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王道(キング・オブ・ロード)な異世界転生物語  作者: 下っ端労働者
第1章【転生者イトウ・オウスケ】
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最終話・くだらない

 

 愛用の刀である無銘を抜く。

 いつかキチンとした名前を付けたいが、俺はどうもその辺りのセンスが乏しいようで、中々決まらない。

 どうせならカッコいい名前の方が刀も喜ぶだろう。

 それまでは、無銘という名で我慢してもらうか。


「余所見してんじゃねえっ、死ねや!」


 冒険者Aが大剣を振りかざす。

 筋骨隆々の身体から繰り出される一撃は、さぞ痛いだろう。

 当たらなければ、意味は無いけど。


「余所見くらいしないと、張り合いが無い」

「な、この!」

「遅い、遅すぎる」


 大剣による連続攻撃を避けていく。

 元々大剣そのものが、連撃には向かない武器だ。

 重たいから振り下ろすか、突く事しか出来ない。

 神様の力でパワーアップしている俺に、そんな攻撃は永遠に当たらないだろう。


「なら!」

「これでどうだ!」


 大剣を避けたタイミングで、両サイドから短剣を装備した冒険者BとCが攻撃してくる。

 加えて背後から、魔法の詠唱が聴こえてきた。


 四方八方敵だらけの状況に笑えてくる。

 どうせギルドは抜けるんだ。

 派手に暴れて、喧嘩を売った事を後悔させてやる。

 報復なんて考えられないくらいに、ね。


「甘いよ、先輩」


 Bの狙いは俺の右足、Cは左足だ。

 まず大きくジャンプしてBとCの攻撃を避け、そのまま空中で逆さになり、真上からBとCを無銘で斬る。

 丁度その瞬間に魔法が放たれるが、風陣捕縛を唱え相殺し、新たな魔法––––『雷光弾丸』を撃ち出す。


 雷属性を纏った魔力の塊は、驚異的な速度で真っ直ぐ飛び、魔法を使った冒険者を貫く。

 更にそこから弾丸は破裂し、周囲に電流を流す。

 大したダメージは与えられない。

 僅かな間、身体を痺れさせる程度の魔法だ。


 だけど––––それだけあれば、充分だ。


「いくぞ……!」


『風圧前進』。

 魔法の突風が、追い風のように身体を後押しする。

 元々の身体能力に加え、魔法によるブースト。

 俺の速度はこの瞬間、雷を超えていた。


 無数の血液が舞い上がる。

 無銘は多くの冒険者の肌を裂き、肉を断つ。

 その度に血を被るが、風で全て吹き飛んだ。


 単純な動作を何回か繰り返す。

 斬って、斬って、また斬って。

 気づけば俺に絡んで来た冒険者ほぼ全員が、身体中から血を流し、呻き声を上げながら倒れていた。


「なんだ、もう終わりか」

「あ……あ、あ」

「ゆ、許してくれ……た、頼む……!」


 魔法の練習にもならない。

 もっと手応えのある敵と戦いたいな。

 あれ、俺ってこんな性格だっけ?


「……ふざ、けるな」


 一人の冒険者が呟く。

 その男は偶然俺の猛攻に逃れたのか、未だ無傷だった。

 剣を握ってはいるが、プルプルと震えている。

 逃げないのは、最後に残ったプライドか。


「ふざけるなって……言いたいのはこっちだよ」

「……お前らみたいな若い新人が、何も知らねーのに軽い気持ちで冒険者志すのが、悪いんだ……!」

「はあ?」


 言いたい事があったから、逃げなかったようだ。

 折角なので聞いてみる。

 悪党には、どんなワケがあったのか。


「冒険者ってのは、常に危険と隣り合わせ、命が幾つあっても足りねー仕事だ。確かに当たれば一攫千金、実際そういう奴も何人か見た事ある……だけどよ」

「……」

「そんな事、簡単に起きるワケねえ! なのにお前ら新人は気楽そうに冒険者になって、ピクニックへ行く気分で依頼を受ける! 甘いんだよ、何もかも! それで失敗すりゃあギルドの顔に泥を塗る、そんな事も分からねー頭で依頼をほいほい受けやがる!」


 男は感情が高ぶっているのか、饒舌になっていく。

 俺はそれを黙って聞いた。


「だから教育してんだ! 言っても聞かねーなら、身体に覚えさせるしかねえだろうが! 何も知らねーガキが、少し強いからって調子に乗るんじゃねえ!」


 男の言葉に、ことの成り行きを見守っていた冒険者達から拍手が送られる。

 そして俺に罵倒の声が飛んできた。


「そうだ! それが冒険者のルールなんだよ!」

「俺達はそうやってシゴキを受けて、ここまで来た!」

「当たり前なんだよ! 冒険者の世界じゃ!」


 喧騒は次第に大きくなる。

 いつの間にか、ギルドの冒険者全員が俺を敵視していた。

 ここでの異分子は、俺だと。


 その様子を見ながら、俺は冷たい声音で言った。


「くだらない……本当に、くだらないな」


 ピタリと、喧騒が止まる。

 嵐から一転、張り詰めた空気となった。

 俺は続けて言う。


「お前達のくだらない言い分なんて、どうでもいいんだよ。成る程、冒険者が嫌われている理由が分かったよ……自分勝手なルールを押し付ける奴は、どこの世界でも嫌われる、当たり前だ」

「なにいっ!」

「建前をベラベラ言ってたけど、要するにお前ら、新人騙して女を犯す、最低のクズ野郎でしかないんだよ、分かったらさっさと失せろ、底辺以下のゴミ虫共」


 そう言い、無銘を構える。


「いや……俺が直接、掃除してやるよ」


 無銘に無数の風が纏わり付く。

 風は小さな台風となり、嵐へと変化する。

 怒りという感情で、俺の魔法が進化した。


 風と雷の合成魔法––––『風雷顕現』。


 それは小さいが、エネルギーの塊だった。

 振り下ろせば確実に災害と同じレベルの被害をもたらす。

 クロンとシロンは既に避難していた、姿が見当たらない。

 なら、何も心配する事は無い。


 俺は無銘を、迷い無く振り下ろした。



 ◆



 結果的に言えば、ギルドは崩壊した、物理的に。

 在籍してる冒険者……その全てを、俺は暫く休養が必要なくらいまでに叩き潰したのだ。


 やり過ぎだとは思っていない。

 本当に腹が立った。

 自分こそが正しいと信じてやまない、あいつらが。


 一体どんな理由があれば、何の罪も無い少女を犯し、半殺しに出来るのだろう。

 無法地帯も極まるとああなる、勉強になった。


「王助、何をしている?」

「いや別に、何でも無い」


 俺達は今、馬車に乗っている。

 目的地は特に無い。

 住み易い地域を探す、流浪の旅だ。


「どっか、楽しい所に行きたいなあ!」

「ああ、そうだな」


 無邪気に笑うシロンを見て微笑む。

 彼女は立ち直るのが早い性分のようだ。


「楽しんでばかりじゃいられない。早いところ収入源となる仕事を探さないと」

「えー、いーじゃーん!」

「駄目だ。後先考えないのは、身を滅ぼす」


 クロンも相変わらず硬い。

 まあでも、彼女らしくて良いか。

 窓から外を眺める。


 真っ青な空が広がっているが、現実はあの空ほど、綺麗で澄み切っていない。

 それでも、俺はこの世界で生きて此処にいる。

 なら、精一杯楽しんで生きよう。

 偶には失敗するかもしれない。

 けど大丈夫、俺には二人の仲間がいるから。


「王助?」

「オースケ? ポカンとして、本当に大丈夫?」

「……ああ、大丈夫だよ」


 拝啓、神様。

 俺はこの世界でも、何とかやって行けそうです。

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