【龍の巫女】 [亜理紗・桐華編]
私は失った……。彼女を、大切な友達を……。
許す訳にはいかない。彼女との出会いは、私の外へと行く道の光だったのに。
「リヴァイアサン、貴方の力を私に譲りなさい。――貴方に拒否権は、無いわ」
雲に向かって、一つの柱が空を貫く。
雲は円を作り、空の奥が顔を出す。
ドラグニカ育成機関日本支部、その屋上には……黒い装束の亜理紗が立っていた――。
・・・・・
「……あーちゃん、ごめん、ね……」
――バン、バンっ!!!
銃声が鳴り響き、破裂音によって携帯の電波が途切れる。
翠と蒼い色をした銃は、彼へと向けられる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「……驚いたな。いや、ここは素直に褒めておくべきだな」
彼はニヤリとし、言葉を続ける。
「突発的な行動にしては、予想外だと思ったのだが……なるほどな。訓練とやらの勘は、鈍っていないという事かな?」
「何を言ってるの。はぁ、はぁ……」
ポタポタ、と地面に温かいモノが雫になって落ちていく。
彼の攻撃をギリギリで避けたのは良いけど、どうやらウチは避け切れなかったみたいだ。
脇腹を貫かれ、呼吸が少々難しいけど……まだ、戦える!
「弾け!――トリシューラっ!!!!」
視界が拡がり、彼を含める様々な情報が脳内を駆ける。
物の配置、彼との距離、それぞれの情報を踏まえて接近する。
瞬時に相手の横を取り、銃を構える。
「――遅いな……」
「――っ!?」
スッ、と向けられるそれは至近距離にあった。
反射的に距離を取り、彼の位置を再確認する。
「(……見えなかった。ウチは彼の位置を認識して、死角を取ったはず。なのに……)」
彼は瞬時に行動を先読みし、彼女の間合いを潰した。
それしか考えられないほど、彼の行動は彼女には見えなかったのだ。
向けられた刃は、微かに目から逸れて頬へ掠めた。
「そんなに驚く事でもないだろう?俺の龍の力の一部で、相手の動きを読み取る能力があるだけだ。いわゆる予知能力と言っても良いが、予知出来るのはほんの数秒だけだ」
「……そう。じゃあもっと速くするだけ!」
「俺の周囲での高速移動は、逆に危険とは思わないか……まぁ、別にいいけどな!」
単発銃では彼の反応に追いつけない。なら、連射能力のある銃へ変更すれば……
「――銃の変更が遅すぎるぜ。言ったろ?」
「――うっ!!!」
「……お前の行動が見えるんだよ。その程度じゃ、俺には勝てない」
蹴り飛ばされ、立ち上がる前に剣を向けられる。
「(ウチは、ここで死ぬの?)」
そう思った、次の瞬間――
『貫け!!!!――はあぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
その時、上空から何かが飛び込んできた。
かなりの速度での突撃行動。
彼女の前に煙が広がり、視界を埋まらせる。
だが彼女は目を閉じず、見た光景を疑った。
そこにいたのは、まるで龍の衣を着た巫女の姿があった――。




