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天使戦争  作者: 薬売り
21/99

未来は、まだ、分からない 21話

 予想が正しければ、玉座に座っているのはマステマだ。


 この世界と地獄を繋いでいる四つの杭の一つのはずだ。


 正太郎は、テラフニエルとバルキアケルに臨戦態勢を促す。


 もう姿を隠しても仕方がない。


 テラフニエルとバルキアケルは、短槍を携えて正太郎の左右に展開している。


 しかし、正太郎の装備はM93の拳銃しかない。


「俺たち、人間ほぼ丸腰だよな、こうなる事は半分予想してたのに不甲斐ないな」


 この場所に来てから、俺たちの足音以外していない。


 そして、マステマに近づいているのに何かが動く気配もしない。


「なんか、様子がおかしくないか?」


「そうね、タマ、何か感じる?」


「奥の大きな気配意外全く何も感じないです」


 そのまま玉座の前まで来た。


「これがマステマ」


 玉座には、大きな杭が打たれている。


 そして、その玉座には一人の少年が座っている。


 お腹には大きな杭が打たれ、左右の羽も腕にも杭が打たれている。


 その杭は何で出来ているか分からないが青白い光を放っている。


 {人間が何の用だ}


 大きな声ではないが、ホール全部に響くような声だった。


「俺は、地獄をこの世界から切り離すために杭を抜きに来た」


 {ただの人間に杭が抜けるものか}


「俺は、貴方、マステマが杭になっていると聞いている」


 {それは違う、私たちは、その存在を縫い止められているに過ぎない、この忌々しい杭によって}


「惨めな姿だな」


 {ミカエルか}


「この場で、消滅させられる気分はどうだ?この戦争の引き金を引いたつもりで嵌められたのだろう?貴様は人間に対して敵意を持ち過ぎた。その時点で堕天していたのに気が付かないとはとんだ道化だ」


 {なんとでも言え、反論の余地もない}


 正太郎は、違和感を覚えていた。


 悪魔の王様、ここでは司令官なのだろうが、もっと自由で我儘で贅沢な暮らしをしていると思っていた。


 しかし、目の前の少年は、まるで虜囚だ。


「マステマさんは、どうして此処に居るんですか?」


 正太郎は、不思議に思ったことを素直に聞いてみた、目の前の少年は身動きが取れる有様ではない。


 {ん?たまには例の人間の質問に答えるのも一興だ}


「それで答えてくれるのか?」


 {ああ、私が知る限り全てを}


「それは、まかりならん」


 ミカエルがマステマの首に剣を振りかぶった。


「ミカエル、止めなさい」


 母さんが声を上げた、ガブリエルが怒りを堪えているのが分かる。


「マステマ質問だ、君はこの世界と地獄を繋ぐ杭だと聞いている間違いないか?」


 {間違いない}


「その杭はどうすればいい?」


 {悪魔を縫い付けている、この杭か、悪魔を地獄へ送り返すか消滅させればいい}


「そういうことです」


 ミカエルが振り下ろした剣をテラフニエルの短槍が受け止める、マステマは不思議そうに見上げている。


「なにをする」


「貴方こそミカエル、正太郎様はこの悪魔を殺せと消滅させろと命令されてません、それは貴方の主、真雪様もです」


 ミカエルは苦虫を嚙み潰したような顔で剣を鞘に納めた。


 {おいおい、どういうことだ?天使が俺を守るなんて}


「単純な事だろ?命令系統が違うんだよ」


 マステマは不思議そうな顔をした。


「天使は火から神から生み出して父と呼ぶ。俺たちの世界の古典だ」


 {ああ、あそうだ、だから}


「あ、お前の回想録とか聞かないから姉さんにでも聞いてもらえ。でだ、この世界に居る天使は言わば産まれなおしている状態だと思ってる。だから、お前さんの父さんとの命令に齟齬が出てると予想してる」


 マステマは、何を考えたのか、涙を流しながら言葉を吐いた。


 {私のしていたことは何だったのだろうな、父の意向で任務を遂行したはずなのに}


「わ、私、聞いたことあるよ」


 明菜がぴょこんと手を上げた


「教会の先生が言ってた、堕天使さんたちは人間たちに色んなことを教えてくれたりしたりしたのに罰を受けた可哀そうな人たちだって。その中にマステマさんも入っていたけど・・」


 {聞かせてくれ、その可哀そうな人は恐らくアザセル達のことだろう}


「マステマさんはね、真面目すぎたんだって」


 {真面目?私がか?堕天使した私がか?}


「うん、だって、人間の扱いに不満を持ったから天使が反乱したんでしょう?本当のところは分からないわ。神様がこの世界をもういーらなっいって消滅させようとしたのを守ってくれたのかもしれないし。そんな中でも真面目に任務を遂行したんでしょう」


 {では、なぜ私は堕天したのだ}


「分からないのか?」


 マステマがこちらを向く


「あんたは、大罪を犯したんだ。まず嫉妬、そして傲慢、そして憤怒だ。古典では神に導かれたモーセを殺そうとしているな。大罪三つ、それは神の意に反することだ」


 マステマは、呆然としている。


「それでも、マステマさんのこれは酷いよ」


 明菜が泣いている。


「がんばったのに、それは間違ってたかもしれないけど、あんまりだよ」


 正太郎も続く


「うん、あんまりだ。何より彼を此処に張り付ける理由にならない。んで、交渉だ。地獄に戻ってこっちに手を出さないなら杭を抜いてやる、じゃなきゃさよならだ」


 {私に交渉の余地はない、それになぜだろうその娘の涙を見ているとなぜ人間を敵視していたのかもわからなくなる}


「まぁ人間にも悪い奴はいるからさ」


 {ふむ、知恵の実の作用が前頭葉に正常に作用しなかったのか}


「ちょっと難しいことは置いておいて、取りあえずマステマさんは、暴れたりしないってこでいいのかな?」


 {ああ、だが、私はこの玉座を離れられられん。この杭は天使はおろか悪魔にも抜けん、私が消滅するしかないのだ。ミカエル頼む」


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