6話・黒と白の少女
「アキードさん、またいつか」
「ええ、また会いましょう」
最後にアキードさんと握手して、商会を後にする。
彼にはだいぶお世話になったなあ。
この世界の事や町について、色々教えてもらった。
さて、とりあえずは宿泊施設を探そう。
寝る場所が無いからな、これもアキードさんにオススメの宿を教えてもらったので、そこへ行けばいい。
ホワイトスワン。
そこが紹介された宿屋の名前だ。
酒の品名を彷彿とさせるが、実際酒と関係あるのかは分からないところである。
しかし、凄い人だなあ。
この町の名は『スピルド』。
王都から離れてはいるが活気はあり、親しみやすい雰囲気が売りの町だった。
確かに、多種多様な人達が仲良く暮らしている。
勿論影のようなところもあるのだろう。
それでも、表の世界は綺麗なものだ。
暗い部分に積極的に関わるつもりも無いしな。
そうこうしてる内に宿屋ホワイトスワンへ辿り着く。
外観は落ち着いた雰囲気で入りやすそうだ。
扉を開けて入ると一階部分は食堂だったが、まだ昼前なので人は殆どいない。
今の内に受付で部屋を借りてしまおう。
「あの、部屋を借りたいのですが」
「はいよ、何日泊まる?」
「とりあえず、これで泊まれる日数、お願いします」
そう言いながら、受付のお姉さんに金貨を一枚渡す。
「金貨一枚なら、十日は泊まれるね。ウチは朝と夜の食事が料金に含まれるから、そこのところ宜しく」
「はい、構いません」
十日か、なら日本円換算で一泊約八千円から一万円。
妥当な値段だろつ、カプセルホテルでは無いのだから。
「二階奥の角が空いてるから、そこを使ってね」
鍵を渡される。
早速二階へ行き、部屋へ向かう。
室内は綺麗で掃除が行き届いている。
ベッドに加え机、椅子、タンスと一通り揃っているし、それなりに広い。
タンスの中には貸し出しているローブがあったので、それを羽織って再び外へ出る。
この町では、高校の制服はやたらと目立つ。
持っていく物も日本刀だけ、片手で持ちながら歩く。
あとで腰に付けるようのベルトや、背中にかける為の紐をどこかの店で物色しよう。
––––フラフラと町を歩く事、数十分。
「だから、用があると言っているだろう!」
「おー怖い怖い」
「威勢のいいお嬢ちゃんだ、へへ」
何やら不穏な空気が漂ってくる。
それに気づいたのは偶々だ。
見るもの全てが目新しいモノに見える俺は、ついつい視界に入るもの全てを観察していた。
「クロン、ど、どうするのー?」
「シロン……っ、いい加減にどけっ!」
「あ、何だあその目は、おい」
路地裏で二人の少女が、三人の男に絡まれていた。
黒髪の少女と、銀髪の少女。
二人ともかなりの美少女だった。
そんな彼女達が、刃物を持った男達に絡まれている。
流石に見過ごせないや。
俺は早足で少女と男達の元へ向かう。