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7.4.ナリコ


 無事にナリコという名前を付けられてしまった俺は、鳳炎を物凄い形相で睨みつけながらサレッタナ王国へと入国した。

 とりあえず民衆の目に触れることで、俺への危険性を減らすというのが今回の目的の一つであり、尚且つこの国で自由に動く事を許される為の作戦である。


 だとしてもだ。

 だとしてもこの名前はマジでない。

 これじゃあ名前的に性別メスじゃねぇか。


『貴様覚えていろよ……』

「魔物の声は聞こえませんなぁ」 

『……この野郎……』


 今の俺は人に危害を加えることを良しとされていない。

 大人しい魔物として民衆の目に触れる必要があるからだ。

 なので、今どんなに手を出したくても手を出すことは出来ない。


 クソウ……。

 お前俺が人間の姿に戻れるようになったら絶対に一発ぶん殴ってやるから覚悟しておけよ……。


 にしても、周囲の目線が痛い。

 まぁこんな魔物なんてどんな冒険者も見たことないだろうし、仕方がない事なのかもしれないけどさ。


 片方の目玉の位置から三又の角が生え、顎まで裂ける程に大きな口。

 そしてこの目立ちすぎる白いボディと、ボロボロになった痛々しい翼。

 加えて三メートルはある大きな体……。

 気にならない、という方が無理な話である。


 まさかこの姿で国を歩くことになるとは思わなかったなぁ……。

 はぁ……。


「とりあえず……ギルドに行くか」

『マジか……。あ、でもマリアは知ってるか』

「私たちの正体を教えはしたが、さて、信じているかどうか……。マリアギルドマスターがお前の姿を見て何も言わない様であれば、このまま隠し通そう。事を知っている人物は少ない方が良いからな」

『それもそうか』


 この事を知っているのは、俺と鳳炎、そしてウチカゲ、アレナ、零漸。

 零漸は俺の姿をまだ見てはいないが、すぐに理解してくれるだろう。

 その前に口裏合わせを鳳炎にしてもらっておかないとな。

 後で城に行ってもらって零漸と合流してもらおう。


『……そう言えば、ギルドで何をするんだ? 俺行く必要あるか?』

「従魔登録である。誰がどんな従魔を使っていますよっていう登録が必要でな。そうじゃないと一緒に依頼を受けることができんのだ。だが今回……フフッ。ナリコは」

『おい笑ってんじゃねぇぞ』

「悪い。ナリコは私の恩師から預かった物として、仮の従魔登録を済ませるのだ。すぐに契約を破くことのできる……物と言えばわかりやすいか?」

『それでも依頼は一緒に受けれるのか?』

「勿論である」


 であれば、当面の問題はそれで解決されるか。

 依頼にも行けるし、国の中も歩くことができる。

 後は俺の体を調べようとする変態さえいなければ、俺が直接手を出すことは無い。


 兎にも角にも、俺と鳳炎は仮の従魔登録をする為に、ギルドに向かった。

 入る前から痛いくらいの目線が俺に突き刺さる。

 周囲ではひそひそと何か話しているようだった。


 おそらく俺の事だろうけど、もうこの際無視である。

 一々気にしていたらキリがなさそうだからな。


 鳳炎が受付カウンターに行き、すぐに仮の従魔登録を済ませる為に職員に話しかけた。

 その辺りのこともしっかり頭に入っているようなので、とりあえずこのまま任せておいてもよさそうだ。


 すると、残っている翼を誰かに引っ張られた。

 誰だろうと思って見てみると、笑いを必死に堪えているアレナの姿がある。

 ……こいつまさか。


「な、ナリコ……」

『てめぇ鳳炎! もう既にほかの奴らにまで名前浸透させてんじゃねぇよ!!』


 く、くそう……。

 声出してもグルシャーみたいな変な声しか出ねぇ!

 鳳炎完全に無視してやがるし、あの野郎……。


 とりあえず尻尾で地面を叩いて不満を表現していると、ついにアレナが笑い始めた。

 この子も大概だな!


 周囲で俺たちの様子を見ている冒険者たちは、何故アレナが俺の姿を見て大笑いしているのか全く理解できていない様子だった。

 逆に理解していたらそれはそれで怖いので、この反応は正しい。


 ていうかアレナ、お前鳳炎がそう言う名前決めてるっての知ってたんなら止めろよな!?

 いや待て、ていう事はアレナもその名前に賛成していたのか!

 この野郎……。


「はい、ではこれで手続きは終了です。何か依頼を受けていかれますか?」

「んー、いや、後にするよ」

「分かりました」


 手続きが終わると、鳳炎は俺とアレナの所に戻ってきた。

 尻尾を叩いて不満を表現するが、やはり無視される。

 だが鳳炎はそれがとても面白いらしく、途中で笑いそうになるのを必死で堪えている様子が見てとれた。


「……スー、ハー。では、零漸の所に行って事情を話しに行こう」

『やっぱまだ行ってなかったか』

「だから、私は行きたくないのだ。貴族共と会いたくないのである」

『よし、じゃあ行くぞ』

「だから話を聞いていたのか!?」


 知らんな。

 とりあえず来い。

 そして貴族に絡まれてうんざりして来てくれ。

 じゃないと俺の気がすまない。


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