5話・カタナ
刀……言うまでもなく、日本刀だ。
何故この世界にあるのだろうか。
「アキードさん、これは?」
「なんと、王助さんは本当に眼力のあるお方だ」
自社の商品に自信があるのか、アキードさんは勿体振りながら刀について説明し始めた。
「東の島国で偶然手に入れた物でしてね、市場でも中々見かけないレア物ですよ」
また、東の島国か。
空中浮遊ジズ皇国の前に行かないとな、こうも日本と類似した点があるのなら。
けれど、刀か。
武器としても使えるし、何よりカッコいい。
一度持ってみたかったんだ。
「じゃあ、この刀を貰います」
「どうぞ。その刀も、王助さんに使われるのを楽しみに待っていた事でしょう」
苦笑する、全くおだて上手な人だ。
置いてあった刀を手に取る。
軽い、けど心にズシリとくる重みを感じた。
「少し、試し振りをしてもいいですか?」
「ではあちらの部屋で」
アキードさんに案内される。
そこは物の少ない部屋だった、家具も無い。
今は使ってない倉庫だと言う。
「よし……」
鞘から刀身を引き抜く。
銀色の刃が、怪しく輝いた。
両手に籠る力が強まる。
同時に、ナニカが俺の身体に降りた。
そのナニカに意識を委ねると……刀の扱い、取り回し方が手に取るように分かってしまう。
その知識通りに、刀を振り回す。
斜め切り、横、突き、上段、下段……思いつく限りの剣舞を次々と披露していく。
それを見ているアキードさんは呆気に囚われていた。
無論、俺も驚いている。
武器なんてナイフすら持った事無いのに。
もしかして、これも神様の力なのだろうか。
◆◇◆◇◆
「ほっほっほ、やはり彼は驚いてるようだ」
「しかし、本当によかったのか、ジイさん」
神様に親しく接するのは、髭を生やした中年男性。
しかしてその身体は鋼のように鍛えられており、また彼の発する圧力も並みの武人を超えていた。
それもその筈……彼は武神タケル。
戦いの神であり、戦闘のエキスパートだった。
「俺様の加護を与えるなんてよ」
「構わん、元々は私の責任だからな」
「ま、見ていて楽しいのは分かるけどよ」
無邪気に笑う武神。
神様もまた笑顔を見せる。
彼らにとって、王助は孫や弟のような存在だった。
孫に甘いのは例え神様でも、変わらないらしい。
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