問題編
長い冬が続いていた。外は冷たい風が吹きすさび、積もった雪はもはや人の背丈を越えてしまっていた。
冗談抜きで、マジ寒い。私は暑いのよりは寒い方が苦手なのだ。
それは全て、冬の女王様が塔から出てこないからだと聞く。春の女王様と交代さえしてくれれば、この憎たらしい冬も終わるのだが。
だがまぁしかし、こうして重ね着をして火鉢に手をかざしながら、クロスワードをするというのも悪くない。
私はパズルをこよなく愛する人間なのである。人々の間では、あのパズル好きと言えば私のことを指すくらいには浸透している。ま、何かの役に立つわけではないのだけれど。
そんなある日、私は王様に呼ばれ、お城へ参上することになった。面倒なことだ。
なにせ道は雪に埋もれかけている。とても歩いて通れるものではない。
しかし王様は立派な馬車を用意してくれていた。中には火鉢もあって暖かい。これは非常に助かった。お陰で馬車の中でもクロスワードに没頭することができた。
そういう訳で、どうにかお城まで辿り着いた。
謁見するやいなや、王様は私に尋ねてきた。
「そなたが噂のパズル好きか」
「えぇ。小さい頃からパズルが好きで、色々と解いたことがあります」
「では早速だが、見てもらいたいものがある。付いてまいれ」
王様はすたすたと早足で歩いて、部屋から出ていってしまった。遅れる訳にはいかないので、駆け足で後を追いかけた。
廊下と階段を通って着いた先は、高い塔だった。中に入ると居室になっていて、豪華な調度品が並んでいた。庶民の私には縁のない物ばかりである。
「ここが各季節の女王の住む塔だ。しかし冬の女王が住んでいる間に、魔女が忍び込んで、冬の女王の姿を変えてしまったのだ。そして魔女はこれを残していった」
王様が差し出したのは、一枚の紙片であった。
確かに部屋の中央のテーブルには、ミシン、くし、コップが置かれていた。このうちのどれかが冬の女王様ということだろう。
「このパズルを解けば良いのですね?」
しかしそれを聞いた王様は、自信にみなぎった顔でニヤリと笑った。
「いや。もう私が解いたのだよ、このパズルは。だが家臣たちは確信がないと言って聞かないのだ。そこでそなたは、我が名推理を聞き、正しいことを確認してくれればいいのだ」
「では王様の答えをお教え下さい」
オホンとわざとらしく咳をしてから、王様は口を開いた。
え?私がどう思っていたかって。やだなぁ、決まってるじゃないですか。コイツ、無能だなって思っただけですよ。
だってこの程度のパズル、迷う必要なんてないのだから。
次回が解答編となります。
みなさまどうぞ、魔女に騙されませんように。