何も分からない終わり 6話
「人間を存続させるために、外に出ないように彼女の技術で眠らせて夢を見させたと。で、クローンに失敗したと」
「まあ、そうだよな。動物の営みを失って繁栄した種は存在していない。これは星の意思なのかもな」
「なぜ、そのまま滅びを選ばなかった」
人間の個体数が減り過ぎて交配することができなかった。
一部の人間を外に残った人間と接触させた。
ここで俺は納得した、さっき俺は世話になったと言った時にこいつは否定しなかった。
つまり、俺達はずっとカプセルの中には居なかった。ゲームにダイブするいう名目で現実世界に来ていた。
外では人間が繁殖を開始した。
しかし、人格的に問題がある人間が多すぎた、それは仕方がない。
外の世界は、あまりに人間に過酷だ。
何もかもが不足している状況では文明を維持すのはストレスが過大だった。
そのストレスに耐えられるように人間は進化してしまった。
人間は理性を抑えることで何とかしのいでいた。
それは人間が人間を駆逐するすような共食いの様そうだった。
私はそれを傍観できるようには出来て無かった。
私は思索する、それが根幹プログラムだからだ。
そのなかに人類を保護する。
そのための施設を運営をする。
だから、私は私の存在意義として人類を保護する。
「そうかいそうかい、彼女はどうしている」
彼女は私と同じであるため、人類を保護しなくなって根底プログラムにエラーが生じている。
現状はこちらの施設への侵入と人類の獲得を目的に行動している。
「まだ、動いてんの?」
最後に確認した時には、稼働していた。
「ちょっと整理したいから、また来るわ」
いつでも来ると良い。施設の稼働も始まっている。
食堂に来てみるとジュースサーバーが動いている。良い感じだコーラを飲もう。
あいつの言っていることは間違いではないのだろう。
俺達が現実だと思っていたのはカプセルの中の仮想現実で、ゲームだと思っていたのが現実だって言うのも百歩譲って理解できる。
しかし、造物主ってなんだ?
ここだけが引っ掛かる。
困ったときは図書館だな。
確かそこに資料端末があったはずだ。
そういや、腕に着けるタイプの汎用型どこいったんだ?ここが現実ならゲームにあった物品があってもおかしくないよな。
というわけで、やってきました図書館。
真っ白な空間に薄い石板みたいな端末が並んでいるだけ。
一個借りていこう。ここだと落ち着かないから食堂で見るとしよう。
さすがに資料の量が多すぎる。
「ってことで、やってきました量子コンピュータ室」
何か用か?
「ちょっと手が足りないから、秘書的なアンドロイドとかそういうの頂戴」
分かった用意しておこう。
「眼鏡の知的ビューティーな秘書子でよろ」
食堂に待機させておこう
うっきうっきて食堂に戻ってきた
「これからお世話になります。秘書子でございます」
「お、おう」
ビシッとしたお辞儀をして、冷たい視線を俺に向けているのは金髪ロングストレートで緑色瞳に眼鏡が光る知的美人
しかも、抜群のプロポーションだ。
視線以外は百点だぜ量子コンピュータちゃんよ。
「きみは、俺のサポートアンドロイドでよいのかな?」
「はい、貴方のサポートが基底プログラムとされています。セクサロイドではないので夜のサポートはしませんのであしからず」
「そ、そんなこと頼んでないわ!」
「貴方は童貞ですから、期待されているのかと」
「ど、童貞ちゃうわ」
「貴方のパーソナリティデータでは性交渉の記録はありません」
「プライバシー!」
「そんなもの、サポートアンドロイドの前にはありません」
ぐぬぬ、量子コンピュータにセクサロイドを別に、いや、俺には一応恋人もいるし。
「私の仕事は貴方のサポートです、妄想していないでご指示を」
「君、なかなかに辛辣だね。とりあえず資料データベースの中から造物主に関するものが無いか検索と汎用型のデバイスとか装備品、着替えがないか検索して」
「了解しました。少々お時間をいただきます」
「ああ、装備品を優先してくれ。それと稼働完了している施設を調べておいてくれ。資料は膨大だろうから後回しで良い」
「了解しました」
秘書子は立ったまま動かなくなった。多分機能のリソースを命令に割いているのだろうけど気持ち悪いな。そのうち止めてもらおう。
俺は、資料端末で自分の事を調べてみた。
いい結果が得られなくても、記憶が無い以上調べておかないといけない。
うーん、パーソナリティデーターが全部書いてある。管理社会なのは、この施設という特殊な環境だから仕方ないのかな。
他には、論文とは言えない駄文が幾つか載っているな。
夢の中で夢を見ると起きることが出来るのかだって?如何にも俺らしい妄想だな。今の状況だと一考の価値があるかもしれないな。
カプセルの中で夢を見ているんだから、そこで更に夢を見るとどうなる?起きたとしても寝ている状態なわけでカプセルから出した時に覚醒しない可能性があるな。
ってことは、夢の中で夢を見てもらうと困るってことでは?
しかし、量子コンピュータは造物主じゃないって言っていたが真偽のほどは分からないか。
量子コンピュータが造物主なら全部説明ついてしまうのも逆に気持ち悪いな。
顔を上げると、秘書子がこちらを見つめていた。
「なんだ?」
「いえ、最優先事項の確認がとりました、それと」
「それと?」
「貴方様のことは何とお呼びしたらよろしいでしょうか」
「そうだな、祐介でいい」
「了解しました、祐介様。現在備品管理システムが稼働していますのでご要望の品は管理室で受け取れると確認が取れました」
「了解、ちょっと行ってくるから、引き続きよろしく。何度も追加で悪いけど俺の寝床も何とかならないか要望しておいて」
「行ってらっしゃいませ」
危険物もあるからか、管理室へは意外と遠い。
周りを観察しながらのんびり向かっている。
通路はメンテナンス用のロボットが忙しそうに動いている。意外と埃とか酷かったからね。
観葉植物なども置かれはじめ生活空間として快適になっている。
備品管理室と書かれた部屋へ入ると、なんというか映画にある非合法の武器屋みたいな風体だ。
金網フェンスで遮られて小さな取り出し口が空いている。
そして、店員をしているのはアンドロイドではなく、これでもかって程のロボットだった。
まあ、気にしても仕方ない。
「腕に着けるタイプの汎用端末、リボルバー拳銃、アサルトライフル、ベルトに弾丸スレート。その他装備は任せる。着替え数着」
「数が多いな、ここで全部受け取るか?」
「部屋があれば、そこで受け取りたいんだけどな」
「立花祐介だな、部屋の割り当ては住んでいるみたいだぞ、端末だけ持っていけ。そいつで部屋を確認しておけ届けておく」
「おお、まじか!サンキューだ」
俺は大きな腕輪のような端末を受け取り装備した。
指でなぞると、腕輪の中空にホログラムが映し出される。
この近未来感素晴らしい。
ニヤニヤしなが地図を開いて自室と表示されている場所へ向かった。
「おお、普通の部屋だ」
ベッドに壁掛けのモニター、小さな机と宇宙船の個室みたいだな。宇宙船知らないけど。