8話・人の縁
「魔法は便利で強力だが、使い方を誤ると危険だ」
「悪い魔法使いも沢山いるしねー」
「そうなのか、一つ賢くなれたよ。ありがとう」
「このくら常識の範囲内だと思うが……」
クロンに怪訝な視線で睨まれる。
怪しい、と思っているのだろうか。
まあ仕方ないか、実際この世界の人間じゃないし。
「クロン、やめなよその目。失礼だよ」
「……そうだな、恩人に対して失礼だった、すまない」
「いや、別に気にしてないよ」
頭を下げるクロン。
礼儀正しいというより、少し硬い。
「そうだ、何かお礼しないとっ!」
シロンが言う。
参ったな、これで本日二回目のお礼だ。
けれども俺は貰えるものは貰う性分である。
「なら……少しでいいから、魔法を教えてくれないか?」
「いいよーっ!」
「シロン、簡単に言うな……魔法は才能に依存する部分が大きい、魔法適性が無ければ、そもそも魔法を扱う事が最初から出来ない」
シロンを嗜めながらクロンが言う。
才能なら多分問題無い。
神様から『魔法の才能』を貰ったからな。
「それに関しては、大丈夫だと思う」
「何故だ?」
「まあ色々あって」
「……分かった、深入りはしない」
「イェーイッ! 今度は私達が教える番だね!」
無邪気に笑うシロン。
彼女達も誰かから教わったようだ。
「教えるのは明日からでいいか? この後用がある」
「勿論構わないよ」
「私達、風林火山って宿に泊まってるから、もし何かあったらそこに来てね」
「分かった。あと一応、俺はホワイトスワンに泊まってる」
自分の宿を伝えておく。
この世界には電話が無い。
居場所を知る知らないとじゃ、だいぶ違う。
「そうだな……明日の昼前、風林火山に来てくれ」
「分かった」
「じゃあまた明日ねー」
そう言って二人の少女は去っていった。
なんか、疲れたな。
一日に人助けを二回もするなんて。
でも、知り合いが三人も出来たのは素直に嬉しい。
ここは異世界、頼れる人なんて誰もいない所だ。
考えてみれば……俺はかなり、行き当たりばったりな行動をしていたと、反省する。
町を目指して歩いていた時だった、偶然アキードさんの馬車を見つけていなかったらどうしていたのか。
そのアキードさんは言っていた。
商売は、人と人の縁だと。
これは純粋な人間関係にも当てはまる。
人同士の縁、繋がりが何よりもの財産だ。
金貨五枚を貰ったが、アキードさんと知り合えたのは、それ以上に価値のあるモノではと思う。
願わくば、俺も彼にとって有益な存在でいたい。
お互いを支え合う、そんな間柄に。
あの美少女二人とは、どうかな。
まだ何も分かってないけど……上手くいく気がすると、不思議と思えた。