4話 道案内
「もっ、ももっもしかしてヤイバは有名な冒険者だったりするのかしらっ!?」
冒険者か、やっぱり存在するよな。
今のチートな俺を見て、どうやらミョーちゃんは俺のことを冒険者だと思ったらしい。
「いや、まだ冒険者になってないんだ」
「ふっふぅん? そういえばどうしてこんな危険な場所にいるのよっ!」
どうしよう。
異世界転移をしてきたと言ったら、俺が変な奴に思われてしまう。
「えーと、実は記憶がないんだ。気が付いたらここに居て、これまでの記憶がない」
事実、嘘はついてない。
「記憶喪失……呪いの類ねっ!?」
「ふぇ?」
「記憶喪失は呪いの一種なのよ? そんなことも知らないの? ヤイバは誰かに呪いの魔法を使われたみたいね」
うーん、でもステータスには状態異常が書いていなかった。
もし呪われているなら丁寧に書かれていても不思議じゃない。
だが、ミョーちゃんを騙すには丁度いい。
申し訳ないけど、この際だからこの世界についていろいろと教えてもらうことにしよう。
「そうか……よし決めた、俺はこの呪いを解くために冒険者になるぞ」
こう言っておけば、とりあえず問題はないだろう。
「なっ……! て、てことは私も一緒に……(ごにょごにょごにょ)」
「うん? なんか言ったか?」
「なっなんでもないわよ!」
「そうか? 悪いんだがミョーちゃん、記憶喪失のせいでこの世界のことがよくわからない。いろいろ教えてくれ」
「わわっわたしが専属教師……し、しかたないわねっ! 教えてあげないこともないわ!」
「ありがとうミョーちゃん」
そう言って俺はミョーちゃんの頭を撫でた。
うん、ふかふかもふもふでとても気持ちいい。
「んにゃぁ……」
おっといけない、また朝になるところだった。
「そうだミョーちゃん、冒険者になる方法を教えてほしい」
「んにゃ……ハッ!! い、いいわよ! 街まで行くからついてくるのよっ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
15分ほど歩いたら、道に出た。
その道をさらに進んで30分後、街に出た。
「ここが『北東街カブレラ』よ。メシコ大陸の北東部にあるわ」
目の前には大きな壁が築かれている。
どうやらこの街は壁で囲まれているらしい。
そして門らしきところがあり、兵士が両脇に立っている。
その兵士がこちらを発見すると驚いた表情になった。
「こ、これはミョルニル様! お帰りが早いようですが何かあったのですか?」
「あー」
ミョーちゃんがそういうと、俺の耳に顔を近づけた。
(私はBランク冒険者で、この街では有名なの)
(ほう)
(パスタの討伐に向かったんだけど、5日の遠征の予定だったのよ)
(なるほど)
(説明するの手伝ってちょうだいよね)
するとミョーちゃんは俺の耳から離れていく。
「……ま、迷子を見つけたのよ」
「……うっす、迷子です」
「ふむ。そうでしたか」
「これからこの迷子を案内してくるわ! さ、行くわよ」
「お、おう」
こうして俺は『北東街カブレラ』に入ることができた。