3話・町
「いやあ、護衛をケチって雇わなかったのが運のツキだと思いましたよ」
「よろしければ、次の町まで俺が護衛しますよ」
「本当ですか⁉︎ それはありがたい!」
アキードさんは子供のように喜ぶ。
俺としても、このまま歩くのは面倒だと思っていた。
馬車に乗せてもらえるなら万々歳である。
「お礼は町に着いてから、という事で」
「はい、問題ありません」
アキードさんの馬車が馬に引かれて動き出す。
馬が生きていたのは、不幸中の幸いだった。
最悪俺がアキードさんを背負って走る羽目になっていたと思うと、うん、生きててよかったお馬さん。
「貴方のお名前を聞いてもよいでしょうか?」
「勿論。伊東王助です」
「ふむ、東の島国出身ですか?」
東の島国?
日本に似たようだ国がこの世界にもあるのか。
面倒なので適当に誤魔化しておく。
「近くて遠い、ですかね」
「まあ、あの辺りには島国が多いですから」
その話題を皮切りに、この世界の国について、可能な限りアキードさんに教えてもらう。
まず、今俺達が立っている大地は『龍神大陸』。
大昔に龍神が創造したと言われる大陸だ。
そして龍神大陸には、三代国家と呼ばれる国がある。
安定した国力のリヴァイアサン王国。
世界一の軍事力を誇るベヒモス帝国。
大陸唯一の空中浮遊国家ジズ皇国。
今居る領土はリヴァイアサン王国のものである。
「空中浮遊国家、ですか」
「ええ、私もいつか行ってみたいものです」
国そのものが観光地のような所らしい。
本当に、巨大な大地が浮いているとか。
ただ、そこへ向かうまでの渡航費が物凄く高い。
一般人の平民にはまず出せない額で、貴族でも下級貴族では難しく、上級貴族か一流の商人でないと行く事すら難しい国なのだとか。
俺もいつか行ってみたい。
空を飛ぶ大地とか、男の子の心をくすぐる。
因みに貴族というワードが出てきたが、リヴァイアサン王国では身分制度が絶賛稼働中のようだ。
王族・公爵・侯爵・伯爵・男爵・子爵・騎士爵と七段階に分かれており、その階級は絶対である。
とは言え、王族の地位は不動だし、騎士爵も活躍した平民に叙爵される爵位で領地は持てない。
実質五段階と言っても、差し支えなかった。
しかし、身分制度か。
日本で住んでた身としては、新鮮である。
それから出会う人に対しての言葉遣いは気をつけよう。
実は貴族で、不敬罪で殺されます、なんて耐えられない。
「あ、町が見えてきましたよ」
アキードさんが言う。
町は外壁に囲まれていた。
魔物避けの為だとか。
あの外壁そのものに、魔物を寄せ付けない魔法の加護が付与されているらしい。
関所の門を通り、いよいよ町へ入る。
ワクワクでいっぱいだった。
6話まで一時間更新です。