【消失】
――零は目を疑った。
リヴァイアサンに突き刺さる、巨大な光の矢を……。
「ど、ドコから!?」
『だがこれはチャンスだ。とっとと終わらせるぞ!』
「ああ。ウロボロス!リヴァイアサンの弱点は?」
『…………』
「……ウロボロス?どうしたの?」
『反応が無いな?さっきまで、中にいたはずなんだが……。とりあえず最大限の力を使って、ドコかへ移動させよう!』
「ああ。その方が良いかもね。でも……」
『あの光の矢については、後で調べるぞ!』
「分かった!竜紋、最大解放っ!!」
――これで終わりだ!
二度目の龍災は、これで未然に防げる!
――ドクン!!
「――っ!?」
鼓動が跳ね上がり、心臓が握られている感覚が零の身体を蝕んだ。
零の深層世界で、自分を締め付ける黒い影を見つけた。
それは自分の力であるはずの存在である、ウロボロスの姿だった……。
「……どう、して?……」
『言ったはずだ、我に任せろと。お主らでは、我が同胞をただ傷つけるだけだ』
「――くはっ!」
――ドクン、ドクン。
零はリヴァイアサンの目の前で、這い蹲る。
自分の胸を抑えながら、彼の支配から逃れようとする。
そして黒い影は龍となり、現実の零を包み込もうとする。
「(……このままじゃ、ダメだ。ウロボロスが俺の身体を使えば、また〝あの時〟みたいになってしまう!!そんなのは、もうウンザリだ!)」
スッと零は、剣と共に竜紋をリヴァイアサンへ翳す。
だが構えがさっきまでと違う。
剣先の前に竜紋。つまり剣とリヴァイアサンの間には、自分の右手を挟んでいた。
リヴァイアサンは間髪入れず、零の身体を喰らおうとする。
零は避けようとした瞬間、身体が動けずリヴァイアサンの口の中へ。
――だが、零は自分の考えを止めずに意志を実行する。
『――零っ!?やめろっ!そんな事をすれば、お前の力はっ!?』
「――竜紋を強制解放。……殲滅しろ、ウロボロス」
『――零っ!!』
……零の放った波動は、彼の竜紋と共にリヴァイアサンを消失させた――。
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―――――
――深層世界。
ここは零の精神の世界であり、もう一人の彼がいる場所だ。
もう一人の彼は、消失していく。
ただ一言、自分の主へ告げる言葉を呟いて……
『……我らの王に……幸福を……』
「……ま、待って!」
意識が遠くなり、身体の自由が奪われる。
顔を上げれば、もう彼の姿は存在しない。
やがて深層世界には、眠り続ける零の姿だけが取り残された――
・・・・・
「……自らの血を浴びたドラグニカは、血の契約を果たす為。我らと共に力を求める。……では行きましょう、我らの王の元へ」
少女は反応を確認し、口角を上げる。
身を翻し、彼の元へと向かう。
「……では行きましょうか、貴方達も。お兄さんをお迎えに」
『――御意』
彼女に一礼し、彼らもまた着いていく。
そのまま彼女達は、時計塔から姿を消した。
時計塔には、白い羽根だけが宙を舞っていた――。




