未来は、まだ、分からない 4話
「正太郎か、今日はどんな難題を吹っ掛けるつもりだ?」
「着いてそうそう、ご挨拶だな。飯のタネになる依頼を持ってきただけなのに」
「そうかいそうかい、そんでどんな無茶だ?」
「えー、急いではいるけどそんなに急かされるのは気分悪いな、お茶もでないし」
「お前は確かに客だが、お前に出す茶はない」
「スラムナンバー1の情報屋、いや、なんでも屋のくせにサービス悪いね」
「依頼をださないなら客じゃないな、とっとと帰れ」
「分かったってば。こんな感じで頼みたいんだ。どう?」
「そうだな、難しいができなくはない。3日でやろう」
「そうこなくっちゃ、そんじゃ代金はいつも通り現金で?」
「いや、最近、食料事情が悪い。基地から調達して卸してくれるか?」
「分かった。トラックは?」
「裏に置いてあるやつを好きに使え、全部キーは刺さっとる」
「了解、じゃあ、3日後に現物と一緒に持ってくるよ」
「その時に依頼の品も引き渡そう。とっとと帰れ」
正太郎は、そのままカウンターの横から奥に進み駐車場にでた。
沢山の軍用車両が並んでおり、戦車なんかも置いてある。
装甲車に惹かれたが、積載量を鑑みて大人しく幌付きのトラックに乗って基地に向かった。
基地の駐車場にトラックを留めると正太郎は、受付へ向かった。
基地の食料や装備などは厳重に管理されており簡単に移転させることは基本的にはできないからだ。
「こんにちわ、レイコさん」
「どうされたんですか?まさか依頼のキャンセルですか?」
「いやいや、作戦行動に使うから物資を融通してほしくて」
「どんなものですか?装備品には限りがありますから急なご用意は伺えませんが」
「うん、大丈夫。今回は、食料品だから」
「そうですか、それでどのくらいの量ですか?」
「糧食と食材を2000萬円分」
「それは、結構な量になりますが、一体何に使うんですか?」
「機密事項。作戦行動って言ったよね」
「そうでした、分かりました。食料であれば現在余剰がありますのでリストを作成します。1時間ほどお待ちいただけますか?」
「了解。そこらで待ってるから終わったら声かけて」
「承りました。受付フロア内であれば声をかけさせていただきます。放送は必要ですか?」
「ううん。受付フロアにいるよ」
放送とは、基地の建物の中、基地全体など幾つかレベルがあり様々な情報や呼び出しを行っている。
基本的に放送は、作戦行動のためにあり緊急性が低い場合は使わないことが通例であるため正太郎は、遠慮した。
正太郎は、受付フロアに備え付けられた椅子に腰を下ろして考え事をしていた。
今回の作戦には直接影響はないが、スラムに食料が足らず基地に食料が余っているということは、意図的に流通が遮断されている可能性がある。
スラムで必要なものを揃えることの多い正太郎にとって、スラムが干上がってしまうのは死活問題でもあった。
しかし、現状では意図も読み切れないし主導している者にも心当たりがないため、どうにも手の出しようがない。
スラムを干上がらせて、自然的な解体を意図しているのなら悪くない手だがそうなると上層部が主導していることになる。
そうなると自分には手に余る。
拠点を移すことも視野に入れる必要があるかもしれない。
単純にスラムを牽制しているだけなら、何もしなくていい。
そんな取り止めのない思考をしていると、レイコから声がかかった。
「正太郎様、準備ができました」
正太郎の思考は、その声でストップした。
レイコからリストを受け取ると十分な量があることを確認し、軽く挨拶を交わして物資の引き渡し場所を確認する。
準備は、すぐに可能だということだが食料を抱えたままでいるのは面倒事を抱えることと変わらないため即時の引き渡しを依頼する。
情報屋から持ってきたトラックへの積み込み依頼を出すことを伝えるとすぐに受理された。もちろん手数料は取られた。
荷物が満載になったトラックを運転しスラムの情報屋へ向かった。
「言われてた食料を持ってきたよ、トラックにそのまま積んであるから後は任せたよ」
「ずいぶん早いな」
「急ぎなんでしょ?こっちの依頼も急ぎだからよろしくね。あ、あと基地の方は食料に余剰があるみたいだよ?」
「そうか。情報が少ないな慈善配給が減っているのか横流しが減ってきているのか目的が見えてこないな」
「その辺は、そっちで考えてよ情報料はタダにしておくね」
「お前に借りを作るのは、嬉しくないが有り難く受け取っておく」