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天使戦争  作者: 薬売り
12/99

未来は、まだ、分からない 12話

「ただいま、姉さん」


「おかえりなさい」


「あまり、いい話はないし時間もない。これからこのカードで俺の口座から全額引き出してくれ入り口で情報屋が待ってる。隻眼のやつだ知ってるよね?」


「ええ」


「そいつに全部渡して、そいつの指示に従ってくれ」


「でも、母さんが・・・」


「お別れをしてくるよ」


 正太郎は、初めて母親の部屋に入った。


 そこには大きなコンピューターが鎮座している。


「母さんは?」


「死んだわ、辛うじて脳と意識が残っているのから意思疎通は可能よ。今まで黙っていてごめんなさい」


「そんな・・・」


 正太郎は、泣き叫びたい気持ちをぐっと抑えた。


 パネルに文字列が表示される。


「正太郎、大きくなりましたね。もう、心残すことはありません。どうぞ母を置いて生きて」


「正太郎、この人間の肉体を再生させますか?」


「冗談にしても笑えないぞ!」


「人間が行う人体錬成と違い、魂と肉体の一部が残っているのならば、私には可能です」


「本当か、頼む」


 正太郎も明菜も頭を下げた。


 では、テラフニエルは、機械の中に手を突っ込んでブチブチという嫌な音を立てて脳ミソを引っ張り出した。


「再生及び再構築を始めます」


 脳ミソが光に包まれたと思うと、段々と輪郭を取り戻し、二人の知る母親の姿が立っている。


「ああ、明菜、正太郎」


「母さん」


 三人は、抱きしめあった。


「時間がないのでは?」


 テラフニエルは、なんの感情も示さず事実を述べた。


「じゃあ、母さんと姉さんは、窓口の口座に。僕は、報告に行ってくる。集合場所は、情報屋だ」


 正太郎は、テラフニエルに向き直った


「母さんを助けてくれてありがとう。感謝してもしきれない。もう少し僕に付き合ってくれるか?」


「了解です、私は貴方のぬくもりで顕現に成功しました。貴方は私の生みの親同然です」


「ちょっと、今は理解が追い付かないから後で聞くよ。姿は消せる?」


「造作もない事です」


「じゃあ、僕と一緒に窓口に行こう。僕が殺されたら自由にしていいけど、なるべくなら守ってくれると嬉しい」


 テラフニエルは、頷くだけだった。


 正太郎は、窓口にやってきた。


 そこにヨーコの姿は無かった。


 近くの受付嬢に、ドックタグを渡して指名依頼の完了を告げる。


 受付嬢は、顔を真っ青にして奥に引っ込んでいった。


 入れ替わりにヨーコが歩いてきた、心なしか表情が引きつっているように見える。


「敵秘密兵器の鹵獲に成功しました、ただ、ブリーフィングより早く爆撃が行われたため、一部しか持ち出せませんでした」


「わかりました、前回と同じ部屋を用意しています。そちらに参りましょう」


「了解しました。支払いはどうなりますか?」


「鹵獲された部品を分析に掛けて、既存のものと違うと分かれば直ぐに振り込まれます」


 正太郎は、前回と同じ部屋に通されたが、今回は監視カメラなどがないか目をあちこちに走らせる。


「簡単に見つかるところにはないか」


「なにか?」


「いえ、何も」


 それでは、分析班に回してきますので、それまでこの部屋に待機していてください。


「どのくらいですか?あんまり長い時間はちょっと」


「構造と素材分析なので10分程で完了すると思います。何か飲み物でもさせましょうか?」


「いいえ、結構です」


「では、失礼します」


 ヨーコが退出すると、テラフニエルが小さな声でかけてきた。


「あの者からは、堕天した者の気配がします。油断できません」


「地獄の死者の下っ端って感じか?」


「概ね、その通りかと」


 そんな話をしていると、天井の空気ダクトからシューっと音が聞こえてきた。


 テラフニエルは、淡々と告げる。


「神経ガスですね、3分程で正太郎様の生命活動は停止すると進言します」


「やっぱり、口封じに来たかー」


「どうにかならない?」


「既に正太郎様の周囲にはガスを無効にしてあります。また、お母様が扉のロックを外してくれているようです?」


「母さんが?」


「ええ、伊達にコンピューターでは無かったと言ってました」


「とっとと逃げまよう」


「了解しました」


 正太郎は、100億円勿体なかったなーという気持ちと命あっての物種という気持ちがあった。


「私には俗物的なことは少々理解不能ですが、生命の維持を優先すべきだと思います」


 正太郎は、苦笑いしながら廊下を駆け抜け、エレベーターに乗った。


 エレベーターを止められるかとも考えたが、急にエレベーターが止まれば、不要な混乱が生じる可能性もあるから止めないかと何となく納得した。


 地上に出た正太郎は、透明なままのテラフニエルを伴って走った。


「急ぐのであれば、私が正太郎様を抱えて飛んだ方が早いですよ?」


「母さんと姉さんが情報屋に着いているはずだ、情報屋にテラフニエルの事がバレるのも不味い」


「信用されていないのですか?」


「情報屋は、情報を売り買いしている。もちろん俺の情報も握っているし金を積まれれば売る。そういうもんだが頼んだ仕事はする」


 駐車場にたどり着くと、トレーラーハウスと重機を積んだトレーラーが火が入った状態で待機されていた。


「姉さん、トレーラーハウスの方は運転できるね?俺はトレーラーの方を運転するからついてきて。テラフニエルは周囲の警戒を」


 二台のトレーラーは、急発進の後、基地を離れていく。


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