本当の世界とは? 18話
はぁはぁと息を吐いている俺を二人が不思議そうな顔で見ている。
「なんだ?」
「ゆーくん、痩せてる」
「はあぁ?」
「祐介氏、激やせとはいかないまでも確かに痩せているでござる」
「意味が分からない」
「あのね、ゆーくん槍に振り回されていたのが段々息が合うような、そんな感じだった。そしたらどんどん痩せてきてた」
「とりあえず、汗かいたから風呂入るわ」
立ち上がろうとして、手をついてそのまま崩れ落ちた。
「あれ?」
「急激な筋肉疲労で、身動きが取れないでござるね。留学生が殺陣を舐めてかかって来た時に似ているでござる」
「どうしたらいいんだよ」
「とりあえず、ベッドまでは友田嬢と一緒に運ぶでござる、友田嬢、汗を拭いてあげて欲しいでござる」
「うん、分かった。風邪ひくもんね」
本当に体が動かない、何なんだよこれは。
茉莉に任せるままに身体を拭かれて横になっている。
「拙者は、会長にこの事を伝えてくるでござる。今夜はゆっくり寝ると良いでござるよ」
「ああ、そうする。正直起きていられないくらい眠い」
俺は、瞼を閉じた。
眠気に身を委ね、すぐに眠りについた。
その顔を茉莉は、少しだけ複雑な顔をして部屋を出て行った。
「友田、立花は寝たか?」
「はい」
会長の部屋のリビングは間接照明に照らされて淡い光を放っている。
「なにか飲むか?」
「会長は、何を飲んでいるんですか?」
「ブランデー」
「私達、未成年ですよ」
「日本ではな、ここは某国の大使館にもなっているから治外法権だ、そこの法律では16歳で成人だ」
「そんなの屁理屈です」
「ああ、そんな屁理屈でも理不尽でも通ってしまうのが政治というものだ。現状、飲まないとやってられない」
「そんなに大変な事になっているんですか?」
「ああ、ぶっちゃけると手に負えない状態だ」
「私は、なにか軽い物を」
「ああ、適当なカクテルでも持ってこさせよう」
しばらく、沈黙の時間が落ちる。
「立花の腕輪は、ゲームの中では解析不能なアイテムだ。文字列は我々は知っている」
「あのメールですか?」
「ああ、そして立花のNPCは今でも動いている。これは想定されていない事だ。もう一つ」
「まだ、あるんですが?」
会長は、ノートPCを開く。
「メールが更新されている、お互いに読み合わせをしよう」
「はい、わかりました」
彼女たちの夜はまだまだ長いようだ。
俺は、気持ちよく目を覚ました。
流石に良いベッドは疲れが取れる取れる。
その気持ちの良いままシャワーを浴びる。
あれだね、アメニティーも最高級だ。
シャワーから上がって、着替えて会長の部屋のリビングに向かった。
「あれ?みんな早いな、俺が最後なんて。あれ?なんか会長疲れていません?」
「そんなことはないぞ、ちゃんと休んでいる。早速で悪いが朝食を食べたらダイブしてくれるか?」
「ええ、問題ないです。でも、何をしたらいいですか?」
「それなんだが、立花の家族NPCが移動をしているから合流をして欲しい」
「分かりました。他には」
「基本的には、情報収集に努めてくれ。依頼も受けないでくれ」
「隅田には、立花の家族NPCをよく観察してくれ、どんな些細な情報も見逃さいでくれ」
「了解でござる」
俺達はゲームの世界でダイブした。