7話・斬れ味
「ちょっとお兄さん」
「あん? 誰だ?」
「そろそろやめたら? 二人とも困ってるよ」
ぽんっと男の肩に手を置く。
男はギロリと睨んでくるが、ちっとも怖くない。
一度死んだから、そこら辺鈍くなってるのかな。
「ヒーロー気取りのガキか、怪我したくなきゃ消えろ」
「おら、これ見えねのか?」
三人の男達が一斉にナイフを見せてくる。
俺は瞬時に抜刀し、ナイフを叩き折った。
初めて斬る物が同じ刃物とはな。
けど、流石の斬れ味だ、良い試し斬りが出来た。
「見えないけど?」
「何言って––––っ⁉︎」
「ナ、ナイフがねえっ! いや、壊れてるっ⁉︎」
地面に散らばる刃物の破片。
そして俺の手に握られている、一振りの刀。
その状況が、真実を物語っていた。
「三秒数える。ゼロになったら、次はお前達を斬り刻む」
「ひ、ひいいいいっ!」
「にっ逃げろおおおおおっ!」
三人の男達は喚きながら逃げていった。
その様子を二人の少女は口を開けて見ていたが、ハッと意識を取り戻すと、直ぐに俺の近くへやって来る。
「ありがとうっ! キミのおかげて助かったよ!」
銀髪の少女は満面の笑みで言う。
活発そうな雰囲気がこれでもかと滲み出ていた。
服装は白が基準の、至って平凡なものだった。
「私からも礼を言う。ありがとう、君のおかげで助かった」
黒髪の少女はクールに言う。
彼女は全体的に冷たい雰囲気だ。
服装も黒色で統一されており、余り目立たない。
「私シロン! こっちの黒い子は友達のクロン!」
「おい、黒い子ってどういう説明だ」
「だってクロン、名前も髪も服も黒いじゃん」
成る程、言われてみれば確かにそうだ。
クロンは不服そうな表情を浮かべるが、いつもの事なのか、直ぐに冷静さを取り戻す。
「俺は伊東王助、よろしく」
「む、東の島国出身か?」
「まあ近い所だよ」
クロンに問われる。
そんなに珍しいのかな、東の島国って。
まあ、今はそれより。
「二人はどうして、絡まれていたんだ?」
「特に理由は無い。私とシロンで歩いていたら、突然現れて路地裏へ連れて行いかれた」
「魔法さえ使えれば、あんな奴らボッコボッコに出来たのになー」
ナンパにしては物騒だ。
やはり、そういう輩もいるのか。
「シロンさんは、魔法が使えるのか?」
「シロンでいいよー。うん、あとクロンもね」
「私も呼び捨てで構わない。同じ年頃だろう」
「分かった。なら俺も呼び捨てでいい」
円滑にコミュニケーションを取っていく。
魔法使いに出会えるとは、運が良い。
「どうして使わなかったんだ?」
「知らないのか? 町中で魔法を使う事は重罪だ。最悪投獄されて鉱山送りになる」
「マジか……」
思ったよりも重い罰である。
だから最後まで手を出さなかったのか。