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1話 出会い

 目が覚めると、俺は見知らぬ森の開けた場所に倒れていた。

 どうやら俺は転移したらしい。


 ここはどこだろう……いや、それより無性にパスタが食べたい。

 生憎と転生したばかりでこの世界に関する知識が全くない。

 辺りの木々から既にファンタジー臭のする世界だが、本当にパスタが存在するのだろうか。


 とりあえず俺は食料を求め、上体を起こした。

 数年ぶりに目覚めたかのような感覚。


「転生って、こんな感覚なのか……」


 ふらつく足に喝を入れ、何か食べられそうな物はないかと探してみる。

 ふと足元を見た瞬間、俺は思考停止した。


 麺が生えている。


 冗談でも比喩でもなく、草むらから本当に麺が生えているのだ。


「いや……パスタのある世界とは言ったが、これは予想外だぞ……」


 どこから突っ込んでいいものか悩んだが、とりあえず麺を引き抜いてみた。

 しばらく観察してみたが、葉や花のような物は見受けられず、

ただ麺――茎?――から細い紐のような根が幾つか生えているだけである。


 だが、やはりそこはパスタであり、とてもじゃないが生で食べられるような硬さではなかった。

 これはひとまず置いといて、何か別の食べ物を探す他ないようだ。


 と、その時、木の影から怪しげな呻き声を挙げながら何かが飛び出してきた。

 三叉の鉄槍に幾本もの触手のような器官を絡ませながらうねうねと蠢くその姿は、まるで……。


「パス……タ……」


 そう。

 巨大なパスタが敵意を剥き出しにしてこちらの様子をうかがっているのである。


 想像を絶する光景に、俺は唖然としていた。

 その瞬間、パスタが絡みついていたフォークをこちらへ突き出してきた!


「そんなのアリかよ!? 」


 ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス!


 必死の思いで避けたつもりが、全弾命中していた。笑えない。

 幸いにも一撃一撃の威力は低く、少し出血する程度だった。

 それでも、痛みは恐怖となり徐々に戦意を喪失させる。


「へっ……パスタが食べたいと願ったらパスタに殺されるなんてな……」


 死ぬまでにもう一度パスタが食べたかった。

 俺は覚悟を決めて目を閉じた。


 ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス!


 ……?

 おかしい。

 音は聞こえたものの、フォークで貫かれた感触もなければ、それに伴うであろう痛みも感じない。


 恐る恐る目を開けると、肉厚の剣を振り回し、巨大パスタを無慈悲に斬り裂いていく少女の姿が、そこにあった。


 無残にも千切れ飛んでいく麺の破片。

 呆然と眺めていると、少女がこちらへ歩み寄ってきた。

 どうやらパスタは天に召されたらしい。


「た……助けてくれてありがとう。俺は古谷刃(ふるたにやいば)。君は?」


「私はミョルニル。危ないところだったわね」


 凄まじい名前だなと思った。

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