【覚醒Ⅱ】
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龍災の原因は二つある。
一つは「龍の出現」、もう一つは……。
「――がはっ!!!!!!!うぅぅぅぅ!!ああああああああ!!!」
水槽の中で、零は暴れる。
身体中には、竜紋と思われるモノが全体へ広がっていた。
「タツヤ、いいの?」
「……ああ、構わないさ。所詮こいつは、ただの人形だからな」
「お兄さん、苦しそうだよ?」
「何だ、情でも移ったか?安心しろ、全てが終われば……こいつも楽になるさ」
彼は少女の頭に手を乗せ、そう答える。
そして水槽に目を向け、口角を上げた。
「……もうすぐだ。俺達、ドラグニカの為の世界が完成するぞ」
彼はそう言いながら、その水槽がある部屋を後にした――。
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記憶を巡り、僕は思い出した。
霧原家は代々、剣の道を歩ませる立派な道場だった。
『だった』というのは、それは勿論……道場はもう潰れてしまったからだ。
僕が生まれたから、僕の所為で。
霧原零、霧原竜也。その兄弟は、双子として誕生した。
好奇心大盛で、何事にも負けず嫌いな竜也。
逆に僕は、物静かで無口な性格をしていた。
いつからだろう……その両方の性格が壊れていったのは……。
……龍災の起こったあの日。
僕と竜也は、遊びに出かけていた。
両親も含め、数人の黒い服の人達も連れてだけど。
楽しかった、とても楽しい時間だったはずなのに……。
あいつが現れたから……違う。
正確には現れたんじゃない、龍になったんだ。竜也が……。
黒い、大きな龍に。
兄弟喧嘩は何度もしたけど、その日は目の前の光景を疑った。
あの日、僕が喧嘩なんてしなければ……。
「それは違うよ、お兄さん」
「――っ!?何で、君が」
「お兄さんはお兄さんで、タツヤはタツヤ。お兄さんの記憶は本物じゃなくなってるから、そう思ってしまうだけだよ。だから安心して」
目の前の少女は、水槽に手を当てて優しく微笑む。
「君は敵なのか、味方なのか。分からなくなるよ」
「君じゃない。シズク、お兄さんなら名前で呼んでいいよ」
「そっか。じゃあシズク、その……教えて欲しい事があるんだけど」
「なに?」
「僕の記憶が本物じゃないって、どういう事?」
少し思考した時間の後、シズクは口を開いてくれた。
「お兄さんはその龍災の日の事、どれくらい覚えてる?」
「最初から最後まで、だけど……」
「そっか。じゃあタツヤの記憶で、それはほぼ間違いないね。お兄さんが知りたいのは、どこから本物でどこからが偽者?って聞きたいんでしょ?」
僕は小さく首を縦に、肯定した。
「答えは全部だよ。お兄さんの名前は、霧原零だっけ?あれはね、タツヤが作った偽者の記憶。それ以外は全部、タツヤの記憶だよ」
「じゃあ、僕はいったい……」
「答えは一つ。お兄さん、お人形さんだよ。それも相当完成度の高い技術で作られてる」
「――っ!?」
事実を突きつけられ、僕は言葉を失くした。
じゃあこの記憶は、記憶の中の兄が作り出した幻想って事?
今までも、記憶の共有をしていたっていう事?
いつから、だろう。この子は知っているのだろうか?
知っていたとしても、知りたくない……これは、恐怖だ。
「ちなみにお兄さんの竜紋、タツヤと繋がってるからそれが答えだよ。お兄さん」
「(竜紋で、繋がってる!?)」
『少し話しすぎじゃないか?シズク』
「あ、レオ。見てみて、お兄さんの汗拭かないと」
「霧原零、だっけ?シズク、何でそいつに構うわけ?」
レオという少年の問いに、シズクは少々考えている。
だがしばらくすると彼女は、零に向かって満面の笑みを見せて口を開いた。
「……この人が、シズク達を助けてくれそうだからかな。そんな事が有り得るような、そんな温かい心をこの人からは感じる。それは作られたとかは別問題に出来るくらい、ね。お兄さん♪」
「……シズク、ちゃん?……」
僕の考えた事が、全部真っ白にされてしまった。
彼女はこう言ったのだ。
「お兄さんはお兄さん、それで言いと思うよ」
そう、言ったのだ。
「シズクちゃん、僕決めたよ」
「ん?なに?」
「君達を助けるよ。僕に出来る事、僕の力を全部使ってでも!」
「うん!ありがと、お兄さん」
「シズク、無茶言い過ぎ。見つかったら竜也に怒られるよ?」
「そう言いながら、レオは何で止めないの?」
「ボクはシズクのしたい事を手伝うだけ、じゃあ行くよ?零の兄ちゃん」
「あ、うん」
頬を赤くしながら、レオは水槽のスイッチを押す。
その途端、水槽の中から水は抜かれ、出れるように開いていった。
「記憶が戻った、というよりかは兄ちゃんは気持ちを優先させるって感じだね」
「……まぁ、否定はしないけど」
「タツヤはお兄さんの友達の所だよ、早く行って来て!」
「君達は?」
「ボクたちは、後から行くよ。兄ちゃんの心配なんていらないから、先に行けよバーカ」
零は言われたとおり、亜理紗たちの元へ走る。
『契約を唱えよ、我が主』
零の頭の中にそう響き、零は口角を上げていった。
「また会えて嬉しいよ、ウロボロス」
・・・・・
その部屋には、少年少女が取り残された。
「行っちゃったね、お兄さん」
「ああ、行っちゃったな」
二人は手を繋ぎ、目を瞑る。
優しく笑みを浮かべて、二人は光の球体に包まれた――。
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やっぱり書いちゃいました♪
我慢が出来ない時は、こうするしかないですねww
後もう少しでラストスパートです。
頑張ろう自分、そして読んで頂いている方、ありがとうございます!!




