【表裏一体】
――風が吹き荒れ、空気が冷え切っている。
龍を目前にして、身体の芯まで鷲掴みされているようだ。
恐怖心や不安が、オレにもない訳じゃない。
創られた存在だからと言っても、オレにはちゃんと感情はあるのだから。
「リヴァイアサン、オマエの主の暴走は……勘違いだ。オマエを先には行かせない」
わざわざ気絶させてまで、こいつの前に来たんだ。戦って負けたとなっては、ただの恥さらしだ。
「……まぁ考えても仕方ないか。……行くぞ。――ウロボロスっっ!!!!!」
剣を構え、力一杯に振り下ろす。その風圧は、リヴァイアサンへと向かっていく。
その姿をただ一人、少女は眺めていた。龍のような、赤い眼で……。
・・・・・
「人は悲しみを背負い、罪を背負って生きている」
少女は呟き、彼を眺める。
彼女の眼は赤く、黒く濃い影を纏う。
「……罪が求めるのは、贖い。つまりは贖罪。ドラグニカではなく、彼に私は求める。いつか彼が、完全な王となる日を……」
彼女は微笑み、姿を消す。
彼女の影は、龍のように蠢いていた――。
・・・・・
「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
息が上がり、身体が重い。力で振っていた剣も、握るだけで精一杯だ。
龍の皮膚は、鉄よりも硬い。勢い良く斬ろうとすれば、反動が強く返って来る。
「ウロボロス、オレには何が足りない?」
『零よ。お主の力は、こんなモノか?』
「竜紋の力だって使えてるし、剣の訓練も休んだ事は無い。あらゆる術を使って、力を付けようとしたのに……傷一つ、アイツに付けられない」
無力さを思い知り、剣を握りなおす。
竜紋と剣を翳し、力を発動させようとする。
その瞬間、竜紋は紅く光りやがて黒くなっていった。
「……これは?……」
『お主では、もう無理だろう。我に力を委ねよ』
「ウロボロス、何をするつもりだ?……くっ!?」
ドクン、と鼓動が跳ね上がる。
身体の中から、自分自身が離れる感覚が身体を襲った。
「少し、代わってもらうよ。君の力に頼りすぎるのは、僕が我慢出来ないからね」
『……オマエ?』
零は自分自身と向き合い、そう言葉を発する。
裏と表、光と影が混ざった瞬間。彼らは実感する。
「俺は霧原零だ。今までご苦労様、後は任せろ。霧原家にとって、龍を前にして引き下がる訳にはいかない。俺とお前は二人で一人だ。行くぞ、俺」
『はいはい。サポートは任せな』
龍を見る零の眼は、黒と赤という左右で違う光が光っていた――
・・・・・
「目覚めた。私達の王が……」
少女は微笑み、リヴァイアサンへ光の矢を放った。
「さぁ、思う存分。力を放ちなさい、我らが龍の王よ」
少女が纏っていた影は、一匹の龍となり零の影へと侵入する。
少女はそれを見届けて、呟いた。
――私から貴方へ、贈り物よ――




