【覚醒】
・・・・・
――少年は、暗闇の世界を彷徨う。
その世界は音も光も無く、ただ少年の鼓動だけが響いている。
まるで何か、得体のしれないモノの中にいるかのような……そんな感覚。
少年はその暗闇を進み、一つの光を見つける。
その光は蒼く、炎のように揺らめいている。
『――お前は、何を欲する?』
突然、少年の頭に低い声が響く。
少年は周囲を見渡すが、何も存在せず誰もいない。
存在しているのは、その蒼い炎と自分だけ……。
『……もう一度問う。お前は、何を欲する?』
その問いに対して、少年は口を開く。
「……俺は、お前の力が欲しい」
『…………承知した。存分に振るえ、お前の心のままに』
蒼き炎は龍の姿を一瞬見せ、少年の前から姿を消した。
少年の周囲には、龍と同じ蒼い炎が纏わりつく。
「……これで準備は整った。あとは、目覚めるだけだ」
小さく笑いながら、少年はそう言った。
小さく笑う少年の右手の甲には、竜紋が蒼く光っていた――。
・・・・・
龍災が引き起こされるのは、理由は二つある。
一つは、『龍の出現』
ドラゴンの出現パターンは、現在の技術では特定不可能。
それ故にドラゴンの出現に対して、各国が取った行動は常に警戒レベルを最大にして行動。
その行動によって、怪我人及び死亡者を出さないよう全てを注いでいる。
なおドラゴンには、軍による兵器などは一切通用しない。
とてつもなく皮膚が硬く、戦車のライフルや戦闘機のミサイルさえも傷一つ付かない。
ドラグニカという者達は、龍災の際に出現するドラゴンを撃退する特別部隊でもある。
「――でも僕らが戦った龍は、未だにゼロ……」
零が言った一言に、亜理紗も着いてくる。
「というよりかは、龍の出現自体が一番日本が少ないのよね」
「ウチは想像できないなぁ……ドラゴン自体見た事ないしなぁ。テレビなら見た事あるけど」
桐華も天井を見て口を開き、そう言った。
その二人を眺めて、零は頬杖をしている。
「「「……はぁ~あ……」」」
三人一緒に溜息をして、目の前の人物を見る。
「……お前ら、真面目に講義受けろよ……」
西條が黒板にチョークを付けたまま、三人を見る。
パタン、と西條は本閉じて口を開く。
「……もう講義は終了だ。ちょうど五分前だし、今日ぐらいは良いだろう。今日は土曜日で、午前中しか講義はない。遊びに行きたいなら、羽目を外しすぎないよう……」
「――じゃあお先に失礼しまーす」
「あ、あーちゃん、ウチも行く」
「あーあ……西條さん、講義をそう終わらしたらああなるに決まってるじゃないですか」
「零、お前は行かないのか?」
いつもは二人に参加する零は、こんな終わり方をすればすぐさま出ていくと西條は思っていた。
だがしかし、零だけ残りゆっくりと帰り支度をしていた。
「……僕は今日、用事があるので。二人の誘いは断りました」
「そ、そうなのか。珍しいな」
「はい、今日は……大事な日なので」
そう言い捨てて、零は教室を出て行き西條だけが取り残された。
ドラグニカ育成機関があるこの街は、東京地区の南に位置している。
そこから徒歩と電車を合わせて四時間。
零の大事な用は、そこにある。
「……また、ここに来ました」
海の匂いが風に揺られて、零の頬を掠めていく。
零の目の前には人はいない。
あるのは、たった一つの石段だけ……。
「母さん。僕は今、ドラグニカになって鍛えています。そんな真面目には取り組んでないけど、今の生活は結構気に入ってます……それから」
・・・・・
「ねぇ、あーちゃん。一つ聞いてもいいかな?」
「何よ?改まって」
街にある大きなデパート、その中でウインドウショッピングをしていた中。
真面目な表情と疑問を桐華は、亜理紗に投げていた。
「零君ってさ。もしかして兄弟とか、いる?」
「え?いないと思うよ?付き合い長いけど……どうしたの、急に?」
「最近になって気づいたんだけどね、零君。昔の一人称、「俺」だったんだよね……気のせいかな?」
『――二人で俺の話?なら俺も混ぜろよ』
「「――え?」」
・・・・・
「それから……。――っ!?」
視界が歪み、咄嗟に激痛が身体中を駆けていく。
零の身体には、薄く蒼い炎が纏わりつく。
竜紋も紅く、点滅を繰り返している。
「……み、ん、な……」
零は倒れ、気を失った。
だが零は、倒れる寸前にある者を見た。
彼の前にいた、『龍を纏いし、少女を』――
――暗転。