探究 03話
「箱庭の住人は、神に牙を剥く。そうして世界が崩壊していく」
「神様はさ、なんで人間を作ったのだろうなって考えたことがあるんだ」
「ほお?」
「たぶん、寂しかったんじゃないかって思うんだ。そして自分に似せた生き物を作っても自分のパートナーにならない。だからなんやかんやと理由をつけてリセットしようとする」
俺は紅茶に手を付ける。
これ何時までも冷めないな。逆に怖い。
唇を濡らしながら言葉は選ばない。直感で答える。
「そんなことされたら、こちとらやってられない。頭にも来る。そらケンカ売りたくなるさ。最初から間違ってるんだよ。自分に似せた下位の生物作ってもその生物は同じように寂しくなる」
明けの明星を指さす。
「それに天使、あんた達みたいに従順な奴隷を手に入れたら、次は上手くいくかもって思ってしまう、あ、俺に怒るなよ?天使に必要なのは諫言を言えるようになることだ」
明けの明星がぽかんと口を開けている。
「いいか、きちんと話し合え」
そして俺は両手をごしごしこすり合わせる。
「ちょっと本読むわ」
だいたいの辺りはついてるが裏付けが欲しいな。
なんで神は神の子みたいな、ちょっと特別な存在を社会に送り込むんだろうね。
種全体の底上げでもしたいのかな。
そこで祖国のことが頭に浮かんだ。
八百万の神がいて、信仰を失うと消えてしまうという話だ。
これは、見方を変えると観測されなくなった対象は存在できなくなるってことだ。
何故存在できなくなるんだろう?
それは神様だとしか?
この答えにイギリスの童話が答えをくれた。
妖精なんか居ないというと妖精は消えてしまう。
「神様ってちゃんと見てあげないとダメなのな。だから、明けの明星、お前は父である神を観測しづつけるんだな?」
明けの明星はつまらなそうだ。
「じゃあ、俺もかみさんをちゃんと見ておかないとな」
床下の怒れる怪物を見やる。
俺は、膝をついて両手を合わせる。
「尊くも我らが父に、かしこみかしこみ申し上げる。これからは俺らが見てるからよ!その姿はかなり怖いから、親しみやすい感じでお願い!」
こんなもんだろうと膝をあげると光速のパンチが飛んできた。
物理的に飛んできた。
避けれたのは偶然だ。
明けの明星が青筋立ててる。
「いや、俺ら的には最適なんだよ」
『そうであろうな』
明けの明星が固まる。
「我が父よ」
『この姿で父と呼ばれてもな』
明けの明星が俺の胸倉を掴む。
「貴様、なにをした!」
「何にもしてねーよ!祈っただけだよ」
「何を!」
「いあー、神様が可愛かったらってよいなーって」
やべー殺気が凄すぎて顔向けられない
『控えよ』
明けの明星が弾かれたように膝立ちになる。
『これがそなたたちの望むあるべき姿か』
俺も弾かれるように膝まづく。
やり過ぎた。やり過ぎた。
ピンク色の髪でツインテール、ロリ巨乳
ぶっちゃけ属性全部ぶち込んでしまった。
しかも。神々しい。
やばい。幸せだ。
「これが信仰か」
「ちがうわ!あふぉが!」
明けの明星に殴られた頬が痛い。
そして、俺は何故か膝枕されている。
『大丈夫?お兄ちゃん』
ぐふ、もう死んでも良い。
ヤバい明けの明星の目が死んでる。
『ルシフェルよ、まだ、我と共に歩んでくれるか』
『御意に』
なんだろう、良い感じだけど、ロリコンにしか見えない。
『お兄ちゃん、帰ろうか』
「帰る?」
冷汗が止まらない、リリス!明けの明星後ろに隠れてやがる。
『そう、お兄ちゃんの船。お姉ちゃんにも挨拶しなきゃ』
うぎゃー、ヤンデレ属性積んだつもりはないぞー。
しかし、そんなことで慌てる俺じゃない。
もうやけくそだ。
なんでもやってやる。
「分かった。でも、瞬間移動で帰るとあっちがびっくりするからゆっくりな」
『了解なのだ☆』
すいません、属性って盛りすぎるとしんどいですねって明けの明星に視線を送ったけど死んだ目をしてたよ。
「てなわけで、帰ってきましたよわが船に。このまま基地まで直行です」
説教でもなんでもどんとこい。
我慢すればいいんだ!
「あ、おかえり」
「姉さんただいま」
「正太郎さんおかえりなさい」
「ネフィーもただいま」
あれ?どういうことだ?
姉さんが船の進路の確認をしてくる。
「まずは、家族会議だからどっかの基地に集合で」
「「了解」」
あれ?なんか船員増えてない?
怖くて聞けない。
どっかの基地と言った筈だが、慣れ親しんだ我が家に帰ってきた。
この世界では、まだ使ってなかったから綺麗なもんだ。
綺麗というより生活感が無い。
「さて、何から話したらいいかな」
「正太郎は、まず、そのピンク頭の子とやたら神々しいイケメンの説明プリーズ」
どうしよう、姉が少しポンコツな気がする。
しかも、なんて説明して良いか分からない。
「えーっと、ピンクの娘は十字教の神様でイケメンは同じく十字教で明けの明星って言われている存在です」
『よろしく☆お姉ちゃん』
流石にその喋り方はウザいから止めようか。
明けの明星も困ってるし。
『よろしく頼む』
おおー、イケメンが頭を下げると絵になるぜ。
あれ?目から汗が。
ピリリと空気が引き締まった気がする。
「おい、家の天使たちを無意識に威嚇するのは止めてくれないか」
『我らは袂をわかった身だ、しかも天界の守りも怠っている状態を見れば不愉快だ』
「お前は、その天界を追放された身だろうに。天使達はこっちの身内みたいなものだからケンカするなら帰ってくれ」
『明けの明星が悪い。みんな仲良くしよ』
なんだろう、このろり神様がいうともっともだけど何かモヤモヤする。
そうか!属性が足りないんだ。
しかし、神様に属性足すってどうするんだ?祈ってみるか?
『ぬ?なんじゃ?』
きた!のじゃ属性もキタコレ!
やばい、明けの明星の目がまた死んでいる。
「ふーん、まあお父さんが神様やれるくらいだし、まあいいわ」
「いいんだ」
「どうせ、正太郎の事だから何を言っても無駄よ。ね、ネフィー?」
「うん、正太郎君が帰ってきてくれればそれでいい」
『ほーん』
なんだろう、ニヤニヤしているこのロリッコが神様だと思えなくなってきた。
「とりあえず、落ち着いて。はい、珈琲」
「ありがとう、母さん、父さんは?」
「まだ、月よ。なんとなく合わせる顔がないってね」
「俺は何にも気にしてないのに」
「父親だってことよ」
「余程、泥酔状態を見られたのが応えたのか」
「まあ、そんなところでしょう。情報は共有するから大丈夫よ」
「分かった」
『して、これからどうするのじゃ?そもそも何をしたいのじゃ?』
「んー、俺は正直、どうしたらいいか分からない。出来れば元の世界にも戻りたいがこの世界も捨てがたい」
俺の偽らざる本音だ。
『人間らしい強欲じゃの』
「でも、この世界でずっと殺伐した戦いをするのも、面白くない。なあ、神様、この世界は貴方を信仰してしていないがそこんとこどうなの?」
『そうじゃの、なんとも思わん』
「それは、この世界があんたが作った世界じゃないからか?」
『そうじゃの』
「おかしいと思っていたんだ、信仰もない世界に封じられる。うん、この世界は向こうで言う地獄なんじゃないかと、だから、天界もあるのかなと。向こうの世界ではあんたへの信仰は盛大だしな」
「どういうこと?」
「うーん、そうだねーなんと言ったら良いか。この世界にバイブルがないからなー。とりあえず、このロリッコはこれでも向こうの世界だと結構な神格なんだ。まあ、征服大好きすぎて軋轢も産まれたけど」
「だから、封じられたの?」
ネフィーが首を傾げている。可愛いな。
「違うと思うな、なんやかんやと向こうの世界では神様の恩恵が目に見えないから」
「直接手を出さない?」
「ああ、手を出せないっていうのが正解かもしれない。向こうの世界を守るために甘んじてってところかな?どう?」
『人の身で神の意志を知ろうと言うのか?』
のじゃは、どこいった?キャラブレブレだろ
「そんなことないよ。ただ、手詰まり感がね」
『申してみよ』
「そもそも創造主が分からない。なにより自分が分からない」