本当の世界とは? 8話
復学届を出して、2週間。
俺は猛勉強中だ。
授業を聞いてないから、山を張ることができない。
一応、茉莉からノートを借りて、要点を押さえて行っているつもりだが、どこまで通用するかは不明だ。
人生で一番勉強しているかもしれない。
ゲームもネットサーフィンもしないで、ひたすらに勉強している。
茉莉も気を使ってか、部屋に来ない。
そして、なんとかテストを乗り越えて日常に戻ってきた。
教室に戻ると、隅田君が早速声をかけてくれた。
「お勤めご苦労様でござる」
「服役してねーよ。でも、イベントは本当に助かった。ありがとう」
「なんのなんの、友ではござらぬか。それに我々も助かったでござるよ」
「どういうこと?」
「知らないでござるか?モーターショーの様子はあらゆるメディアで紹介されているでござるよ、友田嬢のチャンネル登録者数も凄いでござるよ?投稿動画一本しかないのに凄い再生数でござる」
「忙しくて、ユー〇ーブまで、気が回ってなかった。誰かのせいでこれからショートムービーの撮影とかあるし。もちろん手伝ってくれるよな?衣装やらメイクやらお願いしたい」
「もう修羅場も越えましたし、大丈夫でござるよ。稼がせて貰ったしお安い御用でござる」
「ほんと頼むな、撮った編集に追われる日々が続くのか」
「まぁ、もうすぐ夏休みだから祐介氏ならできるでござるよ」
「ところで、稼いだって何で稼いだ?」
「そら、友田嬢の薄い本でござる。〇ーチューブとモーターショーで一気に知名度が上がった所に鮮度抜群の薄い本でござる」
「内容興味あるけど、聞きたいような聞きたくないような。幾ら稼いだんだ?」
「内容は、白豚なオタクとの絡みでござるよー。元々の既刊も合わせれば二千万円くらいでござる」
予想以上に稼いでやがった。
高校生が稼ぐ数日で金額じゃないぞ。
絵コンテ描いくのは仕方ないとしても、動画の編集手伝って貰えないかな。
「ゆーくん、おはよう」
「おお、茉莉か。おはよう」
「何か電車とかで、すごい見られている気がするんだけど」
「友田嬢は、一躍有名人でござるからねー」
「そうなの!?」
「あれだけ取材受けておいて、その反応は、どうなの?」
「私は、そういうの良く分かんない」
「そういうところが友田嬢の良いところでござるな」
「ゆーくん、皆が撮影とかのスケジュール聞きたがってたよ」
「なに?みんなやる気満々なの?」
「うん、そうみたい」
「そんなら絵コンテ早く描かないとな、そういや隅田君よ」
「なんでござる?モーターショーで動画撮ってない?チャンネルにアップしたい」
「そういうと思って、撮ってあるでござるよ。祐介氏程ではないにしても多少の編集もしてあるでござる」
そういうと一枚のDVDを渡してきた。
「助かる、これの版権は渡さないからな?」
「良いでござるよ、しかし、部の活動報告やら反省会やらには使わせてもらうでござるよ?」
「その位ならいい。というわけで、絵コンテ速攻で描くから夏休み入ってちょっとしてからかな。その間にみんな夏休みの課題を進めておくように伝えてくれ」
「わかったー、ゆーくんがんばってね」
「ぼちぼち頑張るよ」
その夜、俺はクーラーの効いた部屋でダラダラと漫画を読んでいた。
実際、働き過ぎだと思うんだ。
オタクのすることじゃないよ。
あー、隅田君に貰った動画確認しとかないと。
それとホテルの日常風景もアップしちまうか。
漫画を片手に、動画を流しているが特に問題点はなさそうだ。
流石に着替えのシーンとか映ってたら使えないからな。
そのまま、二つの動画をアップして、ゲームをしてた。
「ゆーくん!」
ノックも無しに茉莉が部屋に入ってきた。
「なんだよ、一体。もう夜だぞ」
「こ、これ、どうした良いの!?」
んー、茉莉が見せてきたのは、ツ〇ッターの画面だ。
特に問題なさそうなんだが?
タイムラインも殆ど流れてない。
茉莉がフォローしているのは、俺と隅田君と四天王の6人くらいで自分では呟いていない。
フォロワー20000人!?
どこの芸能人だよって位のフォロワー数だ。
でも、DMはロックしてあるし別に問題無いんじゃないか?
「すごいフォロワー数だな、何か問題あるのか?」
「なんか、呟いた方が良いのかな?」
「別にどっちでも良いんじゃ?呟きたいことあるなら書けば良いし、無いなら放って置けば良いし」
「そっかー、どうしようかなー。あ、ゆーくん向こう向いててね」
「へいへい、あ、個人情報とかは絶対に書くなよ。フォローしている人の事もだ」
「はーい」
茉莉が、なんかゴソゴソしている間、後ろを向けないので再生数とチャンネル登録者数を見てみる。
チャンネル登録者数30万人。再生数200万再生。
とっとと、パートナープログラムの審査申し込みしてしまおう。
落ちることは、まず無いだろうから安心だ。
「ゆーくん、もうこっち向いていいよー」
「おー、それで何て呟いたんだ?」
「え?携帯触ってないよ?」
「うん、今理解した。なんでパジャマに着替えてんだ?」
「えへへー、泊まりに来ちゃった」
「はぁ?」
「たまには、一緒に寝ようよー、昔は一緒に寝てたしお風呂も一緒だったじゃん」
「それは、子供の頃の話だろ」
「今日は、一緒に寝るの」
あー、これは言い出したら聞かないな奴だ。
「お前、おばさんには言って来たのか?」
流石に、この年になって娘が無断外泊なんて認めるわけがない。
「ちゃんと言って来たよ。がんばりなさいって言われちった」
をいー、おばさん、教育間違ってるよ!
こんな白豚の所に美少女送り込むなよ!
こうなれば最終手段「ベッド狭くて寝れないだろ?」どうだ、子供の頃ならいざ知らず現状の物理的な問題は解決できまい。
「ゆーくん、体おっきいからベッドも大きいじゃん」
しまったー!快適な睡眠のために大きいベッド買ってもらったんだった。
「ゆーくん、そんなに私と寝るの嫌?」
やばい、これは泣くパターンだ。
「い、いやじゃないお。でも、まだ早い時間だから寝ないけど」
「そうやって、また、遅くまで起きて朝起きれなくなるんだよ。もう寝るよ」
茉莉がぐいぐい引っ張ってくるから何もできない。
仕方ない、寝るか。
「そういや、茉莉。明日の学校はどうするんだ?」
「明日は創立記念日だから休みだよ、ゆーくん、知らなかったの?」
そうだったのか知らなかった。
明日は、だらだら出来るな。
そのまま、うとうとしていたら、そのまま寝てしまった。