14話・強襲
「ギギイッ!」
「っ、この!」
戦っているのはシロン一人。
対する魔物は先程と同じ、ラージラット。
但し数が増えて二匹いる。
それでもシロンは、クロンのサポートがあれば問題無いと言い、俺に手を出すなと言った。
確かに俺が全て倒してしまったら、魔物との戦闘経験がいつまで経っても蓄積されない。
オンラインゲームでもそういうのがあったな。
一人が敵を倒しすぎて、パーティーを組んでいた他のプレイヤーに経験値が入らない現象。
やってる方は楽しいが、待ってる方はつまらない。
まあ俺達が今やってるのは、ゲームでは無いリアルの狩りなのだが。
「はっ!」
シロンは決して速くないが、身体が柔らかい。
その特徴を活かし、あえて接近してラージラットの攻撃をギリギリで避けている。
ラージラットが噛み付こうとするが、彼女はそれを右足を軸にして回転しながら身体を横に。
シロンの前を通り過ぎる格好になったラージラットの横腹はガラ空きだ、俺なら無銘を突き刺す。
しかし、シロンは魔法使いだ。
咄嗟に攻撃出来る手数が少ない。
だがそれは彼女も承知しており、だからこそサポーターとしてクロンが控えている。
「風よ、敵を縛れ」
「ギギイッ⁉︎」
風の塊がラージラットを撃ち抜き、直後小さな竜巻のようなモノがラージラットを囲んで捕らえる。
詠唱をしたから、恐らく中級魔法だろう。
手足をばたつかせるラージラット。
若干だが身体が宙に浮いていた。
そしてシロンも、その隙を見逃す程甘くない。
「火よ、拳に宿れっ!」
シロンも中級魔法を唱える。
彼女の両手に、オレンジ色の炎が灯った。
煌煌と燃えるそれは、ある意味美しい。
「いっくよーっ!」
掛け声と共に、シロンは拘束されて動けないラージラットを両手の連打でタコ殴りにしていく。
右、左、また右。
意外にも一発一発が鋭い。
あの炎には拳を強化する作用でもあるのか、シロンの両手は全く傷付かず、一方的にダメージを与えていく。
「ギ、ギ、ギギ」
気づけばラージラットは死んでいた。
身体中ボコボコに凹んでおり、ついでに焼けている。
流石に哀れだが、魔物に同情しても仕方ない。
魔物を退治しなければ、ここの従業員が襲われる。
「よっと、魔石回収っ」
「シロン、少し動きに無駄多い」
「ちょっと興奮しちゃって、次は気をつけるね」
戦闘後、反省点を踏まえる二人。
その様子は手慣れている。
冒険者登録の前に、魔物との戦闘経験があったのだろうか。
それから気になった事を聞いてみる。
「なあ、二人が使った魔法は何なんだ?」
「私が使ったのは『フレアナックル』だよ」
「私のは『風陣捕縛』だ」
説明を受ける。
フレアナックルは自分の両手に炎を灯し、攻撃力を増加させる、珍しい物理強化系統の魔法。
風陣捕縛は風の塊を飛ばし、当たった対象を竜巻で拘束する妨害系統の魔法。
「俺にも出来るかな?」
「魔道書を読んで、訓練すれば可能だろう」
「オースケは火も風も適性あるもんね」
やはり魔法は便利そうだ、覚えておいて損は無い。
大人数を一々刀で突き刺すのは、面倒だからな。
「そろそろ出てきたらどうです、先輩方」
「え?」
「王助?」
何もない通路に声をかける。
戸惑う二人だが、直ぐに意味を理解した。
岩陰から四人の冒険者が、ぞろぞろと現れたからだ。
「何だ、気づいてやがったのか」
「生意気そうなガキだ、先にやっちまおう」
「まてまて、殺すのは流石に問題になる」
「なら、半殺しならいいんだよな、くくっ!」
冒険者は全員、しっかり武装していた。
大きな剣や片手の斧、槍が目に入る。
「な、何なんだお前達は!」
クロンが叫ぶ。
それを見て、冒険者達はニヤニヤと笑みを浮かべる。
「狙いはあんた達だよ、ねーちゃんども」
「え、私達?」
「そうだよ、久々に女が……それも上玉がギルドにノコノコと登録しに来たんだ、食わねー手は無い」




