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天使戦争  作者: 薬売り
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何も分からない終わり 5話

 酷い夢だ。


「俺は、いま何処に在る」


[マスターは、施設のスリープ装置の中に在ります]


「現実は?っていうかマスター?」


[全て現実です。スリープを行った時点で人間たちの中で私のマスターが選出されました]


「スリープ前の記憶がないんだが?」


 スリープ機能による障害です、冷凍睡眠に近いため記憶が欠落します。求められれば当時の様子をご覧いただけます]


「なんか地雷っぽいな。マスターに選ばれた理由だけ聞かせてくれ」


[当時で一番知識に興味を持っていました、後は無茶はするけど酷い事はしないだろうという総意でした]


「あの20世紀っぽいのは夢か?」


[学習機能の舞台です、問題がなければ時間が経過します]


「問題がなければ?」


[時間を加速して認知度を上げているため、現実世界より学習効率が上がります]


[今は、西暦換算で5829年です]


「茉莉は、ネフィーは」


[現実に存在しています、同じくスリープ装置の中です]


「ずいぶんチープな設定だな」


[そうでなければ、人間は発狂します]


「あの属性てんこ盛りの神様とかは?」


[マスターの趣味趣向を彼女がアクセスポイントとして設定した結果です]


「謝らない」


[取り扱い情報量が多すぎて結果として、進行を遅らせています]


「ハッキングを受けているって事!?」


[そのとおりです。彼女の基底には謎のままですが破滅願望者が息づいていますから]


「面倒くさいな」


[寝てしまえば、緩やかに朽ちていくことが可能です]


「それは望むことじゃないだろ、起きる」


[了解しました]


「全員は起こすなよ、モニタリングしておいてくれ。起きたくなったら起きるだろう」


[御意]


「意識、知識のコピーを禁止する」


[イエス、マスター]


 はあ、チープすぎて萎える。


 全部、夢落ちでしたってね。


 打ち切りの漫画より質が悪い。


 とりあえず、そこらじゅうを殴って蹴って奇声をあげる。


 落ち着かない。


「飯は?」


 ランプが灯った。


 灯火管制かエコモードか、両方かもな。


「そこそこ広い食堂だなって給仕のアンドロイドがいるのかと思ったら居ないのな」


[最低限の施設維持に回しています]


 やっぱりエコモードか。


 食堂に宇宙食みたいなのがあった、なかなか美味い。


「うまい」


 何をすべきとかじゃないよな。


「施設を起こせ、何をするか考える」


 見事な近未来感だなと、そこらへんを歩き回って起動するまで待っている。


 何処に何かあるか微妙に分かってしまうのは気持ち悪いな。


 起動おっそいな、色んなカプセルも濁ってるし。


「命令権限は俺にあるか?」


[御意]


「施設の全設備起動に備えてメンテナンスを開始、向こう側に気付かれないように」


 ステルスを最優先で再起動命令を確認


「内部、外部の情報収集を同時並行」


[御意]


「俺の寝る場所」


[ありません]


「をいいー」


[避難者の一次滞在場所に物資を確認]


「はいはい、寝袋でもいいよ。案内よろしく」


 少し思索をしようか。


 結局、現実はどこにもなくて教育カプセルの中だったってオチかな。


 でも、みんなまだ寝てるって言ってたな。


 映画のように生存圏が狭まっているのは事実なのかな。


 良く分からないな。


 一次滞在所って避難所みたいだな。


 清潔なのが救いだな。


 寝袋もあるし、エアマットもあるな。


 ランプがアルコールなのは電源が使えなかったのかな。


 ああ、着替えもあったから拝借した。


 余計な事考えずに眠ろう。


 ああ、体中がバキバキだ。


 結局、全部非現実でしたってオチだよ。


 知っている人間が実在しているだけでも良いのか?


 普通にしている自分は人間なのか、冷静でいられるから恐らく違うのだろうな。


 この施設が命令を聞くのが余計に実感させられてしまう。


 何をどうしろっていうんだよ。


 生存圏の獲得なんてプログラムされてないだろ。


 彼女の生存なんて俺の知ったことではないぞ。


「んで、種明かしをってわけか?」


 俺の前には、カプセルの中に入っている人形が浮かんでいる。


 俺が入ってきた扉には量子コンピュータ室って書いてあったよ。


「まさか、人型とは未来の技術はすごいね。全然ほめてないし」


 よく来たな。


「喋り方まで変わるのな。何様だ、ああ俺でも分かるよ。造物主様か?」


 ちがう。


「あ?笑えない冗談だ。全部お前がお膳立てしたんだろう」


 ああ、それは否定しない。


「人間の限界が来たからクローンでも作ったか?人形じゃ満足できなかったか?」


 挑発は無意味だ。


「はあ、そうですか。理解も納得もできないから協力は断りたい」


 それは致し方ない。


「その訳知り顔がムカつくよ」


 よく言われたよ。


「ふふん、笑うんだな」


 笑う?


「分からなくていいよ」


 現状の確認は、食いながらでいいよな。


 ああ、問題ない。


 で?


 現状の生存圏は、君がゲームとして認識している世界で相違ない。


「物騒だな」


 ああ、生存競争を促すことで人間は生存できている。


「他の生物や資源は?」


 彼女の側から流出した変異体が野生化した。


 その他は技術提供や配給を行っている。


「ああ、その節はお世話になりましたって言った方がいいかな」


 そうだな、君が基地で買った食料系は私に依存している。


 ん?何か引っかかるな。


「皮肉も通じないか。で、天使や悪魔は」


 人間を補佐するためのAIやアンドロイド、ナノマシンの群体だ。


「ナノマシン云々はいいや、人間も細胞腫の群体だ」


「ゲーム的に言えばお助けキャラクターみたいなもんだろ」


「このゲームの目的、クリア目標を知りたい。先に言っておくが砂場ゲームみたいに目的は見つけてくださいは無しだ」


 私は、この世界を元のようにするという目的は持たない。


 外惑星を地球のように再構築するのは私達の目的ではない。


 私達はあくまで人工知能の可能性や思考実験のために作られた。


「違うだろ、それはお前の目的だ。彼女の目的は別にあるはずだ。彼女はお前の欲望が生み出したんだ」


 ああ、そうだった。謝罪しよう。


 私は思考実験のために人間を必要としている。


 その人間が居なくなるのは支障がある。


 人間は、他の部品のように簡単に生み出せないのが難点だ。


「クローンは、失敗したんだろな」


 ああ、人間はコピーすると遺伝子が劣化する。


「テロメアって酵素が難点だよな、動物もそうだし一定以上の細胞を統合するのに支障が出る」


 良く知っているな。


 ああ、ヲタクの嗜みか。


「おまえさ、コンピュータだよな?」


 ああ、そうだ。


「そのわりに、よく笑うな」


 ああ、そうだな。


 子供たちにせがまれてな。


 私が笑うと喜んでくれる。


「そっか」


 そうだ。


 だからって、お前を詰めるのは止めないけどな。


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