を鬼たちが受け継いでいるのか。

 何故先代白蛇は俺たちが転生する事を知っていたのか。

 レクアムに何故悪魔が憑いていたのか。

 あの魔水晶とは何なのか。

 五百年前に起きたことは一体何なのか。

 彼らは何と戦ったのか。

 悪魔と先代白蛇の関係性は……一体何なのか。


 これら全てがまだわかっていない状況だ。

 イルーザが魔水晶のことを本当に知っており、その話を聞くことができさえすれば、何か分かるかもしれない。

 というか今、これ以上の情報は悪魔に接触しない限り出てはこないだろう。

 本当に、厄介な連中だ……。


「話の流れは大体わかったわ……。でも私は……」

「分かっている。お前はお前のことをすればいい。だが先代白蛇がいた以上、先代の私、そして白虎、亀もいたはずなんだ。私たちの存在が何か関係していると考えては良いだろう。それを共有したかっただけである」

「……そう。情報収集はやってみるわ。悪魔のことについてよね」

「うむ、そうしてくれるとありがたい」


 とりあえずリゼも、全面的な協力ではないにしろ、俺たちの手助けはしてくれるようだ。

 それだけでも十分だろう。


「悪魔が次、何してくるか分からないもんね」

「アレナの言う通りだ。私たちはあの悪魔のリーダー格のダチアに手も足も出なかった」

「Aランクの貴方が?」

「私は直接手を出したわけではないが、鬼のウチカゲの蹴りを片手で止め、アレナの重加重を解除したのだ。相当の実力者であることは間違いないだろう……」


 確かに、あの時は何もできなかったな。

 俺のMPがなくなっていた……って言ったら言い訳になるが、俺も手は出せなかった。

 しかしあれだけのことをしてくる連中だ。

 次どの国が被害に遭ってもおかしくはないだろう。


 それを突き止めることができれば一番良いのだが、残念ながらそういったネットワークは持ち合わせていない。

 そもそも悪魔の話すら聞かない状況だ。

 あいつらマジでどこでなにをしているんだろうか……。


「ね、ねぇ。これってサレッタナ王国だけの問題じゃないわよね?」

『そうなるな』

「ちょ、それだと私のお願いは!?」

「まだ言うか……。自分で何とかできんのか」

「できないから応錬に頼んでるんでしょうが! せめて早く人間になりなさいこんのー!」

『いでででででで!! おいやめろ!!』


 翼を引っ張るな貴様!!

 ただでさえ鳳炎にねじ込まれて痛いんだから!!


「だが応錬が人間になってもらわないとこれからの情報収集、及び戦闘などに大きな支障をきたすことになる。身を粉にして進化することを大前提に行動するのだ」

『分かってるよ……』


 人間になれないことが、ここまでのペナルティになるとはな……。

 これでも全てあの辞書のせいだと思っておこう。

 ていうかあいつのせいでいいよね!?

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