探求 08話
「会長!どういうことですか!?ゆーくん消えちゃいましたよ!!」
「ああ、なんか悪の親玉みたいなのがメッセージを送ってきてな。立花を渡さないと世界が滅ぶっていわれて」
「信じたんですか?」
「ああ、信じた。途轍もなく圧力を感じたんだ。私は自分の保身のために立花を売った」
「そんな」
「友田は私を恨んでくれていい。はたから見てもお前の気持ちは同じ女として理解できる」
「だったら」
「すまない。私にも大切なものがあるんだ」
友田嬢が膝から崩れて、ぐすぐす泣いてしまっているでござる。
会長の顔を見ると、てへぺろって顔して舌を出しているでござる。
「会長、いたずらしている場合ではないでござる。現に祐介氏は消えてしまったでござる」
「いた、ずら?」
「いや、至って真剣だ」
そこで何で真剣な顔で涙を浮かべるでござる。
また、友田嬢が泣き出したでござるよ。
会長がこっちを見て何か指差しているでござるな。
筐体のモニターでござるか?
あ、祐介氏が映っているでござる。
向こうは向こうで何か真剣な面持ちでござるな。
「さて、立花を取り戻す作戦でも練ろうじゃないか」
「まさかの無策ですか!?」
あ、余りの事にござるをつけ忘れたでござる。
吾輩のアイデンティティが無くなるでござる。
「まさかの無策だ。しかし、向こうは向こうで何にかしら考えるだろうし。こっちはこっちで何か考えればいい。とりあえず保険で立花を送っておいた」
「結構、無茶苦茶でござるね」
「しかし、圧力は本当に感じたからな」
「左様でござるか」
「まあ、完全に無策って訳じゃない。友田、とりあえず立花のPCからメールを送れ」
「ゆー、くん」
「うわー、友田嬢が機械みたいでござる」
「メールの内容は聞かないでおこう」
全面的に会長のせいでござるがね。
会長は、楽しそうにモニターを見ているでござる。
あ、祐介氏の向こうでの母上様が手を振っているでござる。
「お!ビンゴだ。ちゃんと通じているぞ」
「え?ゆーくん」
「友田、見てみろ」
友田嬢がまた、膝から崩れ落ちたでござる。
「ゆーくん、無事だったー」
会長は、また、てへぺろって顔しないでもらいたいでござる。
会長、新マップとか新シナリオとか言って何処かへ行ってしまったでござる。
「友田嬢、会長は消えましたでござる」
「あんのクソ女狐、捻り折ってやろうか」
あー、会長は友田嬢の地雷を盛大に踏み抜いたでござるね。
こーなった友田嬢は、狂戦士化と我々は呼んでいるでござる。
祐介氏が来ないと再起動できないでござる。
「あ、向こうのお義母様にも挨拶しなくちゃ。メール、メール」
ああ、また、一つ外堀を埋めて行くのでござるね。
もう修羅場は見たくないでござる。
拙者、泣き出したいでござるよ。
あ、向こうの母上がちょっと困った顔してこっちを見てるでござる。
あの人、本当はこっち見えてるんじゃないかって角度で観てくるんでござるが怖いでござる。
ひっ!
急に携帯が震えたでござる。
見ると『はじめまして?』
え?変なメール拾ったでござる。
スパム報告しておくでござる。
ひっ!
『正太郎、そっちでは祐介って言うのね』
そろりとモニターを見ると、カレーを前に固まっている祐介氏、母上がスマホ見るようなジェスチャーしてるでござる。
絶対、この人、見えてるでござる!
祐介氏の周りは怖い女子ばかりでござる。
拙者、泣きたいでござる。