本当の世界とは? 13話
俺は、隅田君に電話して、直ぐに来てもらった。
彼は、忙しいのか暇なのか良く分からない人物だ。直ぐに来てくれるのは嬉しいけど。
「どうしたんでござるか?友田嬢を泣かしてはいけないでござるよ」
「俺にも原因が良く分からない。正直、助けて欲しい」
俺は、ノートPCを隅田君に渡した。
「なんでござる?このふざけた文字化けばかりのメールっぽい奴は、これでは送信も受信もできないでござろう」
「俺もそう思う。でも、茉莉にはこれが読めるらしい」
「本当でござるか!?」
茉莉は、隅田君が驚いているのを見て、少し落ち着いたようだ。
俺だけが茉莉を分かっていないってことが理解できたようだ。
しかし、それは、逆に誰にも分かってもらえない事を意味している。
目に見えて、茉莉が落ち込んでいくのが分かる。
なんと声をかけて良いものやら。
「ちょっと生徒会長に聞いてみるでござる」
隅田君が妙な事を言い出した。
「なんで?」
「かのお方は、色々摩訶不思議でござるからね、使えるものは何でも使うでござる」
隅田君は、画面の写真をメールに添付して生徒会長に送信したようだ。
「しばらくは、連絡待ちでござるね。気分転換にファミレスにでも行くでござるよ」
「それもいいな、茉莉もそれでいいか?」
茉莉は、頷いた。
俺たちは、着替えを待つ間、リビングで待機だ。
「あのメール、本当に意味あると思うか?」
「あれで意味があるなら、新しい技術でござるよ。現状のインターネットの法則を完全に無視している文字列に見えるでござる」
「そうだよなー」
それから、三人で近くのファミレスに向かった。
隅田君は、いつものようにドリンクバーで謎の飲み物を作っている。
俺は、軽めにグラタンにした。
茉莉は、ナポリタンを頼んだ。結構、食うんだな。
「お、生徒会長からでござる、合流してほしいそうでござる。こっちに車を回るらしいでござるよ」
「何だか思ったより、大事になりそうだな」
「そうでござるね、念のために例のノートPCは持って行った方が良いでござるね」
「賛成だ。ちょっともったいないけど食い物はお預けだ、会長には家に車回してくれるように」
「送っておいたでござる」
「さすが、仕事が早い」
そして、俺たちは黒服に黒塗りの車に乗せられている。
「正直、めちゃくちゃ怖いんだけど。会長ってなにしているの?」
「大企業のご令嬢くらいしか、情報が無いでござる。つまり、それだけ隠匿されているでござる」
「藪を突いて、鬼が出て来ちゃったのかなー」
俺たちは、何やらデカいホテルのデカい一室に連れて行かれた。
「友田、隅田、立花、久しいな。隅田から映像は見た。現物は、持ってきているな感心感心。早速見せてもらえるか?」
有無を言わせぬ迫力に俺は、ノートPCを起動しメールソフトを立ち上げた。
「ふむ、なるほど」
「分かるんですか?」
「なんにも分からん」
「分からないんかい!」
しまった、ついツッコんでしまった
「嘘だ。何となくだが読めるぞ、明菜って者からのメールか?」
「いえ、茉莉はネフィーって人からのメールだって」
ふーむと会長は、腕を組んで思考を巡らせているようだ。
「実はな、同様の事態が起きているんだ」
周囲を固めていた黒服が動こうとしたが、会長はそれを視線だけで制した。
「立花、君はあるゲームをやっているな?」
「は、はい。VRのやつですよね?」
「そうだ、あれはうちで開発したものなんだが一定の条件を揃えるとプログラムに無い事が起きるらしい」
「この文字化けメールですか?」
「そうだ、しかし、発生頻度は極めて稀だ。しかし、VRである以上不測の事態があってからでは遅い、それで解析を進めているんだが全く進展がない」
「ただの文字化けですもんね」
「そうだ、数例の事例でも規則性があるかと解析や解読を試みているが成果が出ていない、しかし、ここに至って想定外の事が起きた」
「文字化けが読める、しかも、読む人間によって内容が違う?」
「どうだろうな?その辺は友田と詰めるとする。悪いが立花と隅田にはVRで潜って欲しい。特例的に同じワールドに入ってもらう。もちろん、こちらからもモニターする」
「なんで?」
「なんだ、友田」
「なんで?ゆーくん達が危ないかもしれない事をしなくちゃいけないんですか!」
「彼らにしか出来ないかもしれないからだ」
「それは、会長のお家の話でしょう。私達には関係ない」
「そうかもしれないな。でも、そうでないかもしれない。友田、ちょっと私達だけで話そう。二人は適当にルームサービスでも取って寛いでくれ、あとPCは借りていくぞ」
女性同士の戦いに男性が入ってはいけません。