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天使戦争  作者: 薬売り
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運命は、少しずつ動き始める 10話

 数日後、スラムの入口に武装した集団がたむろしている。


 そこへ、トラックが数台やってくる。


 武装した集団がトラックから荷物を次々降ろしていく。


 荷物を降ろし終わるとトラックは、去って行った。


 武装した集団はナナ達だ。


 ナナ達は、素早く一つの木箱を開封した。


「あれ?弾薬だけだったはずなのに」


 木箱には、最新式のアサルトライフルが20丁入っていた。


 ナナ達は、もう一つ木箱を開封すると弾薬が入っていた。


 素早く、武装しなおし弾薬を込めていく。


 段々とスラムから住人が集まってくる。


「まずいな、人が集まってきてる。このままだと暴動になるかもしれない」


「ええ、管理官の奴らまで来たから確実に戦闘になってしまうわ」


 ナナとエイジが銃口をスラムの住人に向けて警戒していると、トレーラーが走ってきた。


「お待たせー、ちゃんと荷物届いてるね」


「正太郎君、私達宛の荷物に新品のアサルトライフルが入っていたのだけど、君が頼んでくれたの?」


「いや?知らないよ。たぶん、おまけじゃないかな、貰ってしまって問題ないと思うよ」


「んじゃ、俺の荷物積むの手伝ってくれ、むしろ積んでくれ。俺が警戒に当たるから」


「了解した、みんなトレーラーに積むぞ」


 段々と正太郎たちに住人が近づいてくる。


「やっぱりこうなるかー、何人か殺していい?」


「出来ればやめて欲しい」


 荷物を積みながらナナが答えたが声に力がない。


 正太郎には、スラムの住人に対して義理立てするものがない。


 襲おうが、襲うまいが殺されても何も言えない。


「おっけー、取りあえずこの集まりを何とかしようか」


 正太郎が、そう言うと、一台のトラックが走ってきた。


「正太郎、来たよー」


「姉さんありがとう、早速で悪いけどいいかな?」


「任せて」


 明菜は、手際よくコンロやテーブルと準備している。


 スラムの住人は、何が起こっているのか分からず固まっている。


 物資が空中を飛んでいることに気が付く者はいなかった。


 明菜とネフィーがテーブルを広げて、コンロを設置して寸胴を火にかける。


「炊き出ししまーす。並んで下さい」


 誰も動かない。

 寸胴からの良い匂いに負けて、一人の少年が近づいてきた。

 紙の器にシチューを注いてスプーンを少年に渡す。

 少年は、少しの間呆然としながら、シチューに口を付けた。

 一瞬、目を見開くと一気に飲み干した。

 満足そうに幸せそうにしている姿に、スラムの住人が殺到した。


 その目の前に弾丸が撃ち込まれる。


「並べ」


 何台もトラックがやって来て、食材を補給していく。


 正太郎は、ナナにトレーラーの移動を指示した。


 弾頭を積んだトレーラーは、無事に移動を開始した。


 しばらくすると、武装した兵士たちがゆっくりと近づいてきた。


 スラムの住人は、蜘蛛の子を散らすように消えた。


「エイジ、誰の許可を得て勝手なことしているんだ?」


 兵士の一人が嫌らしい笑みを浮かべながら近づいてくる。


「ふーん、スラムで何かするのに誰かの許可が居るんだー」


 正太郎は、ドックタグをひらひらと動かしながら近づいていく。


「なんだ、お前は!」


「傭兵だよ。作戦行動中だ。妨害行為か?」


「お前みたいなガキが何を言っている、我々は管理官だ、逮捕する」


「ああ、いいぜ。後悔するのはお前だからな」


 正太郎は、管理官の留置場に入れられた。


 だが、数時間もしないうちに基地から正規兵が送り込まれた。


 管理官は、問答無用で射殺された。


「ご無事ですか?」


 特殊部隊らしい兵士が声をかけてきた。


「何も問題ない。作戦行動も期日内に完遂する、勝手にスラムに手を出さないように上に言っておけ」


 正太郎は、スラムの入口に戻った。


 心配する姉も無視して、ナナとエイジに伝える。


「多少、イレギュラーがあったが任務達成だ。またな」


 正太郎が、トレーラーに乗ると、トラックも去って行った。


「俺達は、失敗したのか」


「少なくとも正太郎君の期待は裏切ったわね」


「そうか」


 エイジは、自分達宛の荷物をアジトに運び込んだ。


 1か月は十分に戦える。逆にいえばそれ以上は戦えない。


「参ったな、正太郎から連絡は?」


「まだ何も」


 ナナは、うつむいてしまった。


「しばらくは様子見だ。情報収集をしておけ、あいつは情報を欲しがるはずだ。些細な事でもいい集められるだけ集めろ」


 エイジは、自分に発破をかけるようにメンバーに指示をだした。


 正太郎は、屋敷に無事に帰ってきた。


「ただいまー、ネフィーも姉さんも大丈夫だった?」


「私達は、すぐに離脱したから平気よ。それこそ正太郎こそ大丈夫だった?」


「うん、直ぐに基地から救出部隊が来てくれたよ」


「そう、それは良かったわ。みんなもご飯にしましょう」


 正太郎は、全員に基地から4000キロの位置にミサイルを造ることを伝えた。


 昼食を食べ終えると、真雪から衛星写真を貰いミサイルの設置場所を決める。


 基地までは4000キロとちょっと。


 正太郎は、野営に必要な物をトレーラーに積み込んだ。


 キャンピングカーを使おうかとしたが財宝に埋もれてしまって、飛空艇から出せなくなってしまった。


 正太郎がトレーラーに乗って目的地へ向かって数時間後、スラムは混乱に包まれた。


 至る所にそびえ立っていた、ゴミ山が綺麗さっぱり無くなってしまった。


 幾つかのバラックは鋼鉄の扉や壁まで無くなってしまった。


 目標基地から約4000キロの開けた荒野。


 屑鉄から、2000発のミサイルが急ピッチで組み上げられている。


「正太郎様、精密機械のため、おおよそ4日程かかる見込みです」


「了解、特に急いでないから、きちんと作動する物を作ってくれ」


 それから数日後、5機のレシプロ機が飛び立った。


 2000キロまでは、レシプロ機の低速を生かして地面すれすれの低空飛行を行っていく。


 そこから急上昇して高度5000キロを維持して飛行する、速度は精々時速400キロ程度。


 即座に、敵基地から地対空ミサイルが発射されるが、レシプロ機にあり得ないマニューバで回避していく。


 弾幕の様にミサイルが飛来するが当たらない。


 本来ならば、この時代の誘導ミサイルを回避することは航空機では不可能だが、天使が登場し斥力で軌道をずらしているため当たらない。


 敵から悪夢のような状態だ。


 相手は、ヘリ並みスピードしか出てない、にも係わらずミサイルが当たらない。


 航空支援は依頼済みである。


 音速を超える航空機が、向かっているがそれでも時間がかかる。


 ジリジリとした空気が基地内に満ちる頃、観測官が妙な物を見つける。


 敵のノロノロした5つの点を追い越す勢いで、途轍もない高速で飛来する多数の飛翔体がレーダーに生まれる。


 それは、もはやレーダーを覆う程の光点となっている。


 司令官へ報告しなければと、立ち上がり歩き出したが彼が司令官へ報告することは叶わなかった。


 音速の何倍もの速さで飛来したミサイルは、徹底的に基地を破壊した。


 航空支援へ向かってきた戦闘機も基地からの音信途絶により、帰還命令を受けて転進した。


 レシプロ機は、幾つものクレーターが出来上がり、炎に包まれた基地を撮影し帰還していった。



 正太郎は、撮影された映像から結果に満足していた。


「予想以上に上手くいったというより、相手の対応が温かったね。でも、こちらもこの手はもう使えないから痛み分けかな?」

「そうなの?大成功だとおもうけど」


 明菜が不思議そうに尋ねて来た。


「うん、こっちは材料費も加工費もほぼタダだから大成功だよ。でも、次となると材料の調達から始めないといけないから、コストもかかるし足が付くからね。もう使えない作戦だよ」


「そっかー。いろいろ難しいんだね」


「作戦は、無事に完了だかれ撤収しよう」


 正太郎たちは、屋敷に戻り、正太郎だけが窓口に来ていた。


「エリーさん、作戦の完了報告に来たよ」


「もうですか!?早速、斥候を送りますので1週間程お待ちいただけますでしょうか?」


「いいけど、その間にある程度修復されたのを理由に報酬の減額が無いんだったらいいよ。衛星で確認できないの?」


「衛星での確認も同時に行いますので、その点はご心配いただなくても大丈夫です。我が基地では作戦規模が大きいため本来の標的を排除出来ていないケースもあるため必ず斥候での確認を行っています。ご了承ください」


「分かった、一週間後にまた、来たらいいのかな?」


「いえ、一週間は目安ですので確認が取れ次第、報酬は振り込まれますので窓口まで来ていただかなくとも大丈夫です」

「なら、しばらく、休養にあてるよ」


「お疲れさまでした、またのご活躍を期待しています」


「それじゃ、また」


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