未来は、まだ、分からない 20話
この世には、悪魔が沢山いて倒しても地獄から戻ってくる。戦力の補充が可能なわけだ。
対して、こちら側の天使には補充が効かない。
限られたリソースで何とかするしかない。
幸いなことに一時的にでもこちらの武器が通用するってことだ。
決着をつけるとなると、どうしても4体の悪魔をなんとかして地獄を切り離すしかないってことか。
なんか思考がループしているな。
「ただいまー」
明菜が帰ってきた。
「どこに行ってたの?」
「え?普通に買い物だよ?」
「そうか」
「あ、そういえば帰ってくる途中にギルドの人が話しかけてきてね。報酬の精算が終ってないから窓口に顔を出してくれって」
姉さん、よく無事だったな。
不用心だったかもしれないけれど、捕捉されるの早かったな。
「母さん、姉さん。どうしよう。この現状を打開する策が思いつかないんだ」
「この状態で全てをなんとかするなんて無理があるわ、なにより正太郎は子供なんだもの」
「でも、どうしたら」
「全部いっぺんにやろうとするから、悩んじゃうのよ。一つずつ行きましょう。ついでにお金ももらってしまいましょう。それに一人で何でもかんでも解決しようとしたらだめよ」
母さんの提案で全員で窓口に向かった。
「お久しぶりです、正太郎様」
ヨーコの冷え切った微笑みが全てを見透かしているようで、冷汗が止まらない。
「そちらの方たちは?」
「母と姉です」
「ご家族の方でしたか、確かに正太郎様は未成年でしたね。報酬を引き渡しますので地下へどうぞ」
「ヨーコさん、報酬の振り込みは窓口でドックタグにじゃないんでは?新兵でも知ってますよ」
フロア全体に響くような大声で叫んだ。
「指名依頼なので、傭兵の安全確保のためにも別室となっています」
フロアから視線が集まるが、恐らくその視線の主は悪魔なのだろう。
「分かりました、向かいましょう。先に確認をお願いしたいんですが」
「何でしょうか?」
「どの位待てばいいでしょうか?」
「と、言いますと?」
「1時間で用意できないなら、俺たちは勝手に行動するってことです」
「そんなに時間かかりませんから大丈夫ですよ」
俺たちは、エレベーターに乗って前と同じ部屋に通された。
前と違うのは、こちらは万全の体制だということだ。
レーコにドックタグを渡して5分後、神経ガスが送り込まれた。
「学習しないね、ドックタグも偽物だし、取りえず1時間は待とうか
」
僕たち人間は、天使の力によって有害物質を中和されている。
「恐らく、全く死ぬ気配がない僕らに慌ててるよね?」
「そうね、放っておいても制圧にかかるでしょうね、タマ、状況は?」
「周辺には、なんの反応もないよ」
「バルキアケル、部屋の神経ガスを培養して良いというまで機械が止まっても濃度を上げ続けろ。母さん、ここ開けれられるよね?」
自動ドアが開いて黄緑色の気体があふれていく。
そこかしこから、うめき声のようなモノが聞こえるがしったことじゃない。
悪魔に神経ガスが効果あるのか疑問だったがヨーコが退出したことで確信に変わった。
耐えられるのなら同席している方が確実に仕留められる。
「ボスは、一番下か一番上に居るのがセオリーだけど」
正太郎の言葉をミカエルが受け取る。
「一番下だと思われます、大きな悪魔の気配がします」
「そう、ありがとうミカエル。なら奥へ26部屋行ったところが偽装されたエレベーターだからそこへ向かいましょう」
母さん、もう無敵じゃね?
「でも、そのセキュリティは母さんでも難しいわ」
「大丈夫よ」
「この部屋ね、ポチ!ぶち抜きなさい、あ、みんなはゆっくり降りてきてね」
正太郎が、口を挟む隙ももなく、部屋の床は踏みぬかれ、明菜達は降下していく。
正太郎と真雪は、一瞬落下仕掛けたが天使たちが抱えるように落下速度を調整する。
「あんまり、ゆっくりでもいけないから着地寸前までは逆に加速して頂戴」
母の地獄の命令に正太郎が、地面に着いたときには疲れ切ってしまっていた。
降り立った地面は荘厳な神殿のようだった。
多少薄暗い印象を受けるが、何本もの柱が整然と並び奥へ向かって絨毯が敷かれている。
まるで、物語に出てくる謁見の間のようだと思った。
100m程奥にとてつもなく大きな玉座が備え付けられている。
その玉座に相応しい大きな何かが座している。
しかし、不思議と大きさの割に威圧感を感じない。
玉座に向かって進むことにする。