ようかめ
「……ん?」
何かの気配を感じて目が覚めた。
時計を見ると、ちょうど真夜中の二時になったところだった。
……その時間を見て、嫌な予感に襲われる。
なにかを見落としているような、しかしそれが何なのかわからない。
もどかしい感覚だった。
「あ、れ……?」
そこでぼくは、身体がうまく動かせないことに気が付いた。
よく見ると、月明かりに照らされたぼくの身体は、ガムテープのようなものでがんじがらめにされていた。
そして、
「え……」
ぼくの目の前に、ぼくがいた。
「なん……で……」
喉から掠れた声しか漏れないのは、ぼくの喉に穴が空いているからにほかならない。
ぼくの喉には、サバイバルナイフのようなものが突き刺さっていた。
ナイフを突き刺したまま、捻るように手首を曲げるドッペルゲンガー。
「ぐ……ぁ……」
喉奥に血が溢れる。
呼吸することもままならない。
意識が遠ざかっていく。
ぼくが最後に見たのは、ぼくの姿を眺めるドッペルゲンガーが、口元を歪める姿だった。
「あ、おはよう。マコト」
「おはよう、哲也」
「……あれ? またクマができてんぞお前。ちゃんと寝ろよな」
「え? ……あ、そうか。僕、昨日も徹夜したんだっけ」
「忘れてんのかよ……ったく、しっかりしろよな」
「あはは。ごめんごめん」
マコトはいたずらに笑い、ポツリと一言呟いた。
「――ああ。生きてるって素晴らしい」
もうひとりいました。