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天使戦争  作者: 薬売り
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探求 13話

 調子に乗って薬草の群生地を二か所回ってギルドに戻った。


「「おおー」」


 俺達は酒場の一席に金貨を積んでいる。


 あんまり褒められた行為じゃないが、最初の成果くらい許して欲しいもんだ。


 周りに目を向けると、ほんわかした目線が返ってくる。


 ああ、誰もが通る道なんだな。


「取り分なんだが」


「「ううー」」


 二人とも覇気がないな。


 こういうのは親の総取りみたいな感じなんだろうな。


 三等分すると、二人の方へ寄せてやる。ついでに、買っておいた財布代わりの革袋を渡してやる。


 俺も様式美というか試したくて買ってある。


 三人してにやけながら革袋に金貨をしまう。


 そして、注文だ!


 ちなみに二人には俺と同じ宿を取らせてある。借金は、こっそり返してある。


 ミドが聞いてきたから、リーダーがピンハネしたんだって返しておいた。


 そして、薬草採取をして数日。


 辛かったけど何とかなった。


 まあ、それはいい。


 しかし、メンバーの様子がおかしい。


 ミドもガルも筋肉隆々で鎧がきついらしい。


 とりあえず、武具屋で新調するらしい。


 短剣を卒業して、長剣と大き目の皮鎧と楔帷子の鎧下だ。いっぱしの冒険者っぽい。


「次は、本格的に魔物を狙って行こうぜ」


 ガルの談である。


「私も、異論は、無い。かな」


 ミドがチラチラと俺を見る。


「正直、俺の攻撃力が足りない。オークの腹に俺の槍は刺さるのか?俺はお前たちみたいに早く動けない」


「ええー」


 ガルが不満そうだ。しかし、事実だ。


「今のお前たちなら、他のパーティーでも」


「「それはない」」


 食い気味に言われたぞ。


 今更、ピンハネされるのは気に食わないらしい、ガルらしい。


 お世話になったのに不義理はできないらしい、ミドらしい。


 ここは、現代科学の知識と読み込んだ冒険小説の知識の粋を凝らしましょうか。


 そして、やってきました鍛冶屋さん。


 面倒くさそうな親方は放って置いて、器用な若手を紹介してもらう。


 そして、長い筒に風の魔石と火の魔石を組み込んでもらう。


 さすがに銃は再現できないが、短槍を仕込んで風の力で火の魔石を圧縮して放出する形を提案してみる。


 補充が出来る仕組みを考えてもらう。


 連発は出来ないが、パイルバンカーっぽいのが出来た。


 短槍が俺の身長並みだから取り回しは良くない。


 出来上がった試作品を試し打ちしたら板金鎧が溶けた。


 親方がめちゃくちゃ怒ってたけど、若手は褒められてた。


 アイデア料を無心したら、獣人は育つの早いから新しく仕立ててくれるらしい。


 因みに短槍も溶けた。金が溶けるような沼兵器だ。


 調整してを徹夜でしてもらった。


「やってきました、オーク退治!」


「「いえーい」」


「でわ、受付嬢をおど、聞いてきた方法を試したいと思います」


「「いえー」」


 二人のテンションがおかしいのも無理もない。


 オーク狩りの基本、オークの肉でバーベキュー。友釣りかな?


 肉を食えて、金も儲かるつもりで二人はテンションが高い。


 結果としては、最初の一匹が上半身爆発四散して魔石が取れなくなったので、下半身を狙った。


 睾丸は薬にならないらしい。


 二人の攻撃力が増しているので、危なげが無い。


 ギルドにランクアップの事を聞いたら目安でしかないらしい。


 そのランクを達成して生きて戻ってくるのが確定したらランクアップらしい。


 そら、冒険者の死亡率高いはずだわ。実力を測る術がないのだから仕方ないか。


 ステータスなんて便利な物は無い。


 オーク狩りで俺は、今要らない子になっている。


 パイルバンカーもどきを筋力が上がった二人が装備して飛び回っている。


 そして、ズドンだ。


 ひさしぶりに、酒場でテーブルに金貨を積み上げる。


「二人も十分に稼げるようになった。これからどうする?」


 俺は、暗に二人の卒業をほのめかした。


「そうだな、メンバー増やして大物狙いたい」


「賛成です、私達みたいな困っている子を育てるのも良いですね」


「は?え?卒業」


 ガルが牙を剥いて俺を睨むし、ミドは涙溜めるし、はいはいもう少し一緒にいましょうね。


「メンバー増やすって、どんな奴増やすの?そのへん常識とかないぞ俺は」


「そうですね、獣人は成長が早いので獣人で固めるのが良いと思います仲間意識も高いですし」


「そうだな、人間族入れると実力や取り分で揉めると思う、獣人はその辺群れに慣れてるからな」


 獣人で固めるの決まっているのね。もう任せるよ。


「ねえ、翌日に子供集めてどうすんのさ」


 スラムから拾ってきた?親は?送り出してくれた?


 強い群れに従うのが習性?知らないよ。


 とりあえず、風呂に入れてこい!ついでに武具屋で揃えて来いよ。


 実は武具屋の横に風呂を作ったんだ。


 火の魔石をたくさん使うし、火力が足りなくなった魔石を大きな桶に捨ててもらった。


 案の定、水が温かくなったから風呂にした。


 屑となった火の魔石を水の魔石と風呂の使用権と掃除で手を打った。


 まあ、掃除するのは俺じゃないけど。


 後は飯か。


 ギルドの酒場に大量注文しておく。


 テーブルを寄せてもらっていたら、新しいメンバーが集まった。


 運ばれてくるとすぐに食べ物が腹に消えていく。


 今回のメンバーは5人。これ以上は、動きが制限されるとの判断だ。


 さっそく意見が割れた。


 オークからという兄弟と薬草からという俺とだ。


 こいつらがパーティーから抜けるかもしれない事、俺達抜きでも食うに困らないようにと説明した折れてくれた。


 俺達三人は、少し様子を見ながら5人を連れまわした。


 そして、オークも問題なくなった。


 金銭的な取り分は減った。


 なので、そろそろ頃合いだ。大物狩りだ。


「すげーな、ここからでも姿が見える」


「俺達、ここで死ぬのかな。俺が余計な事言ったから」


 ガルが珍しく弱気だ。


 数百メートル離れているのに、しっかりと姿が見える。


 5階建てビル相当、30メートルってところか。


 一つ目の巨人が、鬼を食っていた。サイクロプスと言う巨人種の一体らしい。


 順当にいけばオーガと呼ばれる鬼やら、亜竜とよばれるワイバーンを狩るらしい。


 ワイバーンは論外だ対空の術がない。


 オーガも実入りが少ない、というわけでそいつらを捕食する巨人種を狩ることにした。


 倒せれば、ジャイアントキリングの称号もついてくるらしい。美味しすぎる。


 さて、行きますか。


 一撃貰ったら即死だけど。


 こそこそと俺は草むらに隠れている。サイクロプスの周りをメンバーが必死で駆けている。


 うまく誘導してきてくれている。


 巨人種って、結局、弱点は人と同じだろという訳で、威力を全開にしたパイルバンカーを二つ持ってきた。


 うおおー、目の前に足が降ろされただけで地震と台風が一緒に来たような衝撃だ。


 軸足にしたな、よしよし。


 俺は草むらから足へ槍を解放した。


 さすがの威力、巨人の足首が吹き飛んだ。


 巨人が倒れ込む。


 俺の居た草むらからもう一つのパイルバンカーをニドが持って駆けた。良い判断だ俺は痺れて動けない。


 遠くで爆発音がする、恐らく頭を吹き飛ばしたんだろうな。


 なんてことな無かったな、怖かったけど。


 メンバー総出で魔石をくり抜いて担いで持って帰った。


 馬車か運搬要員が必要だな。


 やっと帰ってきたギルドは歓声に包まれた。


 皆、酒場でどんちゃん騒ぎをしている。


 俺は、一人で部屋でちびりちびりと酒をやっている。


 ミドに言って一人にさせてもらった。


 帰りたい。


 無性に帰りたいと思ってしまった。


 どこにと言われると困るのだけれど。


 母さんや姉さんやネフィーの居る場所へ。


 茉莉や隅田君や会長や友達がいるあの世界へ。


 あの世界へ帰る方法は分からない。


 そもそも、なぜここへ飛ばされたか分からないのだから。


 部屋の扉が開く。


「ミドか?どうしたんだ?」


「いえ、お酒のお代わりとおつまみを」


「いつの間にか、お前は敬語だよね。ガルは変わらないのに」


「習性です」


「お前ら、なんでもそう言えばいいと思っているだろ」


「泣いて、おられるのですですか」


「いや、帰りたいけど帰る方法が分からないだけさ」


「私達と一緒にずっと」


 俺は、首を振った。


 ニドは、持ってきたものを脇机に置くと俺を胸に抱きしめてくれた。


「お慕い申しております、主様。しかし、貴方の場所はここではないのでしょう。私は涙を飲んでお見送りします」


「どこへ」


「竜の所へ。竜は世界を渡り、世界を知っているそうです。私の知る限りドラゴンスレイヤーは存在していません」


「そうか、ちょっと行ってみるか」


「ええ、それがよろしいかと。ご一緒しますからこの命使い潰してください」


「いや、一人でいくよ?」


「竜は、人族の話を問答無用で聞きません。獣人である私が居れば多少は」


「多少か」


「ごめんなさい、多少です」


「じゃあ、置いていく。健やかにな、策はあるから大丈夫」


 俺は、窓から格好良く呼び出した。


「ごめん、場所分からない」


 入口から戻ったら、ガルに酒を浴びせられた。


 くすくすとニドが笑いながら拭いてくれた。


 竜に挑むのは無謀すぎると言われたけれど、行かないわけにはいかない。


 ごとごとと馬車の操縦を習いながら、高い山を目指してる。


 ほとんどが雲の上にあるどんだけ高いんだ。


 あー、竜は魚を食べるんだなと理解したよ。


 以前に見た雲の中を飛ぶ竜を思い出した。


 空では魚が釣れたなー。


 そんなことを考えながら麓の村へ来た。


 この世界でも山に魅せられる人はいるようで、登山客である程度賑わっていた。


 竜に触れることはタブーらしい。


 他の村が、竜を討伐しようとした傭兵の巻き添えに滅んだらしい。


 俺は、竜に触れようとしようとしている。


 この村どころが、周辺の村に協力は得られないだろうな。


 ミドとガルもここでお別れだ。


 これ以上は、面倒もかけかけられないし面倒もみれない。


 俺は、別れを野営で切り出した。


 他に良い場所もあったかもしれない、でも、ずるずるとするのは良くない。


 双子は泣いていたが、押し通した。


 最後は分かってくれたと思う。


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