いつかめ
土曜日の朝。
ぼくは、お隣さんの家へと足を運んでいた。
人間を一人殺そうと思ったら、色々と考えなければならないことがある。その最たる一つが、死体をどこへ隠すかということだ。
人間を殺害すれば、もちろんそこに死体が残る。それが発見されてしまえば、ぼくの身は破滅してしまう。
ドッペルゲンガーを殺したとして、死体などというものが残るのかは微妙なところではあったが、準備しておくに越したことはない。そのために、ネットを使って人間の死体の処理方法を調べた。
バラバラにして海に撒くのが最もバレなさそうな方法ではあったが、あいにくぼくにそういった方面のツテはない。中学生であるぼくはもちろん車なんて運転できないし、沖まで船を出すことも難しい。
なので、ひとまずバラバラにした内蔵と手足を冷蔵庫に入れておき、小分けにして燃えるゴミの日に出すことにした。この方法ならば、まずバレない。
しかし、死体を解体するというのは思いのほか難しい。
ぼくはお隣さんだったおばさんの腕の関節部分に包丁の刃を突き入れながら、そんな他愛のない感想を抱いていた。
まさかドッペルゲンガーくんの死体をうちの冷蔵庫に入れるわけにもいかない。そのために、お隣のおばさんの家の冷蔵庫を借りるついでに、練習をしておこうと思ったのだ。
血抜きを終え、内臓も既にすべて取り除いてあるため、おばさんの腹には虚ろな空洞が覗いている。ちなみに頭部は既に切断してあるため、目の前にある死体には頭がついていない。
大腸に詰まっていた便と、胃に詰まっていた消化しかけの食べ物は、まとめてトイレに流した。そのあと軽く水洗いし、他の内臓たちもろとも細かく切って、油をひいたフライパンで軽く焼き上げる。味付けに塩コショウをふりかけるのも忘れない。
切断した腕と足は二十センチほどの長さにナマス切りにして、沸騰した水が入った鍋に入れて茹でた。この工程を行うことで、肉が柔らかくなり、骨からこそぎ落としやすくなるらしい。
一通りの作業を問題なく行えることを確認したぼくは、たしかな手応えを感じて、明日という日に備えるのだった。