15話・愚者達
下卑た視線をシロンへ向ける冒険者達。
クロンは汚物を見るかのような目で威嚇する。
逆にシロンは、少し怯えていた。
「外道が、最初からそれが目的か……!」
「まー落ち着けって。抵抗しても無駄だぜ、ほら」
男が見せつけてきたのは、銅色のギルドカード。
Cランク冒険者の証だった。
それを見てクロンは、一歩後退る。
Cランクともなれば中堅の冒険者だ。
新人冒険者が数人いても、勝てるワケが無い。
「ど、どうしよう、クロン、オースケ……」
「シロン……」
不安な声音を絞り出すシロン。
そんな彼女を庇うように前へ出るクロン。
俺は、男達に幾つか質問する。
「先輩方、その口ぶりだともう何回もこういう事やってるみたいですけど、ギルドからお咎めは無いんですか?」
「はっ、そりゃそうよ。ギルドはある意味治外法権だ、強い奴が優遇される。それに騎士団に通報したところで、冒険者の話なんか騎士サマは聞く耳持たねーよ」
下品な笑い声をあげる男達。
今ハッキリと、この世界の闇を見た。
冒険者ギルドと騎士団の対立。
騎士団とはこの世界の警察みたいなものだ。
つまり、法を守る組織。
その組織と対立してるが為に、ギルド内での違法がまかり通る現実に、俺は辟易した。
そして、それを正そうともせず、自ら抜け道を嬉々として進む目の前の冒険者達に……怒りが、湧いてくる。
「んじゃ、先にどっちから頂こうか」
「おい、男はどうする」
「ボコってその辺に転がしとけ––––いやまて、ねーちゃん達が俺らに犯される様子を見物させるのも、面白いかもなあ、はは!」
「そりゃあ良い、天才だなお前!」
会話を聞いてブルブルと震えるシロン。
弱々しい力でクロンの袖を掴んでいた。
「大丈夫だ、シロン」
「クロン?」
「もう、仲間を傷付けさせない。私が、守る」
一人、前は進むクロン。
その両肩は小刻みに振動していた。
「……私には何をしてもいい、望むなら命も断つ。だから頼む、二人には手を出さないでくれ」
「クロン! ダメだよそんなのっ⁉︎」
「クロン……!」
彼女の決意は壮絶だった。
しかし、冒険者達はそれを嘲笑う。
「ギャハハハハッ! 見逃すワケねーだろ!」
「女は仲良く犯してやるよ、なあ!」
「よし、最初は男をボコるところを見させるか」
「っ、や、やめろっ! 頼む!」
男の腕に飛びつくクロン。
だがしかし、あっさりと剥がされてしまう。
「どけ!」
「あうっ!」
「おらガキ、さっさとこっち来い」
手招きしながら男達がやって来る。
シロンは涙を流しながら腰を抜かしていた。
壁に叩きつけられたクロンは、静止の叫び声をあげる。
そして、俺は––––
「早く来いって言ってんだろクソガキがっ!」
「……さようなら、先輩」
「なにいっ……あ?」
––––敵をどう殺すか、直前まで考えていた。
「が、あ、ああああああああああっ⁉︎」
「うるさい」
「あがっ⁉︎」
圧倒的な握力で男の手首を破壊した俺は、そのまま右足で蹴りを繰り出して弾き飛ばした。
こんな奴らの為に手を汚す必要は無い。
俺はとある私刑を思いつき、内心笑った。
「二人とも、下がっててくれ」
「王助……」
「オースケ……」
「もう決めた、あとは全部、俺が片付ける」
こくこくと頷く二人。
続けて俺は、冷酷な瞳で冒険者達を睨む。
さっきの男は既に蹲り、戦闘不能となっていた。
蹴りで内臓をやられたのかもしれない。
「な、な!」
「くそが! ガキが調子に乗るな!」
「お、俺達はCランク冒険者だ、負けるものか!」
二人の男が武器を振りかざす。
まず、一人目の大剣を片手で受け止める。
そのまま握力だけで刀身を折り、破片を投げて後方に控えていた槍使いの体へ突き刺す。
「ぐああああっ⁉︎」
「マルク⁉︎」
男の悲鳴と共に、赤い血が吹き出す。
だがまだ致命傷ではない。
良かった、勝手に死なれたら面倒だからな。
「次はお前だ」
「くそったれがあああああああああああ!」
折れた大剣で突進してくる男。
俺は無銘を抜き、空属性の魔法を発動させる。
僅かな電気が煌めき、無銘の刀身へ流れていく。
銀色の無銘に、青い雷が纏うように取り付いた。
「……電光斬」
即興で考えた技名。
ただ、効果の方はそれなりだった。
「あばっ、あばばばばばばばっ⁉︎」
軽く大剣に触れただけ。
それだけで、男は痺れ倒れた。
試しに魔力を大量に流してみたが……ふむ、例え初級魔法でも、魔力を大量に使えば威力が上がるようだ。
「ひ、ひいいいっ!」
「逃すかよ」
最後に残った男が逃走を図ろうとする。
俺はクロンが使っていた魔法を思い出した。
「風や、敵を拘束しろ」
「がっ!」
風陣捕縛。
こちらも即興で試したが、上手くいったようだ。
男は風の牢獄に囚われ、身動きが取れない。
Cランク冒険者なら、中級魔法の突破方法くらい知ってそうなものだが……まあ、どうでもいいか。
「お前も気絶してろ」
「あばばばばばばばっ⁉︎」
首に無銘の切っ先を当て、痺れさせる。
これで四人全員無力化した。
だが、死んだワケではない。
ここからが本番だ。
腰のポーチからワイヤーを取り出し、男達を縛る。
そのまま通路の中央へ放置して終わりだ。
「……な、何のつもりだ……」
「ん? このまま魔物の餌になってもらおうと思って」
「っ⁉︎」
「血の匂いもあるし、直ぐに寄ってくるだろ」
「まっ––––」
何か言う前に電光斬で気絶させた。
食われ始めたら、流石に起きるだろう。
最も、起きない方が安らかな死を迎えられるだろうが。




