【初任務Ⅱ】
霧原 零には、悪い癖がある。
それは……
「お前は馬鹿かっ!!!」
「――っ!?」
怒りの混じった声は、唾と共に零に降りかかる。
「上空から潜入し、逃亡したクーデターの首謀者を捕えろという命令だっただろうに!……今ここで、お前がやった事を言ってみろ」
「えっと……」
零は思い出しながら、事実を話した。
――2時間前。
上空からの潜入、までは成功した彼ら。
そこからの段取りも、上手くいく。……そう思っていた。
「――潜入成功!よし、行くか!」
「――静かにしなさいよ、バカ!」
ゴン、という音が零の頭に響く。
「何だよ亜理紗、少しくらい気合入れたっていいじゃねぇか!」
「貴方の場合、その『気合』を入れすぎて毎回失敗してるでしょうがっ!」
彼女の名前は、新堂 亜理紗。
零とは幼馴染ではあるが、彼より成績は上位。
得意な武器は、槍系統の中距離タイプ。
所属ドラグニカは、リヴァイアサンの竜紋の持ち主。
「二人共、痴話喧嘩はそこまで」
「「誰と誰が痴話喧嘩だ!!」」
彼女の言葉に、零と亜理紗は同時に突っ込む。
「あーちゃんも零君も、背後から撃たれたくなかったら黙って集中する」
カチャっと彼女は、手持ちの銃のコッキング音を鳴らす。
「「はい、ごめんなさい。桐華様!!」」
「……うん、よろしい♪」
二人の土下座に対して、笑顔で答える彼女。
彼女の名前は、藍原 桐華。
亜理紗と零と同じクラスに所属している。
得意な武器は、銃系統による遠距離タイプ。
所属ドラグニカは、トリシューラの竜紋の持ち主。
「相変わらず、怖い笑顔をするよな。桐華は……」
「あー失礼だなぁ零君は。それだからいつまで経っても、竜紋を使いこなせないんだよ?」
「その話、竜紋の事は一切関係ないと思うけど?」
「まぁ零の場合、『猪突猛進とその場の空気で先へ行く』っていうのが主な原因だと、私は思ってるけど?」
「お前ら、任務中にただ俺を苛めたいだけじゃないのか?ただ好き放題に言ってるだろ!?」
「「うん、そうだけど?」」
「同時肯定すんなよ!せめて違うよ、ぐらいは言ってくれよ!!少しは誤魔化せよ!」
「誤魔化す必要性、無いじゃん」
「それには、ウチも同感です。あーちゃんの言う通り、なので♪」
「――だったら!使ってやろうじゃねぇか竜紋を!そこまで言うなら、見せてやる。俺にだって、力があるんだ!」
零はムキになり、手の甲にある竜紋に剣を翳す。
彼の名前は、霧原 零。
亜理紗の幼馴染で、落ちこぼれ。
成績万年、最下位の実力で現在補講中。
得意な武器は、剣系統による近距離タイプ。
所属ドラグニカ……現在不明である。
「……行くぜ、首謀者もろとも!消し飛ばしてやる!」
「ちょっと!ここで竜紋を発動しないで!」
「零君は、学習能力が無いみたいですね。ビルが崩れますよ?」
「桐華、貴方意外と冷静ね」
「もう流石に一年同じクラスにいれば、ウチだって慣れます。とりあえず、退散しましょうか。あーちゃん」
「はぁ、うん。その提案に賛成するわ」
竜紋解放しようとする零を置いて、すぐさま彼女達は屋外へと退散する。
その途端に零は竜紋によって、標的の位置を把握した。
「見つけた!――切り裂け、風の刃よ!はあぁぁぁぁ!!」
壁を切り裂き、標的へと風が襲い掛かる。
穴を開けた零は、その標的の元へ辿りつく。
そして、スッと剣先を向けた。
「捕まえたぜ、もう逃がさないぞ」
「ま、参りました……」
これにて一件落着と思われたその時、地響きと共に轟音が響き渡る。
場所は零の背後から。
彼が放った風の刃は、壁と共にあらゆる柱という柱を真っ二つにしていったのである。
そうなれば、ビルは当然崩れていく。
これにより、零は報酬であった金銭を全て弁償へと回したのだった――。