【選択】
――黒き龍の力を解放し、彼の力は天へと光の柱を作る。
黒い光は、雲を貫いて空へ広がる。
その様子を見た少女は、それを眺めている。
「タツヤ……力、使ったんだね。……」
「……シズク」
「レオ?……怪我してる、大丈夫?」
「うん。でもアイツ、行かせちゃった……ボクは失敗した」
「ううん、いいよ。でも、少し……」
『――少し大変、どころではないと思うますよ。シズク様?』
「――誰っ!!」
「……っ!!……アナタは……」
「シズク?」
扉へ入ってきた軍服の人影。その人物を見て、シズクは目を見開いた。
その人物は、スッと手を上げて合図を出した。
その瞬間、さらに人影が彼女達を強襲する。
「――っ!!シズクっ、逃げっ!………」
「――レオっ!!……やめてっ!離して!」
『そういう訳には参りません。……貴方は、我らの王女殿下なのですから』
「シズクが王女なら、言う事聞いてこの手を離して!」
『それは出来ません。……その御方を連れて行け。私は、〝彼〟を回収する』
「は、離して!レ、レオはどうするの!?」
『その子は無関係になりましたので、別段困る事はありません。あまり騒ぎますと多少、強引にでも構いませんよ?我々《われわれ》は、そう上から言われていますので』
「…………」
シズクはそう言われ、息を呑む。
その反応を見て、人物は口角を上げて言った。
『……結構です。では、連れて行って下さい。後は私の役目、ここには長居は無用です』
その言葉を周囲の軍人は、了解の意志を声に出す。
彼女はそのまま、倒れた少年を見て連れてかれた。
ただ、悲しさを含んだその眼で……
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「――壊せ、ディアボロス」
黒い鎧を纏った竜也は、剣を彼女へと滑らせる。
その剣を身体の一部のように、ただ淡々と……
「……(凄い。零君より、速いかも)……」
「どうしたリヴァイアサンの巫女、その程度か?」
「…………」
「反応は皆無か。少しは反応をしてやったらどうだ?お友達が、声を聞きたがってるぜ?」
「……トモ、ダチ……」
「――っ!!あーちゃんっ!?」
微かに反応を示した亜理紗は、動きが遅くなった。
その隙を待ってたかのように、竜也は重い一撃を彼女へぶつける。
その一撃を受けた彼女は、槍を手から離して屋上の端まで転がった。
「今からお前に選択肢をやる。一つは、ここでそのまま落ちるか。もう一つは、ここで起き上がって自分の友と俺を斬る選択だ。武器は手元から離れたが、力を使えばもう一度戦える。だけどそうするなら、俺は全力でお前とそこの女を斬る」
「――っ!?うっ!!……」
亜理紗は頭を抱え、桐華の姿を見る。
何かに抗うように、何かを抑えるような顔で彼女は口を開いた。
「……ううっ!き、桐華。私、を……う、て」
「それがお前の選択か?」
「……あーちゃんを撃つなんて、アタシには出来ないよ!!」
「で、も。このままじゃ、私は……貴方を……」
「だってさ、藍原桐華。撃てば、龍災も防げるし暴走も止まる。一石二鳥だ」
「――でもっ!!!!」
『……桐華は、撃つ必要はないよ。僕がなんとかするよ』
ふと聞こえた声は、その場にいた全員の頭にまで響いた。
その声は、彼らが知っている彼そのものだ。
「……れ、零君?」
「……零、お前……」
「遅くなってごめん、桐華」
「零君、あーちゃんは龍の力が暴走状態なの!だからっ!」
「落ち着いて。大丈夫だから、亜理紗も助けるから」
「……(あれ……零君。なんか、変わってる?)……」
零はそのまま桐華の手を離し、彼らの元へと歩く。
いつも通りの平常運転な彼のままで、足を止めずに歩く。
「竜也、その足を退けてくれないか?亜理紗と話があるんだ」
「お前、分かってるのか?この状況で、俺が足を離したらお前に斬りかかるかもしれないぞ?」
「僕の心配をしてるなら、必要ないよ。それは一番、君が知ってるはずだろ?」
「……チッ。ならなんとかしてみせろ」
スッ、と竜也は足を亜理紗から離す。
その瞬間、亜理紗は体勢を戻して零へと斬りかかる。
そのまま彼女の槍は、彼の身体を貫通した。
貫通した衝撃によって、赤い滴は桐華へと降りかかる。
「…………れい、くん?あー、ちゃん?………」
「…………零……お前」
その様子を見た、彼は恐怖した。
肩の辺りを貫通した零の表情は、それでも優しい笑顔のままだった――




