本当の世界とは? 14話
「折角だから、ルームサービス頼もうぜ!ファミレス分は取り返さないとな!」
「遠慮は無用でござる!」
茉莉と生徒会長が部屋に戻ると、最高級の黒毛和牛のフィレステーキを貪り、フルーツの盛り合わせにがっつく俺達が居た。
「さすが、ゆーくん遠慮がないね」
「友田も好きな物を頼むと良いぞ、私もステーキを貰おう」
こうして俺たちは英気を養うために、存分に味わい風呂に入って用意された部屋で寝た。ふかふかだった。
「って、英気養い過ぎじゃないか!?」
俺は、ベッドから飛び起きた。
機能案内された広い部屋に行くと、会長が優雅に朝食を摂っていた。
単純に、この人は何をしても絵になるなと我ながら単純に思ってしまった。
「立花、お早う。そろそろ皆を呼ぼうと思っていたのだ。君もシャワーでも浴びで朝食にするがいい。じきにVR機器も届くだろう」
そういえばVR機器も昨日は無かったな。
俺は、何か焦っていたのだろうか?いや、焦っていたのだろうな。
昨夜聞いた二人の名前は、明菜は正太郎の姉だった。ネフィーは恋人に近いのだろう。
正太郎として過ごした時間と記憶が心を焦がしていた。
俺は、シャワーを浴びてホテルらしい朝食を摂った。
パンもバターも一級品だったとだけ記しておこう。
「立花、隅田、機材の準備が出来た。今回はこちらでもモニターしている異常や危険と判断した場合は強制ログアウトさせるから安心して行ってこい」
「ゆーくん、私は何もできないけど頑張ってね。応援してる」
「友田、そんな事は無いぞ?私達は私達でメールの解析を手伝わないといけないからな」
「分かりました、頑張ります」
「じゃあ、隅田君行こうか」
「行くでござる」
俺たちは、また、あの荒野に硝煙の臭いのするへ旅立った。
VRギア特有の浮遊感の後、俺は初期配置の比較的後方の基地の前に立っていた。
乾いた空気が肌を撫でる。
懐かしい空気に浸っていると、初期装備のトランシーバーから声がした。
「立花も隅田も無事にダイブできたようだな、こちらでも確認できている。二人のアバターは、二人が遊んでいた時のものだ安心してくれスキルも装備もそのままのはずだ」
「了解。隅田君、ギルドの前で落ち合おう。そこで登録してとっとと端末を貰おう」
「了解でござる、直ぐに向かうでござる」
数分後、目の前に色黒のムキムキマッチョの女性がポーズを取っている。
確実に隅田君だろうけど、声かけたくない。
「お、そこのショタは祐介氏ですな、拙者でござるよ」
「お、おう。濃いアバター作ったんだな」
「それは、祐介氏も同じでござろう。可愛い男の子とか片腹痛いでござる」
お互いにアバターに何かを言うのは止めようと沈黙が暗黙の了解を示した。
一人用のゲームで好き勝手にキャラクター作ったら、オンラインになって恥ずかしい思いをしているような感覚だ。
「ところで、隅田君のこの世界での家族構成は?俺は、一応父母姉が居る四人家族だけど」
「拙者は、孤児院の出身っでござる。知っているでござるか?孤児院スタートだと卒業した傭兵からスキルが貰えるから有利なのを」
「まじかー、若いと成長しやすいって情報位しか知らなかった」
「情報は小まめにチェックでござるよ、登録して倉庫に装備を取りに行くでござるよ」
「そうだな、この世界で俺は正太郎だ」
「口調はそのままなのね。私の名はエリザベート、エリーとでも呼んでおくれ」
おっと、何かロールプレイが始まった。ネカマは痛々しいな。
俺は気になったこともある。
俺はゲーム内では死んでいる。傭兵のランクがどうなっているか、そして家族がどうなっているのか。
それによって、この世界の時間軸が分かる。
「なあ、エリー、一からランク上げって正直だるいんだけど」
「窓口で確認してみないと分からないね、現状携帯端末が無いんだ。仮に一からになっても私達のスキルがあれば一気に駆け上げられるよ」
「愚痴ってても仕方ないか」
正太郎こと俺とエリーこと隅田君で窓口へ向かった。
「傭兵登録したいんだけど」
「畏まりました、生体認証を行いますからこちらの端末に触れてください」
「了解」
受付の女性が怪訝な顔をする。
「以前、何処かで傭兵をされてましたか?」
「ああ、してたな」
「左様ですか、登録の確認が取れました。携帯端末の紛失ですか?」
「ああ、再発行を頼む」
受付嬢は、携帯端末を用意してくれた。
「危険なお仕事なので紛失も破損も仕方ないですが気を付けてくださいね。手数料は口座から天引きさせていただきますね」
俺たちは、それぞれの倉庫に向かった。
「うーん、見事に空だな」
武器も装備も基本的に家に置いていたからなー。
俺は、再度、窓口に向かい傭兵の標準装備と93Rハンドガンとポンプ式ショットガン、バイクを注文した。
外に出ると、八輪装甲車が停まっていた。
エリーが寄っかかって煙草を吹かしていた。
装甲車と言っているが装甲車の上には砲塔があり迫力がある。装輪戦車に改造したのかもしれない。
「遅かったね、それに随分とちゃちい装備だね」
「倉庫には何も置いてなかったからな、基本作戦に合わせて揃える感じだったし。家に行けば少しはマシな物があると思うけどな」