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天使戦争  作者: 薬売り
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運命は、少しずつ動き始める 4話

 この世界では、海が極端に狭くなったため、海軍の価値は、ほぼゼロに近い。


 対地ミサイルで、十分に迎撃出来てしまうからだ。


 小さくなった海で、航行している船は、人間が自らの口を注ぐための漁船しか存在していない。


 正太郎が、海路を選んだのは、そんな背景があったからなのだが、船が飛ぶとは思っていなかった。


 一日もかからず、基地へ到着した正太郎は、その足で情報屋へ向かった。


 ギルドに先に顔を出そうかとも考えたが、相手にそんな情報を与える必要はないと情報屋へ向かった。


 情報屋は、言われた通り八百屋をしていた。


 鷲鼻にモノクルを差してシルクハットを被って店先に座っている。


 八百屋という割には、声を上げるわけでもなく、小奇麗な服を着ている。


「いらっしゃい」


「その西瓜をくれ」


「これはお目が高い、この暑さにぴったりですよ」


「支払いは、これで」


 正太郎は、金貨を差し出した。


「これは、これは、珍しい物で」


「釣りは、いい。他にも買いたいものがあるんだ」


 正太郎は、黄金で出来た杯を鞄から取り出した。


「これは、これは、素晴らしい逸品だ」


「情報を俺に売れ、マモン。じゃなきゃ、これは鋳つぶして海に捨ててしまうぞ」


「なんですと!これほどの芸術品を潰すなんて、冒涜です」


「これだけじゃないぞ、手持ちは」


「奥へどうぞ」


 マモンの後について、奥へ入っていく。


 それほど、短い廊下を通ると金銀の財宝が飾られた部屋に通された。


 マモンは、なぜか備え付けの便器に座った。


 正太郎は、玉座用にしつらえられたと思わしき、金の椅子に鷹揚に腰を掛けた。


「して、お客様のご要望は」


「人間相手に、随分慇懃だな。ほら、この杯はくれてやる」


「おお、お大尽さまですな」


「目的は、リリスとの謁見だ。しかし、その前に実績を積んでおきたいからギルドに登録する。必要な物を都度用立ててもらう。あと、俺の情報をリリス関係へ情報を流さないが条件だ」


「十分でございます、お支払いは」


「お前の好きな金銀財宝で支払ってやる。欲目を出すとお前は魂まで消し炭だ」


「人間風情が、粋がりますね」


「ああ、人間風情だから粋がるんだ」


「取りあえず、車を用意して欲しい。小さなバイクも後部に備え付けてくれ」


「わかりました」


 マモンは、パチンと指を鳴らした。


「店の裏に出しておきましたので、ご自由にどうぞ」


 正太郎は、金貨を一枚弾いて、マモンに渡した。


「ガス欠は困るからな」


 マモンは、慌ててもう一度指を鳴らした。


 正太郎は、車をノロノロと走らせて、基地の様子を探った。


 ここもスラムは存在している。


 しかし、天使が正太郎の指揮下に入ってしまったため、人口密度は低い。


 逆に、濁った魂の溜まり場になっている。


 正太郎が見た感じだと、スラムの人間は大半が人間に代わってしまっているようだった。


 人間は、天使のように自制が効かない。


 スラムの治安は最悪まで落ちているだろう。


 正太郎は、窓口へ向かった。


 窓口の形は、どこも変わらないなと正太郎は思いながら近くの受付嬢に声をかけた


「傭兵登録したいんだけど」


「失礼ですが、従軍経験はおありですか?随分お若いように見えますが」


「そうだね、実は他の基地で傭兵やってたんだけど人数増えたから引っ越してきたんだ」


 正太郎は、ドックタグを差し出した。


「そうだったんですね、それでは確認させていただきます」


 ドックタグを端末に差し込むと、ポンポンと受付嬢は端末を操作していく。


「これは・・・」


 受付嬢は、笑顔を張り付けたポーカーフェイスが必須なのに、目の前の受付嬢は完全に驚愕してしまっている。


「どうかな?犯罪歴や違反もないはずなんだけど」


「これは大変失礼しました。素晴らしい戦果です。この基地でのご活躍を期待しています。あ、申し遅れました私は受付のエリザベスと申します。気軽にエリーとお呼びください」


 エリザベスは、ストレートの黒髪でスリムなタイプで冷たい印象を受けるが、笑うと可愛いんだなと正太郎は思った。


「ありがとう、エリーさん。それで家を借りたいんだ。基地内であれば低所得層でいいから」


「正太郎様の戦果であれば、もっと中心地でもいいのでは」


「いや、出かけることも多いから」


「作用ですか、大きさはどの位にをご希望でしょうか」


「全部で9人居るから、個室でなくてもいいから水回りがしっかりしている所がいいかな、あと駐車場完備で」


「分かりました。それでしたら5LDKの屋敷に空きがありますのでそちらでどうでしょうか?内覧なさいますか?」


「いや、いいよ。恐らく必要だったら自分たちで手を入れるよ」


「了解しました、では、さっそく登録しておきます。家具一式は揃っているので本日から入居可能です」


「それは、すごく助かるな。じゃあ、諸々の経費は口座から落としておいてね」


「分かりました。屋敷の場所は端末でご確認下さい。それでは、ドックタグをお返しします。作戦行動をなさるときは是非このエリザベスをご指名ください」


「了解、じゃ、お世話様」


 正太郎は、早速、通信機で家を借りた旨を伝え、現地で集合することを伝えた。


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