4話・アキードさんの商会
「おお……!」
思わず感嘆の息が溢れる。
そこはまさに中世ヨーロッパ風の町並みだった。
自動車や自転車など存在せず、馬やよく分からない異世界の生き物が道路を走っている。
排気ガスの匂いもしない、飛行機の騒音も聴こえない……本当に全てが日本とは違う世界、いや町だ。
「王助さんは、この後どちらへ?」
「特に予定は無いです」
「なら是非、私の商会へ来てください。お礼もそこで渡したいと思っています」
そのままアキードさんの馬車に揺られる。
移動中、俺はずっと窓から町の景色を眺めていた。
衣服も違うのが驚きだ。
それに、剣や槍で武装している人がチラホラいる。
誰も何も言わないし、ここでは当たり前なんだろうか。
それから数分後、アキードさんの商会へ着く。
そこそこ立派な建物だった。
「さあ、こちらへ」
応接室のような部屋へ通される。
座ると早速、お茶が出された。
普通のティーカップで、静かに口へ運ぶ。
紅茶っぽい味の何かだ。
あとで名称を聞いてみよう。
「それでは改めて……助けて頂き、ありがとうございます」
「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」
「王助さん……なんて心の広いお方だ」
感涙の涙を流すアキードさん。
そこまで言われると、流石に照れる。
「おっといけません、お礼の話しでしたな……来てくれ」
アキードさんが呼びかけると、応接室の外で待機していただろう人達が入ってくる。
台車を引いており、色々な物が置いてあった。
「まずはこちらを。金貨五枚です」
袋に入った金貨を渡される。
瞬間、貨幣価値が脳内で処理されていく。
金貨一枚は、日本円で十万円相当だ。
いきなり五十万円も貰ってしまった。
まあ、貰えるなら遠慮無く貰うが。
「そしてこちらが、当紹介で取り扱っている商品です。最高品質の物を取り揃えました。こちらの中からお好きな物を二つ、持って行ってください」
「随分と気前が良いですね」
「商売は人と人の縁です。助けて頂いた恩もありますが、私は王助さんに可能性を感じました。近い将来、大物になるであろう可能性を」
初対面でそこまで期待されているのか……
若干苦笑いを浮かべながら、品物を選んでいく。
種類は様々で、日用品から武器まであった。
「これは?」
小さな布袋を見つける。
他の商品に比べて明らかに貧相だ。
「お目が高い。それは空間圧縮と時間固定化の魔法が施されたマジックバックです。容量は大きめの大きめのリュックサック程ですが、何かと便利ですよ」
「凄い……これ、貰います」
マジックバック、そんな物まであるのか。
確かに便利そうなので、一つ目はそれを貰う。
あとは……武器が欲しい。
この世界は武装するのが当たり前っぽいので、何か持っていないと逆に絡まれそうだ。
「あ、これって……」
視線の先には、一振りの『刀』が鎮座していた。
6話まで一時間更新です。