本当の世界とは? 25話
俺は、バラック小屋に戻って眠りについた。視線を感じながら。
次の日は何も起こらない。
しかし、俺の目には給水塔に小さな穴が開いているのを見逃さなかった。
数日後の夜、バラック小屋。
「今夜、俺はこの採掘場を制圧する」
「やっぱり、あなたは奴隷じゃないのね」
「ああ、傭兵だ。残念だが君らは足手まといだ、この小屋に居てくれ」
俺の手には既に自動小銃が握られている。
俺は、フレアガンを空に向けて撃った。
「来た、合図だ」
エリーは、スナイパーライフルを構えてニヤリと笑った。
「え?」
コトコトとスープをかき混ぜていた少女が驚く。
「これをしておきな。スープはマグに入れて近くへ」
「分かりました」
少女は耳栓を受け取ると、コーンスープを注いでエリーの傍に置いてテントに向かった。
「この世界は、食料アイテムが美味いね。って敵の動きが鈍すぎて笑っちゃうね」
エリーは、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべて引き金を引いた。
俺の前で兵士の頭が爆ぜる。
エリーからの狙撃だ。
俺は、兵士の宿舎に向かう。
其処には、熱にうなされ糞尿を垂れ流す兵士がいる。
俺は、其処に火炎瓶を投げ込み入口をドラム缶で塞いだ。
悲鳴を後に指揮官がいる場所へ向かった。
見張りの兵士は、ほとんどおらず指揮官の部屋にたどり着いた。
指揮官はハンドガンを構えている。
思ったより、平気そうだ。
「お、お前は誰だ?私達に何をした!?」
「それって、この世界で意味がある質問かな?」
ハンドガンから弾きだされる弾丸は、俺をかすめて後ろの壁で弾けた。
俺は、腕輪から短槍を出して心臓を一突きにする。銃を使わないのは、これからの布石だ。
そうして、エリーと合流して兵士を残らず血祭りにあげた。
「それでこれからどうするんだい?」
エリーが、マグカップから何かを飲みながら訪ねてくる。
「作戦行動は失敗、敵の勢力が大きすぎるって報告する」
「大赤字だね」
エリーがニヤニヤとしている。
「分かっているんだろう?この採掘場は、秘密裏にされているだから、バレるまでは此処は稼働させる」
「資材を売って食料買うってか?」
「ああ、そうだよ。余剰の半分を俺達の取り分、半分はこいつらの取り分だ」
「え?え?」
「面倒な事はマモンに任せる。それでも十分に利益が出るはずだ」
「私は、正太郎に従うよ」
「っていうわけだ、運営は任せた」
「はぁ、仕方ないわね。戦力はどうするの?」
「知らんよ、武器は渡すけど自分たちで何とかしてね」
「ね、姉さん」
直感もちと死体置き場から助けた少女は姉妹らしい。
「分かったわ、ありがとう」
俺達は、後ろ髪を引かれながら基地へ戻った。
窓口へ向かう道すがらエリーがポツリとこぼした。
会長へ、顛末を報告する。モニタリングしているだろうが念のためだ。
「こんな形の作戦失敗ってあるんだね。この世界はやっぱり異常だよ」
「だそうですよ、会長」
「うう、こんな作戦無いはずなのに。それにあの子たちが可哀そうで」
「会長、それはこの世界で生きている命に対する冒とくです」
「そうだな」
俺達は、窓口へ着くと受付嬢が笑みを返してくれる。
「正太郎様、エリー様、作戦の成功を確認しました。おめでとうございます」
「「は?」」
「え?無事に制圧が完了し、現地との通商条約が結ばれました。想定とは違いますが制圧が完了しているため作成目標達成となります」
あの直感持ちやりやがった。
「なあ、正太郎」
「なんだ」
「こんな疲れる事、ずっとしてたのかい?」
「ああ、そうだ」
エリーは、深いため息をついた。
「流石に極限状態でいたから疲労度が大きい。部屋で休んでもいいか?」
「そうだね、私は大したことしてないけど、正太郎は大変だったね。見張り位はしておくよ」
「一応、セキュリティーはあるから適当でいいよ」
「分かった、その間に装備やら揃えておくよ」
俺は、部屋のベッドにたどり着くとあっという間に意識を手放した。