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天使戦争  作者: 薬売り
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本当の世界とは? 17話

 俺達は、会長の部屋に向かった。


「二人とも来たな、どうした立花、顔色が悪いぞ」


「いえ、大丈夫です」


「そうか、隅田も来たな。では、行くとしよう」


 俺達は、最上階に近いフロアにある寿司屋に着いた。


 景色は、最高。


 雰囲気も最高。


 そして、値段が書いてないお品書き。


 品の良さそうなスーツ姿のおじ様や煌びやかなお姉さん。


 対して俺はカーゴパンツにTシャツ。


 場違い感が半端ない。


 そんな場の雰囲気をものともせず、会長が目配せすると奥の個室に案内された。


 流石にカウンターに座る度胸は無いと安心したのも束の間。


 個室なのにカウンターがあって板前さんがスタンバっているってハードル上がってない!?


 俺達の正気度がガリガリ削れる音がする。


「何でも好きな物を頼んだら良いぞ、遠慮は無用だ」


「ゆ、祐介氏、こんな時はどうしたらいいでござるか!?」


 うろたえる隅田君なんて珍しいな。


「私、大トロ!」


 茉莉さんや、君は君で外国人みたいな頼み方するね。


「友田もいける口か、私も大トロだ」


 おいー、お嬢様!板前さん苦笑いだぞ。


「俺は、何か白身がいいな、その次が青物がいい、今日のお勧めは?」


「今日は、ヒラメと鯵の良いのが入ってます」


「じゃあ、それで、その後の組み合わせは、お任せします」


「分かりました」


「拙者は、鰆をもらうでござる。拙者、こういうのは良く分からないのでお任せするでござる。あ、ウニは食べたいでござる」


「畏まりました」


 板前さんが芸術の域のような手つきで、芸術品を握り上げていく。


「大トロ、おかわり!」


 茉莉さん、俺は少し恥ずかしくなってきたよ。


「トロ、全部持ってこい」


 会長、意味が分かりません。

「そうだ、立花、食べながらで良いから報告をしてくれ」


「行儀が悪いと思うんですが、良いんですか?」


「かまわん、どうせ。この部屋には私達しかいない」


「基本的に違和感がありませんでした、隅田君がムキムキマッチョな女性戦士だったのにはびっくりしましたけど」


「そ、それを今言う必要は無いでござるよ!それを言うのなら祐介氏はショタだったでござる」


「私もゲームしたい!」


 茉莉が叫んだ。


「ああ、また今度な」


「ぶー、ショタなゆーくんを見たい」


「それで会長、話の続きなんですが」


「なんだ?」


「人払いを」


「分かった」


 会長が目配せすると、板前さんを含め人の気配が無くなる。


 恐らく、影で警護しているSPも離れたっぽい。


「あの世界は、初期化されているはずですよね」


「ああ、お前らのスキルとアイテム以外はな」


「ええ、なので以前俺が拠点にしていた家は、もぬけの殻でした。でも、その家の俺の部屋で机の中にこれが入っていたんです」


 俺は、右手を巻くって腕輪を見せる。


 会長は、怪訝な顔をする。


「立花、からかっているのか?」


「いいえ、初期化されているはずの家にアイテムがあって、現実に持ってこれてしまった」


 俺は念じて腕輪を槍に変化させて、目の前の宙に浮かべる。


「立花、これは何だ?」


「俺が、ゲームの中で神と戦うために天使に作ってもらったものです」


「ちょ、ちょっと待つでござる!神とか天使とかゲームの中には存在していないですぞ」


「知らないよ、俺の世界には天使も悪魔も神も居た」


「そんな事より、立花。これはゲームの世界から持ってきたのか?」


「ええ、自分でも驚きましたがこれは持って来れました。他のアイテムは身に着けていてもこちら側には無かったです」


「そんなことが出来たら、世界がひっくり返ってしますぞ。これだけでも十分なくらいだ」


 俺は、槍を腕輪に戻した。


 会長が、難しい顔をしている。


「ちょっと、私は先に席を外させてもらおう、検証したいことが山ほどある、ああ、遠慮しないで十分に食べて行ってくれ」


 会長が席を立つのと入れ替わりで板前さんが戻ってきた。


 それから、俺達はこれでもかと最高級な寿司を堪能した。


 そして、部屋に戻ってお茶を飲んでいる。


 俺の目の前では、茉莉が槍をブンブン振り回している。


 なんだこれ?


 なんてことはない、いつもの我がままだ。


 綺麗、面白そう、触らせて。

 俺が断れる訳がない。


 隅田君も手に取って、なんか演舞してた。意外過ぎて笑えない。


 それを見た茉莉が今の状態だ。


 持ち前の運動神経で、何とかなっているが殺しが乗ってない。チャンバラだ。


「なんかゆーくんが馬鹿にしてる」


「いきなりなんだ?」


「ゆーくんもやって」


「はいはい」


 この体で槍なんか突けもしないし振れもしない、ゲームのアシストもないんだ。精々無様な姿をさらしますか。


 槍を手に取る。


 力を込める、殺意を乗せる。


 突く、払う、構える。


 身体から力が抜かれるように疲れる、デブの特権だな。


 それでも、槍は俺の手から離れない。


 力が入る。


 自分でも異常なくらい汗が出ているのが分かる。


 体感で10分くらい。


 俺は、床に横になっていた。


 立っていられない。


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