未来は、まだ、分からない 14話
「見事に何も無くなっているな」
GPSでは、正太郎が潜入したヘリ基地があった場所だが、現在では瓦礫が散見しているだけだ。
「これからどうするの?持ってきた重機で掘るの?」
「いや、流石にあの施設まで普通に掘ることはできないよ。エレベーターのあった部分を掘り返そうと思うんだ」
「普通に掘るのどう違うの?」
「恐らくあの施設は、シェルター並みの耐久度を持ってると思うんだよね、でないと何かのきっかけで施設が埋まったり、卵が孵ったりしないように維持に力を入れていると思うんだ」
「なるほどねー」
明菜の余り興味なさそうな返事を聞きながら、正太郎は重機を稼働させる。
「テラフニエル、エレベーターが正確な位置は確認できる?」
「可能です、こちらになります」
テラフニエルが指差す先へ重機を移動させる。
この重機は、掘削機の様に穴を掘ることもクレーンのように持ち上げることも、凡そ工事に必要なことは一台でこなす事のできる汎用機だ。
「まず、瓦礫を退かしてエレベーターの通路を掘り返さないとな。テラフニエル、上はどうだ?大丈夫か?」
「はい、基地から脱出した時点で監視衛星に対して光学的な偽装を行っております。その他のデータ上の偽装はお母様が完了しているとのことです」
「え?母さんが!?」
「はい、伊達にコンピューターじゃなかったと。入力デバイスが直観的でなくて面倒くさいとおっしゃってました」
「母さんがねー」
「はい、お母さん珈琲」
「明菜、ありがとう。お昼ご飯は任せていい?監視衛星のくせに生意気にも熱探知やら振動感知やらまでやろうとしてくるから面倒なのよね」
真雪は、汎用型のノートパソコンを凄い勢いで入力している。
明菜は、ひょっとして自分が一番役立たずなんじゃと少し気落ちしながら昼食の支度に力を入れることにした。
「で、姉さん?これは?」
「明菜ちゃん、お母さんさすがにこれはちょっとどうかと思うな」
トレーラーハウスの前には、ビーチパラソルが立てられ、テーブルと椅子が並べられ、ガスコンロの鉄板がかけられ明菜がヘラで焼きそばを勢いよく焼いている。
更に、その横ではトウモロコシが焼かれ手際よく醤油が刷毛で塗られていく。
「どうかな?お姉ちゃん頑張ってみたよ!」
「う、うん。頑張ってるのは分かる。けど、ねえ母さん?」
「そうねー、一応逃亡中に縁日みたいな状態は、ねえ?でもお母さん明菜に注意できないわよ?」
「俺も。折角だから休憩して食べますか」
「お天気ですもんね」
「へいらっしゃい!」
明菜は、ねじり鉢巻きまでして頑張っている。
「姉さん・・・」
「こ、これは美味です!私は感動しています。明菜様、流石です」
姉の暴走に少し引き気味の親子を置き去りに、テラフニエルは、異常な喰いつきを見せている。
「嬉しい、焼きそばも美味しいよ?」
「これも美味です!天上でも味わえないほどです」
「お前、食事の必要無いんじゃなかったのかよ」
「あらあら、普段はあんまり食べないのにね。やっぱりお外で食べるのが良いのかしら?」
「それなら、野営の時に食べてるはずだけど、食べなかったからね」
「まぁ細かいことはいいじゃない、私たちも食べましょう」
賑やかな昼食を済ませると、テラフニエルは宙に浮いた状態で寝ていた。
「食べてすぐ寝ると牛になるぞって、睡眠も不要って言ってたよな!?ちゃんと監視衛星への偽装はしとけよ!?」
「それならば万全なのです」
正太郎は、溜息をつくとどうせ工事の音で寝てられないだろうと掘削を開始した。
やはりエレベーター通路は頑丈に出来ているらしく、それを埋めている瓦礫は時間があまり経過していないため順調に掘り進めることができた。
掘り進めていくと、掘削機がやたらと硬い物に当たった感触がした。
「エレベーター部分は、掘れたかな?後は、どれだけ中が無事か」
掘削機を一度地上に戻し、クレーンで正太郎は地下へと降りて行った。