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4.3.情報収集


 大きく張り出されているレクアムの指名手配書を見て、俺たちは苦い顔をしていた。

 生きているという事は知っていたが、実際に指名手配書を見るとなんだか殺意が沸いてくる。


 本当であれば今すぐにでも捕まえに行きたい所ではあるが、俺たちにその資格はまだない。

 そのことに苛立ちを少なからず覚えた俺は、すっと目をそらして零漸に話しかける。


「零漸──」

「兄貴! 絶対にSランクまで登り詰めましょうね!」

「っ!? お、おう、そうだな」


 俺が声をかけると、零漸はばっと後ろを振り返って詰め寄った。

 その気迫に驚いたが、そのおかげで少し冷静になれた気がする。


 そうだ、こんなところで怒って何になるというのだ。怒る暇があるのなら今できることをしたほうが、あいつに追いつくことに繋がるのだ。

 あいつだって俺たちを殺す算段を整えているはずである。

 ではその算段を潰すために、俺たちは動き、強くなっていかなければいけないのだ。


 零漸にそれとなく諭されたのが若干気に入らないが、今回はそのおかげで冷静さを取り戻すことができたの何も言わないことにする。


「で? 依頼はどうした?」

「兄貴、これ行きましょ!」


 そう言って零漸が見せてくれたのは、採取系の依頼だった。

 だがその採取する薬草やキノコの数が多く、とても少人数では一日で達成できそうにない物だ。

 その代わり、報酬は銀貨十五枚と随分と弾んでいるようなので、俺はその依頼を受けることにした。


 まだ依頼を受ける経験がない零漸が受付カウンターに行き、依頼を受注する。

 前世のゲームの感覚が残っているのか、すんなりと受注していたのは流石だとは思ったが、受付嬢は零漸の格好に少し引いていた。

 なんせマントもあれば無駄な金具もあるのだ。

 必要性のない装備を着た人物が、低ランクの受付カウンターに来たのだから、驚かれたり引かれたりするのも無理はないだろう。

 最も、零漸はそのことに関してはまったく気にしていないようだったが。


「よし! じゃあ皆行きましょうー!」

「おー!」

「……元気だなぁ」

「ですね……」


 傍から見てみればまるで保護者と子供だ。

 とはいえ、元気があるのは良いことなのでそこに深く突っ込むことはせず、街の外に歩いていこうとしたのだが……その前にウチカゲに止められた。


「まずは情報収集です」

「えー! 外出たらこれくらいすぐに見つかるだろー?」

「おい零漸、貴様。コシュ村でのこと忘れたわけじゃねぇだろうな」

「ぐっ」


 コシュ村では零漸が突っ走ろうとしたおかげで、情報の収集にひどく時間がかかった。

 こいつはなんの下調べもなしに敵陣に突っ込む節があったので、あの時それとなく強く言ったはずだったのだが……どうやら説教の時間が足りなかったらしい。


 今回はたっぷり時間があるので本当に小一時間説教してやろうと思ったが、それではこの二人に迷惑が掛かってしまうのでぐっと我慢して、説教をとりあえずデコピンで済ませる。


「ふべぁ!?」

「あ」


 軽くデコピンをしたつもりだったが……零漸がひっくり返った。

 進化してからという物、少しばかり手加減ができなくなりつつある。


 零漸相手にはこれで問題ないだろうが、普通の人間には俺の物理攻撃をしてはいけないような気がしてきた。

 この自動発動型技能の『防御貫通』がなければそれなりに手加減できると思うのだが……。


 いや待て。そういえばイルーザには手加減することができていたはずだ。

 ふーむ……これはどういうことだろうか。

 零漸には手加減できず、イルーザには手加減ができた……。何故だ?

 まあ考えてもわからんこともあるか。


「すまん零漸。手加減ミスった」

「わざとですか?」

「ミスったって言ったよな?」


 冗談交じりに笑いながら、額をさすりながら零漸がムクリと起きて会話に交じる。


 さて、ウチカゲの言う通り情報収集は非常に大切なことだが、依頼書に書かれている薬草やキノコの詳細がかかれている本や資料はどこに行けば手に入るのだろうか。

 俺的には本辺りが妥当だとは思うのだが、これでは時間がかかりすぎる。

 一日で終わるような仕事を、数日かけてやるなど意味がないことこの上ないので何か他の方法で情報を集めたい所なのだが……全く思いつかない。


「ウチカゲ、なんかいい方法あるのか?」

「本には基本的な情報が書いてありますが、金額も馬鹿にならないですし買う人は滅多にいません。大図書館で読むくらいですかね。ですが、これ以外にも情報を簡単に手に入れる方法はあります」

「それはなにー?」

「人に聞くことです」


 ウチカゲの言うことは間違っていないとは思うのだが……ありきたりすぎはしないだろうか?

 話を聞くのは良いとしても、人の依頼を達成するために時間を割いてくれるような人物はいないと思う。


「人によらないか、それ」

「ですね。ですから交渉をするのです。応錬様、ポズ草まだ持ってますか?」

「ああ、あと四十本あるぞ。売ろうと思ったけど安かったからやめたんだ」

「ではそれを持って薬局に行ってみましょうか」

「「薬局ぅ?」」


 俺はそれを聞いて、ウチカゲのしようとしていることを理解したが、アレナと零漸はよくわからなかったようだ。

 百聞は一見に如かず、ということで、零漸とアレナには答えを言わずに薬局へと向かうことにした。



 ◆



 しばらく歩いていると目的地に着いたようで、ウチカゲはその建物の中に迷わず入っていく。

 俺たちもそれに続いて店の中に入り、ウチカゲの交渉術を見学することにした。


 中に入ってみるとすぐに薬品の匂いが鼻を衝く。

 部屋は綺麗に整頓されているようで、特段怪しげな物はなく、棚の中に様々な薬品や薬草が入っていた。


 狭い通路を通っていくと、すぐ正面にカウンターが見えた。

 そこには店主らしき優し気な老人が座っており、俺たちの来店を目で確認した後、手に持っていた虫メガネと何かの種を机の中に仕舞って接客体制に入る。


「いらっしゃい」

「毒草を売りたいのですが」

「種類と本数を」

「ポズ草で四十本」


 ウチカゲは、予め手渡しておいたポズ草の束をカウンターにそっと置き、店主はその薬草をまじまじと観察する。


「随分と立派なポズ草だね。これならエキスを多く抽出できるだろうからその分の金を用意しよう」

「あ、じゃあ今決めている金額の半分だけください」

「む? これを半額で売ってくれるというのか?」

「はい。その代わり、ここに書かれている薬草やキノコの採取場所を教えてください」


 そう言ってウチカゲは依頼書を提示して老人に見せる。

 老人は虫メガネを取り出して、その中に書かれている薬草やキノコの名前を読み取り、他の紙に記していく。


 その光景を見ていた零漸とアレナは、「ほー」と言う感じで感心しているようだった。


「なるほど……こうしてコネを作っていくのか……」

「勉強になる……」

「……アレナはともかく、零漸は気がつけよ」


 零漸は前世でそういう仕事を生業としていたはずなのだが……どうしてこれくらいの簡単なことに気が付かなかったのだろうか。

 とはいっても、俺もウチカゲが薬局に行こうというまでは気が付かなかったのでまだまだな部分もあるのではあるが……。


 俺たちが無駄話を押している間に、老人は全ての採取場所を書き記してくれたらしく、それをウチカゲに渡していた。


「なかなかうまい事考える鬼だの。今後ともご贔屓にしてくれれば、こんなことせずとも教えてやるぞい?」

「おお、それは助かりますご老人。まだ駆け出しのパーティー故、何度か厄介になるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」

「うむ。じゃ、ポズ草の代金じゃ。すでに半分差し引いておるからの。銀貨十一枚じゃ。確かめてくれ」

「!!? 銀貨十一枚!?」


 俺は予想していた金額を遥かに上回っていたことに驚いて声を荒げてしまった。

 何故って金額がおかしいのだ。

 ギルドで買い取ってもらった時は銀貨二枚で買い取るとか抜かしていた。

 なのにここではその約五倍、銀貨十一枚で買い取ると言っているのだ。


 あの野郎……俺が薬草の相場を知らないことをいいことに足元見てやがったのか……。


「どうしたのだ?」

「あ、いや、ギルドで買い取ってもらおうとした時は銀貨二枚で買い取るって言ってたから……」

「ああ……ギルドではなんでも買い取ってくれるが、買い取り額は安いのさ。素材を高く買い取って欲しいのなら、専門的な所に行くのがよいぞ。じゃが、Sランクの魔物の素材は高額すぎて武具屋や鍛冶屋では買い取ってくれんかもしれんから、そういう物の場合はギルドに持っていったほうがいいぞい」

「覚えておこう……」


 もう魔物の素材以外売らないと誓い、老人の言葉を深く胸に刻んだ。


 というか……これだけ金額に差があるんなら、ギルドに貼られている依頼を真面目にこなす必要もなくなるだろう。

 薬局や薬屋と言うより……ギルドに問題があるような気がするのだが……。

 いやしかし、ランクを上げるためには依頼をこなさなければならないのか。


 む? しかしだ。薬屋や薬局に薬草を売りに行く冒険者が多いのだとすると、何故薬屋や薬局がギルドにヒポ草の納品依頼を出しているのだろうか。

 ……もしかして根本的に薬草が無いのか?


「なあ爺さん。ヒポ草の依頼がギルドに貼りまくられてたが、どうしてかわかるか?」

「んー、どうしてかはわからんの。最近は薬草を売りに来てくれる人もおらんくなってなあ。わしも仕方なくギルドに依頼を出しておるのだ」


 詳しいことは冒険者に聞いたほうがいいかもしれない。

 実際に国の周囲を歩いている冒険者であれば、何か知っているはずだろう。


「そうか。世話になったな」

「うむ、気をつけてな」

「おじちゃんばいばーい」


 爺さんは手を振って俺たちを見送ってくれた。

 また何か変なことが起きてそうだなと考えながら、俺は三人の後ろをついていくのだった。

 

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[気になる点] そのランク帯の冒険者が襲われているのでは?
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