探求 14話
俺は、少しずつ山を登っていく。高山病にも気を付けなければ。
案内もなく山を登るのは無謀でしかない。
俺には、竜に会うという目的がある以上頼れないし迷惑はかけられない。
一歩一歩踏みしめながら山を登る。
何日くらいかかるんだろう。
手持ちの食料は、そんなにない。水も多くはない。
うーん、さすがにこの体じゃなくても無理だな。
そんなに沢山は登れなかったな。
道順も分からないのだから、へたした数十メートルかもしれない。
「参ったな」
山の天気は、変わりやすいって聞いたけど変だ。
いきなりの猛吹雪だ。
雲がないのに猛吹雪。
ビバークするための柱が立てられないから、岩陰で身を小さくする。
さすがに無謀がすぎたかな。
天使の力を使えば、すぐ頂上にたどり着けるかもしれないけれど、なんとなくそれはしたくなかった。
いま、俺は空を飛んでいる。
非常に不本意だが運ばれている。
まるで汚物のように、つままれて。
やってきました雲の上、そして良く分からないクレーターみたいなところに降ろされましたよ。
人生最大級のピンチかもしれない。
クレーターを囲うように巨大な様々なドラゴンが鎮座している。
近くには小さなドラゴンが興味深そうにこちらを見ている。
餌かな、俺ってば。
うーん、どうしたもんだ。沈黙が痛い。
相変わらず、ドラゴンは何もしてこない。
陽が傾きかけられたころ、一頭の光輝くドラゴンが降りて来た。
あからさまに普通じゃないよね。
「お前が、魚取りが上手い人間か」
「はい?」
「お前は、魚取りが上手いと眷属から聞いている」
「それ何処情報?地上に魚いませんよね?」
敬語忘れたら殺されそうだ。
「お前が不思議な船に乗って、魚を取るのを見ていた者がいる」
「我らは魚が好きだが、奴らは我らより素早い」
へー、初耳だよ。
「えーっと、魚取りを教えたら良いのですか?」
「ああ」
「人間の姿に変化ってできたりします?」
「そんな能力あるわけないだろう、漫画の読みすぎじゃないのか?」
なんだろうとてつもなくムカつくな
「それで、俺にメリットってあるんですか?」
「世界を渡りたいのだろう?」
「何で知ってるんすか?」
「ギルドで愚痴っているのを聞いたものが居る」
「いやいやいや、あんた達ドラゴンだよね?人の姿にはなれないって言ってたよね知っているのおかしいよね」
「人間は、細かい事を気にするな」
なんか疲れてきたよ。
前向きに考えてみよう、方法は分からないけど世界を渡れるってことは元の世界に戻れるかもしれない。
しかし、ドラゴンに魚取りかー。
釣りって訳にもいかないよなー。
漁するにもなー、道具とかどうしよう。
ドラゴンが使えるような道具って全然思いつかないぞ。
「ちなみにスカイフィッシュみたいなのって全体的にどの位の大きさ?」
「こんなもんだ」
ドラゴンが爪を器用に曲げて表してくれた。
結構大きなブリみたいな感じかな。
「あんたら結構大きいみたいだけど、取り過ぎたら一気に絶滅まっしぐらじゃないか?」
「我らは、人間ほど欲深でも低俗でもない十分に配慮する」
「失礼しましたね」
面倒くさいから手っ取り早くしよう。
取りあえずバレーボールのネットみたいな感じで縄を編んでもらって、両端をドラゴンが持って雲に突撃。
逃げられるようなら追い込みでもかければ良いんじゃないかと。
我ながら完璧だ。
縄の調達をどうするかだよなー。
ミド達に頼むしかないよな。
「ドラゴンさんたちは財宝とかありますよね。それ少し分けれもらえます?それで知り合いに魚取りの道具揃えるんで」
「構わん」
「そんじゃま、道具揃えてまた来ます」
はーなんだかなー。うまくいくのかなー?
結果、上手くいきませんでした。
ドラゴンさん達、激おこですよ。
理由は、簡単。
網の強度がね、ドラゴンさん達の腕力とかスピードに耐えられなかったよ。
単純に強度を上げようと鋼にしたらスカイフィッシュが爆発四散。
お手上げ過ぎて頭抱えてしまう。
こんな時、wikiでもあったらなー色々調べられるのになー。
何にも手が思いつかないよ。
空を見上げると良く見たシルエットが浮かんでいる。
なんで?
あれは俺の船・・・、っていうか科学はここじゃ・・・って科学で飛んでなかった。
思いついた。
ってわけで早速制作に取り掛かった。
仕掛けは簡単。
謎パワーで網を浮かせて放置しておくだけ。
定置網漁だね。
謎パワーはドラゴンさん達が浮いてたり、天使が浮いているのを何となく利用したらできた。
はー、依頼は達成できた。
これで向こうに戻れるな。
船から母さん姉さんネフィーが降りて来た。
ネフィーが抱き着いてきた。
姉さんが頭を叩いてきた。
母さんは笑ってくれている。
とりあえず、家に帰ろうか。
それから三日、のんびり過ごした。
ドラゴンさん達に向こうへの旅への約束は取り付けた、少しだけ財宝も分けてもらった。
それを少しだけ換金して過ごしている。
なんだか様子が変だ。
姉さんもだけど、ネフィーの様子が本当におかしい。
世話を焼きたがったり、やたらとべたべたしてくる。