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天使戦争  作者: 薬売り
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歯車にならないように 7話

 正太郎は、卵から天使以外が顕現することが分かったので、この施設の卵はそのままにすることにした。


 ミカエルとテラフニエルが全てを孵すことを進言してきたが、押し切った。


 表向きは、何が顕現するか分からない事。


 本音は、これ以上天使の戦力を増やさない事。


「パズズが産まれてくれたから、バアルの所に行こうか多少は面識あるでしょ?」


「バアルか豊穣の神だった奴なら、我なら面識ある親しくはないが」


「十分だよ。今夜はここで野営して明日の昼頃に向かおう」


「ってことは、私の出番ね!」


「う、うん。姉さんほどほどにね」


 今回は、たこ焼きらしい。うん、海に居たもんね。


 天使達は、明菜の所に集まって興味津々といった感じだ。


 正太郎は、焼き上がった、たこ焼きを二船うけとると未だに正座しているパズズのところへやって来た。


「足崩しなよ。ネフィーには、俺から言っておくから大丈夫だ。たこ焼きも食べな」


「かたじけない、旦那様」


「様は、要らないよ。リリス、ビール取って来て」


「はーい」


 正太郎の腕からリリスが実体化して、飲み物を取りに行った。


 クーラーボックスごと持って来ようとしてネフィーとケンカしている。


 結局、二人で小さなクーラーボックスに移し替えて持ってきた


「はい、正太郎さんビール、仕方ないからパズズにも上げるビールでいいわよね」


 パズズは、ビールを受け取ったものの呆然としている。


「どうした?」


 パズズの様子に気が付いた正太郎が声をかけた。


「旦那、我の気のせいでなければ、この女はリリスか?」


「そうだよ?」


「そうか、旦那は凄い御方なのだな」


「そうよ?今頃分かったの?」


「まぁまぁ、たこ焼きも熱いうちに、ビールも冷たいうちにだ。パズズはいける口か?」


「我は、魔神ぞ」


 パズズは、自分が笑っていることに気が付いていなかった。


 こうして、人間と悪魔と魔神と天使が囲む奇妙な宴で夜は更けていく。


 太陽が中天に差し掛かる頃、出発の準備を整えていた。


「さて、それじゃあバアルの所に行こうか。母さん、オープンチャンネルでバアルの基地にこれから伺いますって送っておいて」


「分かったわ。こちらに交戦の意思が無い事を付け加えないとね」


 こうして正太郎たちは、バアルが居ると思われる基地に向けて飛び立った。


「こうして、のんびり空の旅ってのも良いものだな」


「はい、正太郎君、珈琲。熱いから気を付けてね」


「サンキュ」


 珈琲を受け取ると、アチチと少しだけ啜る。


 幾ら天使の謎パワーで守られているとはいえ、高高度は多少なりとも冷える。


「良い風ですね」


「ああ、周りにオスプレイとか色々居なければ、もっと良いだけどね」


 飛空艇の周りには、全周囲にヘリやら航空機が飛び交っている。


「一応の名目は、道案内のようですよ」


「物騒で仕方ないね、物々しいし。完全にロックオンされているだろうし」


「そうね、さっきから警報がなりっぱなしよ」


 真雪が甲板まで上がってきた。


「真雪さん、珈琲です」


「ありがとう」


「すっごい警戒されているけど、大丈夫なの?」


「まぁ攻撃はしてこないから大丈夫でしょ?それに、先方の管制官から航路の指示もあったし」


「トップは気にしてなくても、下々の者は怖いってことか。情報統制もされているだろうし不安なんだろうね」


「そうね、明菜がイライラしながら操縦しているから間違いが起こらないか不安だわ」


 正太郎は、奪取して、船尾の舵まで走り出した!


 明菜の周りでは、真っ赤にライトが点滅して警報が鳴り響いている。


 明菜のこめかみには、青筋が浮かんでいる。


 天使達が、おろおろしている。


「ポチ、砲門を開いて」


「しかし、正太郎様からも真雪様からも、攻撃はしてならないと」


 ビキッと音がしたように、明菜の腕に血管が浮かび上がる。


 ミシミシと舵輪が軋みを挙げている。


「ポチ!良く抑えた!ポチ!タマ!姉さんを船室へ!ピーちゃんはネフィーに飲み物を頼んで!リリス!姉さんにキッチンから甘い物持っていけ!全員死にたくなければ取り掛かれ!」


 正太郎の声に、幾つもの光が応えた。


 いつもなら、文句の一つも言うリリスも必死の形相で飛んで行った。


 正太郎は、舵を取るとアラームを一つずつ消音にしていく。


 管制官から進路と高度設定が送られてくる。


 それに対し、船内の暴君が暴れそうなので優先順位を上げるよう要請する。


 それはそれは冷静に冷徹に、一帯が焦土なりバアルとの協議に支障が出る勢いだと伝える。


 管制官は、一定の情報が伝わっていらしくエマージェンシーコール並みに優先順位が上げて貰えた。


 しかし、その管制官の慌て具合が尾ひれを付いて噂となり、空港近辺は臨戦態勢となってしまった。


「やっと着いた。なんだろう、この気疲れ」


「私も疲れましたわ」


「ああ、リリスお疲れ。どうだった?」


「もう大変よ、ポチタマピーの三人組で宥めすかして、私がパイを切って給仕してありえないわ」


「そらそうだわな、人間の所業じゃないね」


「でもね、ネフィーがね、すごいのよ。紅茶にブランデーを少しずつ混ぜて結果として酔い潰してたわ、さすが我がライバルね」


「そ、そう。二人が仲良しなのは良いけどなんだろうね、悪寒がするよ」


 こうして、戦争前の状態な臨戦態勢のままに飛空艇は基地に着陸した。


 正確には、底が船なので、謎パワーで少し浮いている。


 タラップを降りる一同。


 先頭を行くのは、パズズ。


 その後に続くのは、ただの人間、そして何体かの天使。


 滑走路に走りこんだ、戦車や装甲車が砲塔をこちらに向ける。


「バアル殿に謁見を申し込んだ、正太郎様である控えよ」


 パズズが威圧を込めた息を吐いた。


 悪魔なのであろう、兵士達が苦しそうにこちらを睨んでいる。


「パズズ、こちらは尋ねる立場だ控えよ」


「御意」


 圧力がなくなって、兵士たちは、荒く呼吸をしている。


「すいません、他意はないです。案内を願います?」


 正太郎達は、手に持ってこれでもかと持っていた銃器を地面に置いていく。


「これも、置いていきます」


 正太郎は、腰につけたコンバットナイフやブーツに仕込んだナイフも置いていく


 それに倣うように全員が武器を置いていく。


 余りの多さに若干、周りの兵士が引いている気がするが、無視することにした。


 正太郎達は、兵士に銃口を向けながら窓口の中へ進んでいく。


 そして、不思議な事に、地下でもなく。高層階でもなく。


 そのまま、奥へ通された。


 底は、周りをガラスに囲まれて、周りの景色と光をふんだんに取り込んでいた。


 光に満ち溢れた空間が広がっている。


 そこへ、足を踏みいえる。


 {靴を脱げ}


 この感覚には、覚えがある。


 大きな力を持っている存在がいる事だ。


 正太郎は、大人しくブーツを抜いて、草で編まれた床に足を降ろす。


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