さいごのひ
「マコト! おはよ!」
「……ああ、哲也か。おはよう」
ドッペルゲンガーの解体作業がひと段落ついたので、今日は登校することにした。
昨日は全く寝ていないのでかなり眠いが、まあ授業中に寝れば問題ないだろう。
「ってかマコト、すごいクマできてんぞ。寝不足か?」
「寝不足というか寝てないんだよね。そのせいかも」
「寝てないのかよ……」
「ちょっと昨日のうちに片付けないといけない用事があったからさ」
「ふーん」
哲也は呆れたような顔を浮かべていたが、ぼくの心は、そんな哲也の何気ない動作一つでも喜びを感じていた。
「……? なんで笑ってんだ、マコト?」
「え? ぼく笑ってた?」
「ああ。なんかいいことでもあったのか?」
「……いいこと、ね」
ぼくは空を見上げる。
どこまでも青く澄み渡る空。
そんななんでもないものが、とても美しく、貴重なものに感じられる。
「ぼくが今こうしていることが、奇跡みたいなことなんだって、そう実感したんだよ」
「……ふーん?」
哲也は、ぼくの言ったことがよくわかっていないようだった。
「……なんかお前、雰囲気変わった?」
「え? どうして?」
「いや、なんか前までのマコトとちょっと違うような……まあ気のせいか」
哲也がそう感じるのも無理のないことだろう。
ここ数日、哲也が接してきたのはぼくのドッペルゲンガーなのだから。
「……ぼくは、まこと」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、何もないよ」
ぼくの心の中は、ようやく自分を取り戻せたことへの達成感でいっぱいになった。
ああ。生きてるって素晴らしい。