3話 パスタ
「そういえば、食ったやつの力を奪うことができるんだったな……早速試してみるか」
「えちょっ……正気なの!?」
俺は目の前に散らかっているパスタを一心に貪り始めた。
明らかにミョーちゃんが引いているが、この世界に来てまだ何も食べてなかったので仕方がない。
「もっもっ……んっ」
お腹の辺りに謎のエネルギーが蓄積されたような気がした。
これで力を奪うことができたのだろうか?
俺は試してみることにした。
「こういうのは大抵ステータスが表示できるんだよな。……ステータスオープン!」
「?」
「……いや、ごめん。忘れてくれ」
この世界にステータスなんて概念は存在しなかったようだ。
と、思った瞬間。
ブォン
------------------------------------------
古谷刃 転移者 レベル1
HP:120
MP:40
[ステータス]
攻撃力:8
魔攻力:5
防御力:4
魔抗力:2
瞬発力:3
[スキル]
強欲な魂
フラワーバイン
[称号]
行き倒れ
パスタを喰らうもの
------------------------------------------
「こっ……これは……」
「なっ……何よいきなり」
ミョーちゃんには見えてないのか?
反応からすると、これは俺だけに与えられたステータスウィンドウらしい。
「ふむ……。ミョーちゃん、ちょっと見ててくれ」
「だっ……誰かミョーちゃんよ! 馴れ馴れしく呼ばないでよね!」
スキル《強欲な魂》というのは、恐らく力を奪うスキルのことだろう。
つまり、もう一つの方は……。
「出でよッ……《フラワーバイン》!!」
キュプィイ
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
周囲の地面が光ったかと思うと、大量のパスタが出現した。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
「やっ……何これぇ……わ、ひゃあぁぁッ!!」
見上げるとミョーちゃんがパスタに絡みつかれて身動きが取れなくなっている。
絶妙な締め付けにより、服で隠れてあまり見えなかった身体のラインがくっきりと見える。
「ちょっと!? 何見てるのよ! 早く何とかして!!」
何とか……と言われてもな。
「よし、パスタよ、戻れ!」
シュンシュンシュンシュン
この麺は術者によりコントロールすることが可能だったらしく、何とか収まったようだ。
ひょっとしたら、俺の心の中でミョーちゃんに対してこういう悪戯をしてみたいという気持ちがあったのかもしれない。
「うぅ~、ひどい目にあった……」
「俺としては色々収穫があった。ありがとう」
「どういう意味よ!?」
喰らった獲物の能力を身に着けることのできるスキルか。
咄嗟の思い付きだったんだが、このスキルは割とチートなんじゃないかと思い始めた。